衣料品の廃棄につながる事故の中で, 特にクリーニングによる事故例の原因分析を試みた.分析の資料としては全国の消費生活センター (31カ所) から入手した1976年度から1998年度実績分の「年度別報告書」をもとにし, 次の3点を明らかにした.
(1) 1979年度から1997年度の間について全相談件数は増加傾向にあったが, クリーニング相談件数はほぼ一定であった.
(2) 1988年度から1997年度の間のクリーニングに関する相談について調べると, 当初は件数のみの報告であったが, 順次, 事故例の報告が増加していった.また, クリーニング事故例を「色」「損傷」「形態・外観」「風合い」の四つの現象別に分類すると, 「色」に関するものが最も多く, いずれも年々増加する傾向がみられた.
(3) クリーニング事故の原因として「被服材料」「加工・表示」「販売」「着用状態」「外界の影響」「クリーニング処理」「保管状態」「経時劣化」「消費者の勘違い」の9項目に分類し, 原因分析を行ったところ, クリーニング事故の原因として多いのは, 着用状態>クリーニング処理>外界の順であった.「色」に関する原因は, 着用状態 (45.3%), クリーニング処理 (24.0%), 「損傷」については保管中の虫害, 着用状態, 外界からの影響が同程度に多く, 「形態・外観」では被服材料 (29.8%), クリーニング処理 (26.0%), 着用状態 (19.5%) の他に消費者の勘違いも19.5%と多かった.「風合い」では, 表示の不適正 (28.6%), クリーニング処理 (28.6%), 被服材料 (21.5%) などが多かった.これらの結果から, 消費者に対する家庭科教育の徹底や適切な情報提供が行われること, クリーニング業者においては技術指導および製品情報の伝達が行われること, メーカーは消費者やクリーニング業者に対し各製品毎の正確な情報をわかりやすく発信することなどの必要性が考えられた.
抄録全体を表示