冷却衣服着用時の熱的快適性を評価するために被験者実験を行った.人工気候室は, 作用温度33.0℃, 相対湿度37%, 静穏気流に制御した.本研究で開発した冷却衣服は氷冷式で体幹部を冷却する構造であり, 冷却部位の皮膚温を約33℃に冷却した.全身発汗量, 皮膚面における潜熱損失量および皮膚ぬれ率については, 冷却ベストの有無による有意な差が認められなかった.発汗感覚は冷却ベストの着用により有意に低下した.冷却ベストの着用により, 温冷感および快不快感は非着用時に比べて有意に熱的中立状態に近づき, その冷却効果は作用温度約3℃分であった.冷却ベスト着用時の全身快不快感は, 非着用時におけるPMVおよびDISCによる予測値と一致し, 全身温冷感による影響が大きかった.また, 局所温冷感が低くなりすぎると, 局所不快感が生じた.これらの結果より, 快適な冷却衣服の設計には, 全身温冷感を効率よく下げて熱的中立状態に近づけるとともに, 過度な冷却を行わないようにすることが重要であることが明らかとなった.
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