日本家政学会誌
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54 巻, 12 号
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  • 田渕 千恵美, 田村 咲江, 太田 伸二, 橋本 香織
    2003 年 54 巻 12 号 p. 975-985
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    小麦粉に10% 量のココアパウダーを添加した食パンの体積は減少したが, 同量のココアパウダーから調製したココア熱水抽出液 (CHWE) を添加した食パンの体積は増加した.特にCHWEの蒸留水画分と20% エタノール画分を添加した食パンの体積は増加していた.これらの画分はポリフェノール成分を多く含有していた.CHWE からポリフェノール成分を除去して食パンを調製すると, 標準の無添加食パンの体積と変わらなかった.ココア添加食パンの膨化現象を明らかにするため, ココア抽出物がドウに与える影響を調べた.発酵中の炭酸ガス発生量はCHWE 添加の有無に関わらず差が見られなかった.光学顕微鏡, 透過型電子顕微鏡像においてCHWE 添加ドウの発酵後のグルテンは薄膜化してデンプン粒を取り囲み, 連続的な網目構造を呈していた. グルテンはそれ自身多くの気泡を包含していた. ブラベンダー図はCHWE 添加によりドウの粘稠性や抗張力が増し, また, デンプン粒の最高粘度が上昇したことを示していた.これらのことからCHWE 添加によるパンの体積の増加は, ドウのグルテンマトリックスとデンプン粒の特性の変化によることが考えられた.
  • 鬼塚 綾子, 戸田 貞子, 香西 みどり, 畑江 敬子
    2003 年 54 巻 12 号 p. 987-992
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    口腔内の状態および飯の硬さの好みを高齢者と若年者, 各10 名のパネルを用いて比較した.パネルの歯の状態は残存歯, アイヒナー指数等を測定した.デンタルプレスケールを用いて咬合面積, 咬合圧, 最大咬合圧を測定した.これらの測定値の主成分分析により各パネルメンバーの値を求め, 第1 軸と第2 軸にメンバーの値をプロットした.高齢者の場合, 口腔内の状態は広い範囲に分布した.好ましい飯を重ねてプロットしたところ, 若年者は狭い範囲に分布し, 高齢者は広い範囲に分布した.高齢者の飯の好みは加水量平均1.8倍で炊いた飯であり, 若年者は平均1.5倍で炊いた飯であった.
  • 大森 桂
    2003 年 54 巻 12 号 p. 993-1005
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 健康的な食生活を実践する力の育成において自己効力感を高めることの重要性を明らかにし, 家庭科における栄養教育を通して健康的な食生活の実践に対する自己効力感を高めるための効果的な方法について検討することである.高等学校家庭科「食物」領域の学習の前後で質問紙法による調査を行い, 高校生の食物と栄養に関する基礎的知識, 献立の栄養評価力, 調理技術, 健康的な食生活の実践に対する自己効力感, 食行動の学習前後の変化および相互関連性を明らかにした.調査対象はA高等学校2年生男子68名および女子113名, B高等学校3年生男子117名および女子122名である.パス解析の結果, 健康的な食生活の実践に対する自己効力感は食行動に影響を及ぼしていること, 食物と栄養に関する知識や調理技術は健康的な食生活の実践に対する自己効力感に影響を及ぼしていることが明らかとなった.さらに, 家庭科における栄養教育を通して健康的な食生活の実践に対する自己効力感を高めることが可能であることが示された.本研究により, 生徒の健康的な食生活の実践に対する自己効力感を高め, その実践を促すためには, 家庭科における栄養教育を通して, 食物と栄養に関する基礎的な知識の定着を図り, 献立の栄養評価力を高め, 調理技術を向上させることが重要であることが示された.
  • 赤色素カルタミンの光退色に及ぼす一重項酸素脱活性基を有する安定化剤の寄与
    織田 博則
    2003 年 54 巻 12 号 p. 1007-1012
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    いろいろな紫外線吸収剤や酸化防止剤が合成され, それら化合物によるカルタミンの光退色抑制効果が酢酸セルロースフィルム中で検討された.これら化合物の紫外可視吸収スペクトルはエタノール中で測定され, 215から310nm領域に吸収をもち無色であった。またフェニルエステル系紫外線吸収剤やフェノール性酸化防止剤のニッケル錯体の効果についても検討された.その結果, ただ単なる紫外線吸収剤やヒンダードフェノールの適用はカルタミンの耐光性改善にはあまり有効ではなかった.しかしサリチル酸サリチレートのニッケル錯体は顕著にその色素の退色速度を抑制した.このことからカルタミンの耐光性改善には紫外線吸収剤への一重項酸素クエンチャー基の導入が非常に重要な役割を演じていることが明らかになった.
  • 中島 照夫, 坂上 吉一, 蒋 暁文, 賓 月珍, 松生 勝
    2003 年 54 巻 12 号 p. 1013-1024
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    無水コハク酸で前処理した綿布の抗真菌活性を向上するため, 銅, 亜鉛及び2価鉄の金属塩で化学処理した綿布を調製した.前処理によって, カルボキシル基置換量が増加するとともに金属吸着量も増加した.試料の抗真菌活性は, 1~7日間培養した Trichophyton mentagrophytes IFO 5466 で評価した.培養7日後の銅, 亜鉛及び2価鉄加工綿繊維の真菌に対する増殖阻止率の範囲は 67.9~ 92.9%, 57.1~ 87.1%及び 35.7~ 85.6% であった.一方, 市販抗菌防臭加工繊維の増殖阻止率の範囲は 20.0~ 50.0% であった.無水コハク酸処理量は試験布の引張強度にほとんど影響しなかった.無水コハク酸処理量が低濃度のとき, 銅加工綿繊維で若干の着色が認められたが, 外観上着用に関しては不都合な問題ではないと判断された.従って, 今回開発した亜鉛及び銅加工綿繊維は, 繊維の衛生面に有用であることが示唆された.洗濯と光照射後の加工綿繊維の抗真菌活性も同時に評価した.加工綿繊維の耐洗濯性と耐光性は, 市販抗菌防臭加工繊維に比べ優れていた.
  • 水野 一枝, 永井 由美子, 飯塚 幸子
    2003 年 54 巻 12 号 p. 1025-1030
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    室温変化が, 睡眠中の被覆行動に及ぼす影響を検討した.対象は, 健康な若年女性 8 名 (平均年齢21, 8歳) とした.実験は人工気候室を用い, 夏期にクーラーをタイマー設定で使用した場合を想定し25℃60%RHを1時間保った後, 1時間をかけて28℃65%RHに室温を上昇させ, 6時間をかけて27℃60%RHまで低下させた.被験者は就寝前に1室で30分安静を保ち, その後2室で23 : 00~7 : 00まで就寝してもらった.体動をビデオにより連続測定し, 身体の17部位について, タオルケットによる被覆の有無を1分毎に判定し, 被覆されている時間を算出した.皮膚温, 寝床内気候は3分毎に連続測定した.室温上昇に伴い, 上肢, 頸部, 肩部の被覆されている時間は有意に短縮したが, 他の部位では差はみられなかった、終夜の被覆されている時間には部位差がみられ, 上肢, 頸部, 肩部で躯幹部, 下肢よりも有意に短かった.皮膚温, 胸部の寝床内気候に室温変化に伴う有意な変化はみられなかった.足部の寝床内温度は, 室温上昇に伴い有意に上昇した.これらのことから, 行動性体温調節の一つである被覆行動が睡眠中も有効であり, 上肢, 頸部, 肩部に顕著にみられることが示唆された.
  • 宇都宮 由佳, 益本 仁雄
    2003 年 54 巻 12 号 p. 1031-1040
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    2002年6月, 北タイの3地域 (都市, 農村, 山村) において, 児童・生徒 (511 名) に対し, 身につけたい意識・価値観13項目について質問紙調査を実施し, 地域・学年比較をおこなった.あわせて親が児童・生徒に身につけてほしい意識・価値観について都市と地方 (98名) で実施し, 1979年の結果と比較をし, それぞれ分析をおこなった.地域差は, 低学年ほど大きく, 高学年になるに従いなくなった.おそらく低学年では, 地域の文化がそのまま反映されているが, 高学年になると世代で共通する考え (常識論理的な考え方, タイ市民としてより広い観点など) が反映しているものと考えられる.伝統的な価値観は, 山村地域, 低学年, 地方の親で認められた.先進的な価値観は, 都市, 高学年, および都会の親で認められた.農村地域, 中2は, これらの中間に位置した.また, 児童・生徒は, 個人主義的な意識・価値観が中心であるが, 親はかれらに集団社会で必要な意識・価値観を身につけてほしいと考えていることがわかった.親の1979年と2002年の比較では, 上位4項目の内容は同じであるが, 順位に変化があった.「礼儀正しさ」は重視する率が顕著に減少し, 「責任感」や「根気強さ」が大幅に増加し, 意識や価値観が少しずつ変化しつつある.
  • 長谷川 昇, 石田 和夫, 山田 徳広
    2003 年 54 巻 12 号 p. 1041-1043
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    テンペは, インドネシアの伝統的な発酵食品の一つであり, 感染に対する抵抗力の増強, 高脂血症の改善など, 健康によい作用が数多く報告されている.本研究は, コンパウンド48/80によるラット腹腔肥満細胞からのヒスタミン遊離に関するテンペ水溶液の効果を調べる目的で行われた.テンペは, 浸漬・蒸煮した大豆にRizopus oligosporusを作用させて作り, 水で抽出しその後脱脂して水抽出物を得た.テンペ水抽出物は, コンパウンド48/80によるラット腹腔肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制し, 細胞内cAMPの濃度を一過1生に上昇させた.これらの結果から, テンペは強い抗アレルギー作用を持つことが示唆された.
  • -別府大学食物栄養学部-
    中嶋 加代子
    2003 年 54 巻 12 号 p. 1045-1047
    発行日: 2003/12/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
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