本研究では, 同居型, 別居型, 核家族型において, 親子の交流状況の特徴や意識を把握し, また, 高齢者の近隣友人による支援の可能性を検討した.結果を要約すると, 以下のようである.
1) 同居型の子世代は, 主に親孝行という考え方にもとついた, 家族単位による精神的な支えを中心とする同居理由をあげており, 現在でも親孝行の考え方が存在している.また, 子世代には, 親世代への経済的支援や家事などの生活支援も多く担っている特徴がみられる.親との同居の長所に対する意識については, 家族による精神的な支えが中心である.親との同居の短所に関しては, 世代間における情緒的葛藤の意識がもたれている.
2) 別居型の同居経験をもつ者について, 同居から別居に変化した理由をみると, 家族人数の増加による居室数の不足, 親子の生活リズムが合わない等があげられる.
3) 別居型における, 子供との同居の長所に対する意識としては, 家族による精神支援が主となっている.子供との同居の短所に対する意識は, 二世代間の情緒的葛藤に対する不安がみられる.
4) 別居型は, 個人の生活リズムを重視し, 子供に頼らず, 自立生活志向が強い特徴がある.しかし, 子供との希望居住距離は, 近居を希望している.
5) 核家族型における介護志向は, 未婚子に頼らず, 配偶者に頼る介護志向が強い傾向がうかがえる.
6) 介護志向について, すべての型は, 自宅で家族による介護意識が強く, 血縁による支援が中心になる.今後, 家族人数の減少や女性の社会進出などによって, 家族による介護資源は減少していくと考えられる.在宅に居住する高齢者とその家族に, 公的な介護支援の重要性が示唆され, さらに, 公的な介護支援の利用意識の提唱も重要な課題である.
7) 高齢者と子世帯との居住距離は, 近居が多いという特徴をもっている.とくに, 近居の場合は, 親子の交流は親密で頻繁に行われており, 高齢者の精神的な支えとなっている.また, 子世帯に対して, 昼間孫を預かるなどの日常生活の交流を支援していることもある.以上のような家族相互的な交流の特徴がある.
8) 近隣友人との交流状況については, すべての型において, 交流している近隣友人のいることがわかる.また, 同居型は個人活動による付き合いと, 春村時の古い近隣友人のネットワークを残していることが特徴である.別居型は同居型とともに古い近隣友人との交流を行っているが, サークル活動による新たな近隣友人とも交流をもつ特徴がある.これらにより, 古い近隣友人ネットワークを活用し, 高齢者の生活支援の可能性が期待される.一方, 古い近隣友人ネットワークをもっていない高齢者に対して, 高齢者向けサークルの提唱や, 安全緊急ベルの装置などの設置が必要とされる.
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