日本家政学会誌
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55 巻, 1 号
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  • 高橋 智子, 中川 令恵, 道脇 幸博, 川野 亜紀, 鈴木 美紀, 和田 佳子, 大越 ひろ
    2004 年 55 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, 高齢者が食べ易い食肉開発を目的とし, 前報で用いた軟化未処理肉および0.4mol/l 重曹溶液浸漬肉に加え, 豚薄切り肉を重ね合わた重ね肉および風味を改良した新再構成肉を試料肉とした. 4 種類の試料肉について, テクスチャー特性, 食べ易さの官能評価, 咀嚼運動および肉食塊のテクスチャー特性について検討した.
    (1) 豚ロース肉の肉線維に対する切断方向による試料肉のみかけの硬さを比較したところ, 軟化未処理肉, 0.4mol/l重曹溶液浸漬肉および重ね肉のいずれについても, 肉線維に対して平行に切断した試料肉の方が肉繊維に対し垂直に切断した試料肉よりも硬いことが認められた.
    (2) 軟化未処理肉の硬さは4種類の試料肉の中で最も硬いことが認められた.また, 肉線維に対して切断する方向にかかわらず, 軟化未処理肉, 0.4mol/l重曹溶液浸漬肉, 重ね肉のみかけの硬さは, 圧縮速度が遅くなるに従い, 大きくなる傾向を示し, また, 新再構成肉の硬さの圧縮速度依存性は, それらの逆の傾向を示した.
    (3) 新再構成肉の付着エネルギーは, 他の試料肉に比べ有意に大きいことが認められ, 次いで, 重ね肉が大きいことが認められた.また, 重ね肉の凝集性は, 他の試料肉に比べ, 有意に小さいことが認められた.
    (4) 新再構城肉の加熱による重量減少率は顕著に小さくなっており, 次いで, 重ね肉の重量減少率も小さいものとなった.このことは, 新再構成肉および重ね肉に含まれる小麦粉の保水力によるものと推測される.
    (5) 軟化未処理肉は4種の試料肉の中で最もかたく飲み込みにくいと評価された.一方, 新再構成肉はやわらかく飲み込み易いと評価された.口中の残留物の量に有意差は認められなかったが, 重ね肉は咀嚼時にばらつくとするパネルの意見があった.風味を改良したはずの新再構成肉であったが, 他の試料肉に比べ, 有意においしくないと評価され, 風味改良の効果が認められなかった.
    (6) 咀嚼時に最もかたいと評価された軟化未処理肉は他の試料肉に比べ, 肉食塊を嚥下開始するまでに, 多くの咀嚼回数を必要とすることが示され, また, 咀嚼第1回目の前歯, 奥歯の平均閉口速度および最大閉口速度はともに遅くなることが認められた.
    (7) 軟化未処理肉は, 咀嚼回数を増加させ, 唾液と混合させることで, 0.4mol/l重曹溶液浸漬肉や重ね肉とほぼ同程度の硬さの肉食塊として嚥下していることが示された.一方, 豚挽肉に小麦粉や小麦デンプンを合わせた新再構成肉は, 他の豚ロース肉を材料とする試料肉よりも, 咀嚼回数が少なくても軟らかい肉食塊を形成していることが認められた.
    (8) 咀嚼中にばらつき易いとの評価があった重ね肉は, 咀嚼中に唾液と混合することで凝集性を上昇させ, 飲み込み易い肉食塊を形成していると考えられる.
  • 岩城 啓子, 杉本 温美
    2004 年 55 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    トチの実ならびにヒシの実よりデンプンを精製しその性質を調べた.トチの実ならびにヒシの実デンプン粒の大きさはトウモロコシデンプン粒とほぼ同じであったが, SEM で観察したヒシの実デンプン粒はやや細長い形であった.両デンプン粒の酵素分解性はトウモロコシデンプン粒の約70%であった.両デンプン粒の溶解度と膨潤度は70℃ ではトウモロコシデンプン粒よりも低いが, 80℃ では溶解度はトウモロコシデンプンの約3 倍, 膨潤度は約1.5 倍となった.フォトペーストグラフィーとDSC により求めた糊化開始温度はトチの実デンプン (55.9℃, 58.7℃), ヒシの実デンプン (66.2℃, 70.5℃) となり, 両者ともフォトペーストグラフィーの方がやや低いが, いずれもヒシの実デンプンの方がトチの実デンプンよりも10℃ 以上高かった.電流滴定により求めたアミロース含量はトチの実デンプンは26, 4%, ヒシの実デンプンは23.4 %となり, ゲルろ過分別の結果ともよく一致し, トチの実デンプンの方がヒシの実デンプンよりもアミロース含量はやや高いことがわかった.6% 濃度のブラベンダーアミログラムでは, ヒシの実デンプンはブレークダウンがほとんどなく冷却時に粘度が大きく上昇するのに対し, トチの実デンプンは最高粘度が高くブレークダウンがやや大きいが, ヒシの実デンプンと同様に冷却時に粘度が上昇する特徴がみられた. X 線回折図形はトチの実デンプンはCb 図型, ヒシの実デンプンはCa 図型であった.両デンプン糊の粘度が冷却時に低下せず, むしろ上昇する特徴から, これらのデンプンは糊や増粘剤としての用途や, あるいは調理用には時間経過による粘度低下がしにくい利点が考えられる.
  • 柏木 麻由美, 平井 聖, 石川 松太郎
    2004 年 55 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The application of new home cooking methods was studied in modern Japanese cities. We consulted 26 girls' high school domestic science textbooks and cookery textbooks in use between 1897 and 1917 for companion, as well as examining descriptions in cookery books and women's magazines. While all energy prices were subject to inflation, gas charges remained stable and gas appliances became cheaper, resulting in increased use of gas for cooking in ordinary homes. Descriptions of cuisine cooked with gas had become more numerous, both in practical examples of cooking in girls' high school textbooks and in cookery books mainly aimed at housewives. Cooking utensils that evenly spread the heat provided by gas, particularly frying pans, have become cheaper and increasingly popular. The conditions have been established for western cuisine to be added to Japanese cuisine in home cooking.
  • -高齢者の脱ぎ着しやすい衣服ゆとり量-
    岡田 宣子
    2004 年 55 巻 1 号 p. 31-40
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    B.L.上のゆとり量・A.H.下げ寸法を変化要因とし体型別に2サイズ展開し実験ブラウスを作製, 椅座位で行った着脱動作の所要時間および重心動揺を指標として, ユニバーサルファッションに則した脱ぎ着しやすい上衣の要因をとらえようと試みた.B.L.上のゆとり量3水準・A.H.下げ寸法2水準の合計6種のブラウスを用いた着脱動作の所要時間を分散分析し, さらに重心移動距離, 重心移動速度などを用いて詳細に検討した.被験者は高年35名である.所要時間については, 若年33名と比較した.主な結果はつぎの通りである.
    1) 高年では着衣が脱衣より所要時間が有意に長く, 脱衣では検討した2つの要因の影響はみられなかった.
    2) 高年ではB.L.上のゆとり量とA.H.下げ寸法の両要因が, 着衣のしやすさに大きく影響し, それらの寄与率は若年より高かった.B.L.上のゆとり量が十分でない時は, A.H.下げ寸法とゆとり量は交互作用がみられた.A.H.下げ寸法は2.0cm下がると, 高年では所要時間が短縮する傾向がみられた.
    3) 厚みのある体型85サイズ・93サイズでは, 高年のゆとり量は24cmが着衣しやすいと考えた. 20cm以下の場合はA.H.下げ寸法を2cmとする方がよい.若年ではゆとり量12cmとし, アームホールは設定通りがよい.
    4) 扁平体型72サイズ・80サイズでは, 高年のゆとり量は28cmまたは32cmが着衣しやすく, A. H.下げ寸法を2cmとする方がよい.若年のゆとり量は20cmが妥当でアームホールは設定通りがよい.
    5) 普通体型78サイズ・86サイズでは, 高年の着衣しやすいゆとり量は約28cmと推察した. ゆとり量が16cm以下の場合はA.H.下げ寸法を2cm とする方がよい.若年ではゆとり量16cmとし, アームホールは設定通りがよい.
    6) 若年の着衣しやすいゆとり量より高年では, いずれの体型においても約12cm多くゆとり量を必要としている.これは高年の着衣時に必要となる背部のゆとり量である背わたり寸法を反映している.
  • 授業構成
    岡田 みゆき, 白井 由貴子, 小川 育子
    2004 年 55 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    生徒が興味・関心をもって取り組めること, 家族や社会とのかかわりを重視すること, 住生活を総合的にとらえさせることを目的に, 高等学校家庭科の住生活領域の授業実践を行った.授業は以下の方針に基づいて構成した.
    (1) 自分の生涯を3つのライフステージ (一人の生活, 家族との生活, 老後の生活) に分けて授業構成を行う.
    (2) 各ライフステージには, 室内外の環境, 室内外の安全性, 生活費と家賃, 生活時間を学習内容として取り入れる.
    (3) 住宅選択という意思決定場面を導入する.
    これらの方針のもとに, 計9時間の授業を設計し, 実践した.授業案に取り入れた学習内容については, 予定の時間内で実践することができた.なお, この授業の評価については, 2報で報告する.
    最後に, 新学習指導要領「家庭基礎」では, 住生活は「家族の生活と健康」で取り扱われている.しかし, 今回のようにライフステージをもとにした授業構成も可能である.また, このことは, 他の衣生活, 食生活についても同様であると思われる.今後, 「人の一生と家族・福祉」, 「消費生活と環境」, 「家族の生活と健康」の内容まで含めた, 総合的なカリキュラムについて引き続き検討していきたいと考える.
  • 授業評価
    白井 由貴子, 岡田 みゆき, 小川 育子
    2004 年 55 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    高等学校「家庭一般」住居領域において, 生徒が興味・関心を持って取り組めること, 家族や社会とのかかわりを重視すること, 生活を総合的にとらえることを目的に授業を実践し, 授業終了後の生徒に対するアンケート調査並びに確認テストから授業評価を行った.結果は, 次の通りである.
    (1) 住居選択を導入したことにより, 住居を自分自身の問題としてとらえることができ, 多くの生徒は興味・関心を持った.
    (2) 住居の「安全面」や「環境面」に関する学習内容を新しい知識として生徒は受け取っていた. また, これらにおける知識の理解度も高かった.
    (3) 「家族の生活」, 「老後の生活」を取り上げたことにより, 家族や社会とのかかわりから住生活を考えさせることができた.
    (4) 3つのライフステージで授業構成をしたこと, 環境, 経済, 生活時間などの学習内容に加えたこと, 住宅選択を通して自分の価値観を再認識させたり生活を実感させたことにより, 人間の発達過程を視野に入れ住生活を総合的にとらえさせることができた.
    (5) 生徒の身近な問題, 近い将来として想定できる内容を取り上げることで, 自分の生活を振り返ったり, 自分の生活に生かしたいという態度を育てることができた.
    以上, 授業を受けた生徒からは本授業案に対し, 概ねよい評価が得られた.
    今後, 家政学や高等学校家庭科を考えると, 家族や社会とのかかわりや生活を総合的にとらえることはますます重要になってくると思われる.今後, 人の一生をいくつかのライフステージにわけ, そこに衣食住さらに家族, 消費, 環境, 福祉なども含めた総合的なカリキュラムの構想について, 検討していきたいと考える.
  • -性別による賃金格差を除いた試算-
    角間 (土田) 陽子, 加藤 千代, 草野 篤子
    2004 年 55 巻 1 号 p. 59-70
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    In 1997, the former Economic Planning Agency implemented the first official monetary evaluation of unpaid work. At that time, in Japan, wages were worked out on the basis of gender as well as age; simply put, valuation amounts of unpaid worker varied by gender. In this study, the loss of income for women was impartially calculated. In other words, the unpaid wage differentials by gender were excluded when our trial calculation was made for women on the basis of the second report compiled by he former EPA in 1998. Our calculation yielded approximately 168, 080 billion yen or 33.6% of GDP. The general comment price of unpaid work became 10.4% or 52 trillion yen higher than figure listed in the 1998 EPA report. The rate of women's valuation amount to the total naturally increased from 84.5% to 89.3%. Furthermore, our research uncovered the lopsidedness between men and women in terms of annual valuation amounts per capita, and clarified the content of actions involving unpaid work which was not specified in the EPA report. There is a need to recognize publicly that the unpaid work is just as worthy as the paid work, and some policy or social system should be immediately established to enable to choose and distribute unpaid work in our lifestyle irrespective of gender difference.
  • 北村 由賀
    2004 年 55 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2004/01/15
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    Most food poisoning in Japan is caused by microorganisms, and hygiene education about microorganisms is therefore important. A microorganism experiment was introduced into the cooking practice course at a senior high school, and the effects on food hygiene education were assessed. Most students started to use soap when they washed their hands after the investigation about washing hands after handling fresh meat most students washed the cutting board and kitchen knife with boiling water. There was a slight improvement on how the students washed and sterilized the cutting board while an improvement in how the students washed their hands at home was confirmed. These results indicate that a visible microorganism experiment that was introduced into the cooking practice course heightened the learning effect of hygiene education.
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