ブラジャーカップを分離してその機能を逸らさず乳房の動きを視覚化する方法で, 走行中のブラジャー内の乳房の動き, ブラジャーカップ上の動き, 衣服圧, 下肢の動きを同期させて測定した.ブラジャーカップ内で生じる乳房振動とずれの特性を明らかにし, 以下の知見を得た.
(1) スポブラ, フルカップともに乳房振動が走行周期に同期しておきた.しかし, スポブラの最大の振幅は垂直方向の左足の周期(2.73Hz)に表れ, フルカップの最大の振幅は水平方向の走行の周期(1.34Hz)に表れて, ブラジャーによって振動特性が異なった.
(2) 衣服圧の変動はスポブラ, フルカップ共に1.34Hzの走行周期, 2.73Hzの左足の周期でみられた.特に, 左足の周期(2.73Hz)で下カップ部の測定点が大きく変動した.これは, ブラジャーカップ内の乳房振動の影響と考えられた.
(3) 乳房とブラジャーは走行中にずれ, ある一定の範囲を旋回したが, ずれの周期を見出すことはできなかった.水平方向に振動の振幅が大きいフルカップはスポブラよりずれ量が多くなった.また, ずれやすい部位は下カップ部の正中側であった.
以上のように, 乳房が走行中は振動しながらカップ内でずれをおこしていることが判明した.運動適合性を考える上で乳房振動とブラジャーのずれの特性は重要な設計要因と考えられる.スポブラの運動適合性を図るために, 運動の強さに応じた振動とずれを計算する必要があると考えられ今後の課題となった.
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