日本家政学会誌
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59 巻, 11 号
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報文
  • 渕上 倫子, 治部 祐里, 小宮山 展子, 林 真愉美, 〓田 寛子, 横畑 直子, 松浦 康
    2008 年 59 巻 11 号 p. 871-879
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    焼きリンゴの軟化とペクチンあるいは多糖類の分解との関係について検討した.焼きリンゴを160℃~190℃において60分間加熱して調製したとき, ペクチンと多糖類の水溶性画分は生リンゴのそれらに比べて増加した.一方, ペクチンと多糖類のシュウ酸塩可溶性画分は生リンゴのそれに比べて減少した.このように, 焼きリンゴの組織の軟化は不溶性ペクチンと不溶性多糖類が可溶性になることによって起こるものと考えられる.ゲル濾過やDEAE-トヨパールクロマトグラフィーの結果によれば,ペクチンと多糖類は低分子化しており,これらの低分子化は主として高温下, 弱酸性の条件においてリンゴ酸の作用による加水分解によるものであり,β-脱離反応による影響は少ないことを明らかにした.
  • 戸田 貞子, 早川 文代, 香西 みどり, 畑江 敬子
    2008 年 59 巻 11 号 p. 881-890
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    高齢者の口腔内の状態と好ましい牛肉のテクスチャーの関連性を知るために物性の異なる牛すね肉(2×2×2cm3)の加熱時間を5~300分間に変えて硬さと凝集性の異なる5種を調製し,若年者を対照として官能評価を行った.高齢者の口腔内状態を歯の保存状態と咬合力によって評価し,I~IIIの3つのグループに分けた.高齢者の好ましいテクスチャーは牛すね肉の場合60分間加熱で,若年者の場合は60~180分間であった.高齢者には,長時間加熱は歯にはさまり,パサパサして飲み込みにくいなど,必ずしも適しているわけではない.さらに牛もも肉を5または15分間加熱しそれぞれに隠し包丁を入れたものと入れないもの合計4種の試料を調整した.この中で高齢者は,15分間加熱し切り込みをいれた肉を好ましいと選んだ.これは牛すね肉60分間加熱と同じテクスチャーであった.加熱時間と切り込みの有無による影響は歯の状態の悪いIIIのグループが強く影響を受けた.
  • 今井 悦子, 宮田 渚沙, 濁川 千, 関 友恵
    2008 年 59 巻 11 号 p. 891-901
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    食べ物の大きさと一口量の影響を知るために,味付け大根を試料として検討を行った。大きさは1cm角を基本に,それを切断した5種類,一口量は,1cm角1個~6個分までの6種類とした。測定は,破断試験,咀嚼筋筋電位測定および官能評価を行った。その結果,大きさの影響は,小さくなるほど,破断特性値は低下し,筋活動量平均および咬合力平均も低下して,咀嚼回数は増加したが,官能的軟らかさには有意差がなかった。また,噛みやすさ,まとまりやすさ,食べやすさの評価は小さいほうが低くなった。ただし,大きさの影響は,一概に大きさの順でないかもしれないことも示唆された。一口量の影響は,増加するほど,破断特性値は増加し,咀嚼時間および咀嚼回数が増加した。軟らかさおよびまとまりやすさは一口量の影響がなかった。噛みやすさおよび食べやすさは有意差があり,多いほうが評価が高い傾向があったが, 5または6個分で評価が下がった。なお刻みだけは,5および6個分の評価がもっとも高かった。主成分分析により大きさおよび一口量の影響を2次元に表したところ,1cm角から小さく切るほど食べ難くなり,一口量が多くなるほど咀嚼時間・回数が増加するが,食べやすさは向上する傾向があることが示唆された。
  • 長尾 慶子, 喜多 記子, 松田 麗子, 加藤 和子, 十河 桜子, 三神 彩子
    2008 年 59 巻 11 号 p. 903-910
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    環境に配慮した調理法である「エコ・クッキング」を行うことで、CO2排出量の削減が期待できる。本研究では、日本の全家庭において「エコ・クッキング」を行った場合、地球温暖化防止の為に、どの程度CO2排出量を削減できるかを検討した。主婦19名を対象に一般的な朝食、昼食、夕食別に調理を行ってもらい、その際に使用したガス量、電力量、水量及び生ゴミ量を測定した。その後、「エコ・クッキング」についての講座を受講してもらい、再び同じ献立を講座を参考に調理してもらった。「エコ・クッキング」を行うことで、1回目と比較して、ガス、電気及び水使用量と生ゴミ量に大きな減少がみられた。その結果、日本の全家庭において「エコ・クッキング」を行った場合、CO2削減効果は24~32%削減されることが試算された。
  • —区市町村担当者調査から—
    大塚 順子, 定行 まり子
    2008 年 59 巻 11 号 p. 911-921
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/07/29
    ジャーナル フリー
    本論文は、東京都シルバーピア事業の生活協力員の業務の現状と今後の役割について分析した。生活協力員は,シルバーピア住宅に住んでいる高齢者の生活を支援する人材で、ワーデンとLSAがいる。ワーデンとLSAは、委託形式(個人委託・法人委託)、勤務体制(常駐型・派遣型)、に違いがある。私たちは、シルバーピア住宅を供給する自治体の担当者に対して2回調査し、関連資料も収集した。1回目は、アンケート形式(1998年)、2回目は聞き取り形式(2006年)で行った。(1)生活協力員の業務は、内容が不明確な部分が多い。特に、ワーデン常駐型は入居者の依存が強く課題が多いので、自治体ごとに改善をはじめている。介護保険制度が始まって状況が変わってきたので、今後は、「高齢者と専門機関を結ぶ」といった役割が重要である。また、入居者のコミュニケーションや地域でのコミュニケーションのための役割も重要だ。(2)生活協力員の勤務体制は、様々である。(ワーデン・LSA、常駐・派遣、個人委託・法人委託)そのため、各自治体は、状況に応じて生活援助員の今後の役割を再検討する必要がある。東京都、各自治体が連携して、問題解決していく必要がある。
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