本研究の第1の目的は, 中学生における保育体験学習の効果とその要因について, 尺度を用いた量的な手法により検討することであった. 第2の目的は, 中学生が保育体験学習に対して抱いている期待や不安, 学習中に感じた楽しさや不満を自由記述により明らかにすることであった. 学習の前後で中学生126名を対象に質問紙調査を実施した. 学習前の質問紙は子どもへの関心尺度および学習への期待と不安の自由記述から構成された. 学習後の質問紙は子どもへの関心尺度, 乳幼児との接触時感情尺度, 学習から得られた楽しさや不満の自由記述から構成された. 因子分析および重回帰分析の結果, 学習により子どもへの関心の向け方が多角化すること, 学習中に抱いた感情が学習後の子どもへの関心の程度に影響することが示された. 自由記述の分析の結果, 学習に対して多くの生徒は乳幼児との遊びを期待していた. そして, 実際の学習場面でも遊びを通して乳幼児と交流できており, 生徒はそれを楽しかったと認識していることが明らかになった. 保育体験学習の効果と要因について量的・質的双方の側面から考察された.
我が国における共働き世帯数は一貫して増加傾向にあることから, 夫婦の家事分担に関する研究蓄積は豊富にあるものの, 夫以外の家事の担い手である子どもの家事遂行に焦点を当てた研究は, 相対的に少ないのが現状である.
そこで本研究は, 9歳から18歳以下の子どものいる核家族を対象に, 子どもの家事遂行を規定する要因について, 男女別にパス解析を行い検討した. その結果, 男子の家事遂行を規定する要因は, 父親の家事遂行と母親との関係満足, 母親の学歴であり, 父親が頻繁に家事を行うほど, 母親との関係に満足しているほど, 母親の学歴が高いほど, 男子は積極的に家事を行うことがわかった. 他方, 女子の家事遂行は, 帰宅時間と母親の性別役割分業意識によって規定されており, 帰宅時間が遅いほど, 母親が性別による役割分業に対して否定的であるほど, 女子は家事を行わないことが確認された.
本研究で得られた結果から, 男子は, 父親と母親の働きかけによって家事を頻繁に行うようになるが, 女子は自主的に家事を行うことが明らかになった. さらに, 高学歴あるいは, 性別役割分業を否定的に捉える母親は, 男子や父親に対して家事を行うように働きかけることによって, 家事におけるジェンダー平等を図っている可能性が示唆された.
空き家管理におけるシルバー人材センターの関わりの可能性について検討した. 全国のシルバー人材センター1,328件に空き家の維持管理に関するアンケートを郵送し, 720件より有効回答を得た. 現在, 空き家の管理を行っているセンターは265件であり, 会員数が比較的多く, 会員への研修会や講演会の開催, 地域包括支援センターや商工会と連携しているセンターが多かった. また, 現在の空き家管理への関与状況にかかわらず, 今後, 多くのセンターでは空き家管理に関わっていく可能性がみられた. そして, 空き家管理を行う担い手の確保や育成, 空き家管理の標準化・マニュアル化, 空き家所有者への情報提供などが求められ, シルバー人材センターと行政や地域の住民組織, 建築の専門家や不動産業者などとの連携が必要であることが明らかとなった.
学校給食のアレルギー対応食の衛生管理では, 調理器具における食物アレルゲン残留物に注意が必要であるが, その残留性については依然として不明な点が多い. 本研究では, 調理現場での汎用性を考慮し, 調理器具としてボウル, 食物アレルゲンとして小麦粉にそれぞれ着目した. ボウルの一般的な材質であるガラス, ステンレス, ポリプロピレンの3種類を選択し, これら材質の違いによる小麦アレルゲンの残留性について調査した. 小麦粉と水で調製したバッター液5gを3種類のボウルに付着させた. これらに対して, 水洗, スポンジ洗剤洗浄, そしてすすぎ操作を順次行い, バッター液の残留物をスワブ法で拭き取った. 同一の拭き取り液をイムノクロマト法とELISA (Enzyme-Linked Immunosorbent Assay) 法にそれぞれ供し, 小麦アレルゲンの残留性を評価した. その結果, 小麦アレルゲンはスポンジ洗剤洗浄を実施したにも関わらず約50%の陽性率で残留し, 3種類のボウル材質間において残留性に差異 (p<0.05) はなかった. この高い残留性については, 調理の現場における小麦アレルゲンの衛生管理上の要注意点であると考えられる. 今後, 小麦アレルゲンの混入防止対策に役立つように, 複雑な形状の調理器具等における小麦アレルゲンの残留性やその除去が可能な洗浄条件を明らかにすることが必要である.