日本家政学会誌
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70 巻, 3 号
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報文
  • ―研究の目的と方法に焦点を当てて―
    神保 夏美, 井元 りえ
    2019 年 70 巻 3 号 p. 119-132
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/21
    ジャーナル フリー

     本研究は, 食器と食物との関連についての諸外国と日本の研究動向を, 文化的影響を含めて比較することを目的とした.

     研究方法は, 文献レビューによって得られた対象研究47件について, 1) 研究目的および主な調査項目, 2) 食器の検討要素, 3) 食器の提示方法に関して分類し比較を行った. 主な結果は次のとおりである.

     1) 研究目的および主な調査項目については, 諸外国の研究では, 食器と「食物・食事の量」との関連の検討を目的とした研究が多かった. これは, 国際的な肥満者の増加の問題が背景にある. 日本の研究では, 食器と「食物・食事の質」との関連の検討を目的とした研究が多く, 特に「食欲」「おいしさ」について外観だけで調査したものが多かった.

     2) 食器の検討要素については, 諸外国の研究では食器の「サイズ」と「食物・食事の量」との関連を検討した研究が特に多く, 日本の研究では食器の「色」と「食物・食事の質」との関連を検討した研究が特に多かった. また, 他の日本の研究の食器の検討要素には, 和食の文化的特徴が表れていた.

     3) 食器の提示方法については, 諸外国の研究では, 「実物」が大半を占めたのに対し, 日本の研究では, 「写真/画像」が多かった.

     考察として, 諸外国と日本における食器と食物との関連についての研究目的および方法は, 社会的・文化的な影響を受け, 異なることが示唆された.

  • 谷口 (山田) 亜樹子, 栗 彩子, 佐藤 祐子, 風見 真千子, 野口 治子
    2019 年 70 巻 3 号 p. 133-139
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/21
    ジャーナル フリー

     鎌倉産, 仙台産, 佐渡産の産地の異なるアカモクの一般成分を測定し, 成分の比較を行った. 鎌倉産アカモクは灰分が最も多く, 仙台産はタンパク質が多く, 佐渡産は炭水化物, 食物繊維が多かった.

     各産地のアカモクのミネラル量を測定した結果, 鎌倉産はカルシウム, 鉄が多く, 仙台産はナトリウム, カリウム, マグネシウム, 鉄, 銅が多く, 佐渡産は亜鉛が多かった. アカモクのポリフェノール量は仙台産が最も多く102.3 mg/100 g含まれており, 鎌倉産, 佐渡産は各々95.2 mg/100 g, 76.3 mg/100 gであった. アカモクは他の海藻よりポリフェノール量が多く, 抗酸化作用などの機能性が期待できた.

     アカモクを用いて食品を製造し, 栄養計算を行った. 鎌倉産アカモクを食品に使用することで, 食品のカルシウム, 鉄のミネラルの栄養価が高くなり, ミネラルが豊富な食品となった. また, アカモクを添加することで, 食物繊維の多い食品となった.

ノート
  • 山下 健, 内藤 章江, 大澤 香奈子, 小町谷 寿子, 石原 久代, 橋本 令子
    2019 年 70 巻 3 号 p. 140-149
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/21
    ジャーナル フリー

     生活における動作や行動は誰もが直感的に行えることが望ましい. 色彩には象徴性が存在し, 生活行動をサポートするユニバーサルデザインとして応用が可能と考える. そこで本研究は, 「開ける」行動が色彩によって心理的に誘導されるか検討した. 被験者は女子大学生252名であった. 実験試料として3種のアイテム, 3種の表示方法, 7種の色彩を組み合わせた計63種の写真試料を作成した. 被験者には写真試料を1枚ずつ呈示して「開ける」行動の「わかりやすさ」を回答させた. その結果, 表示方法は「文字と記号の両方を表示」, 色彩は「鮮やかな赤」, 「鮮やかな青」, 「黒」を用いた場合に「わかりやすい」の評価は高くなった. 中でも「開ける」を連想させる「鮮やかな赤」の評価はいずれのアイテムにおいても「わかりやすい」の評価が高くなった. この結果から, 色彩により「開ける」行動を心理的に誘導できることが確認でき, 生活行動を連想させることに特に高い効果を有することが明らかとなった.

資料
  • ~神戸市A児童館の実践より~
    神澤 佳子, 上村 協子, 金坂 尚人, 清水 きよみ, 河村 美穂, 千歳 万里, 片平 理子
    2019 年 70 巻 3 号 p. 150-165
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/21
    ジャーナル フリー

     神戸市のA児童館は, 18歳未満の子どもが利用する地域住民に開かれた施設であり, 放課後児童クラブと一体的に運営されている. この施設で2009年より毎年10月下旬~12月の2ヵ月間実施されている, 「どんぐり」等の木の実を通貨とした買い物体験「どんぐりマーケット」を消費者教育の視点で実態と特徴を明らかにした.

     「どんぐりマーケット」では, 集めたどんぐりを通貨として, 児童館内につくられた店の商品を購入できる. 販売商品は, 子どもや家族, 地域の人がどんぐり等を材料にした手作り品であり, 製作者が値段をつけて販売する. 2017年度には約15万6千個のどんぐりが流通し1,659点の商品が売買され, 地域のイベントとして定着している. 子ども達は買い物だけでなく, 銀行員や店員等として運営に関わり, 働くと給料を得ることができる. こうして, 遊びの中でお金の役割を理解し, 消費者だけでなく生産者の立場も体験し, 商品選択, 家計管理や生活管理の経験をする. これは, 子どもや地域の人々が, どんぐりを題材に生活価値を創造する活動となっている. さらに, どんぐりを拾うことで地域の自然や植物に親しみ, 地元の「どんぐり銀行神戸」と連携し, どんぐりを苗にかえて緑の再生に参加するなど, 持続可能な社会を構築する消費者市民としての経験も積み重ねている.

     このプログラムは, 日常生活で身近なものを使って生活価値を創造し, 地域の人々と協働し持続可能な社会を目指す「地域・環境交流型生活創造プログラム~生産消費者教育の地産地消~」であると考えられる.

シリーズ くらしの最前線 122
シリーズ 研究の動向 30
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