日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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71 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
学会賞受賞論文
報文
  • 寒河江 芳枝
    2020 年 71 巻 6 号 p. 370-381
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/18
    ジャーナル フリー

     本研究は, 一児の観察から提起した2歳の後半に間接的な諸表現の兆しが発生し, 3~4歳では間接的な諸表現として「迂回」が表われるという前研究の仮説が, 幼稚園における複数の乳幼児においても支持されるかどうかを検討する.

     方法としては, ビデオ及び参与観察によった. 具体的には, 子どもの葛藤する姿が見えやすい場面として保育者の片付けの言葉がけから次の活動の準備までの移行場面に注目し, その中で見られる子どもの行動をビデオ及び参与観察によって記録した. 毎回観察が終わった時点で保育者との振り返りの時間を設け, 聞き取りの内容を結果の解釈や考察を行う際に活用した. 観察期間は, 2013年6月~7月である. さらに, 2014年1月~3月に追加観察を行った. 対象児は, 幼稚園の満3歳児20名 (女児3名, 男児17名), 観察は週に1回行った.

     本研究の結果から明らかになったのは, 以下の2点である. 1点目は, 対象者20名全員に迂回行動が見られた点である. 本研究では, 2歳2ヶ月から3歳2ヶ月の子どもを対象に観察したため対象児の年齢は1年ぐらいの幅があったが, 迂回行動の出現した年月では先行研究と一致した. 2点目は, 迂回の種類についてである. 家庭における一児を対象にした先行研究結果よりも, 集団生活の子どもを対象にした本研究の結果の方が迂回の種類がより多く表われた.

  • 小西 大喜, 綾部 園子, 神戸 美恵子, 高梨 美穂, 村松 芳多子
    2020 年 71 巻 6 号 p. 382-391
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/18
    ジャーナル フリー

     本研究では, 学校給食施設における野菜類の洗浄・殺菌処理の客観的な評価のために, 学校給食実施基準に準拠した野菜類の洗浄・殺菌処理方法および二次汚染を想定して調理済み野菜に付着させた細菌の消長について検討した.

     その結果次の4つのことが明らかになった. 第1に, 水道水による洗浄は菌数には影響を与えない. 第2に, 微酸性電解水および電解次亜水による3分間流水処理は次亜塩素酸ナトリウムによる5分間浸漬処理と同等の殺菌効果を有する. 第3に, 電解水で洗浄・殺菌処理した生野菜は30℃・2.5時間 (学校給食で取り扱う時間) 以内であればその保存温度に関わらず菌数はほとんど増加しない. 第4に, 調理済み野菜の菌数は二次汚染していない場合は保存温度に関わらずほとんど増加しない. しかし, 二次汚染した場合は保存温度が高くなると増加傾向がある.

     以上の結果から, 電解水による殺菌処理は学校給食調理場に適しており, その安全性や利便性から, 次亜塩素酸ナトリウムにとって代わる方法であることが示唆された. その使用方法は, 水道水による洗浄後, 3分間流水洗浄し, その後再び水道水で1回洗浄することが望ましいと考えられる. また, サラダや和え物の調理後の保存温度・保存時間については, 30℃・2.5時間以内であれば衛生的に取り扱うことが可能であり, 調理後の二次汚染を防止することが生野菜の提供には重要であることが示唆された.

  • 郡山 貴子, 飯島 久美子, 江原 瑞樹, 小西 史子, 香西 みどり
    2020 年 71 巻 6 号 p. 392-400
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/18
    ジャーナル フリー

     本研究では, ムクナ豆の調理中のL-DOPAの挙動に及ぼすpHの影響を調べた. pH緩衝液を用いて水溶液中のL-DOPAの消長について検討した結果, L-DOPA溶液はアルカリ側になるほど酸化重合を起こして黒くなることが示された. L-DOPA量と色の変化⊿Eの間にはr=0.96と非常に高い負の相関が認められ, ごく僅かな量のL-DOPAによって褐変が起こることがわかった. 90℃加熱における重曹を用いたアルカリ溶液中では, 同じpHの緩衝液に比べて1/4の時間でL-DOPA量が0に達した. ムクナ豆粉を小麦粉に10%置換し, 重曹を添加した中華麺様の麺の加熱後のL-DOPA残存量は0 g/(100 g試料), 20%置換では約 0.03 g/(100 g試料) まで減少した. ORAC法およびDPPH法で測定した結果, ムクナ豆粉を20%置換し重曹を添加した麺は, 加熱後においても高い抗酸化能を有していた. これらのことから, アルカリ処理によるL-DOPAの分解を利用したムクナ豆の新たな調理品として, 中華麺様の麺を提案することができる.

資料
  • ―給湯器の買い替えを題材として―
    天野 晴子, 三神 彩子
    2020 年 71 巻 6 号 p. 401-410
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/18
    ジャーナル フリー

     日本においては, 2030年度までに2013年度と比べて, 家庭部門において約23%のCO2削減が必要とされている. 一方, 日常生活における省エネ行動に比べ省エネ型消費の購買行動の実施率は低い. そこで, 家庭におけるエネルギー消費量の約3割を占める給湯分野に着目し, 省エネルギーに資する給湯器の選択行動を題材に, 機器の買い替えにおける省エネ型機器選択について, 2011年以降の給湯器購入者を対象とした調査を行った. 具体的には, 省エネ型機器選択と省エネ行動実践度との関係の検討及び省エネ機器選択理由の特徴を明らかにした.

     結果は, 日常の省エネ行動の実践度が高い人は省エネ型機器を購入していると予測していたが, 実際には, 従来型給湯器選択者と高効率給湯器選択者で, 省エネ行動実践度に大きな差はみられなかった. 従来型給湯器と高効率給湯器それぞれの機器を選んだ際に重視した理由については, 従来型機器選択者は初期投資である導入コストを重視していたが, 高効率給湯器選択者は, ランニングコストなどの長期的視点に立って選択していた. 導入コスト及びランニングコストへの反応感度を見ると, 省エネ機器選択のためには, 省エネ性や環境性に関する情報提供だけでなく, ランニングコストなどを含めた価格面でのメリットを分かりやすく伝えることで選択者が増える可能性が示唆された.

  • 高橋 美登梨, 佐藤 百恵, 川端 博子
    2020 年 71 巻 6 号 p. 411-418
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/18
    ジャーナル フリー

     本研究では, 若年女性におけるブラジャーのサイズ選択の実態を検証した. 56名 (平均21.7歳) を被験者とし, 基本身体寸法に基づくサイズ, 被験者が日常的に着用しているサイズ, 販売員の資格を持つ者 (評価者) が選定したサイズの比較をするとともに, サイズ選択に関わる要因についてつけ心地と外観より考察した. 得られた結果を以下に示す.

     (1) 被験者の基本身体寸法によるサイズは, 被験者が着用しているサイズおよび評価者が選定したサイズと一致する割合が低く, サイズの選択にはつけ心地や外観といったフィット性が影響するといえる. 基本身体寸法からは乳房の左右差, 形状等の推定が難しいため, フィット性を重視したサイズと差異が生じることが示唆された.

     (2) 被験者が着用しているサイズと評価者が選定したサイズは, 約40%が一致とみなせた. 一致していない場合, 被験者はカップ体型を小さく認識していることが示された.

     (3) 被験者が日常的に着用しているサイズに対して, 評価者はブラジャーのカップ上部や脇が身体に食い込んでいると評価していた. また, 評価者が適切なフィット性であると評価したサイズは, 被験者にとってカップ上部の浮きを感じさせることが示された.

シリーズ 研究の動向 47
シリーズ 研究の動向 48
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