日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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72 巻, 11 号
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報文
  • 武智 多与理, 齋藤 公美子, 原 康香, 志和 睦, 萬成 誉世, 畠中 芳郎, 髙村 仁知
    2021 年 72 巻 11 号 p. 709-718
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/27
    ジャーナル フリー

     近年, 小麦などのアレルギー疾患が大幅に増加している. 本研究は, グルテン代替物質としてオレンジを用いたスロージューサー残渣粉末を添加したときのグルテンフリー米粉パンの製パン特性を, 物性面および食味への影響から明らかにした. スロージューサー残渣粉末の添加により, 生地の粘度が上昇し, 焼成パンの比容積が大きくなって, きめの細かい良いパンが調製できた. しかし, 8%以上の添加では, パンの膨化を阻害する傾向が見られた. 官能評価の結果, スロージューサー残渣粉末を4~6%添加することで, 有意に好ましいと評価された. スロージューサー残渣粉末を4~5%の割合で添加することで, グルテンフリー米粉パンの製パン性が向上した. グルテンフリー米粉パンの調製において, スロージューサー残渣粉末は, 適量の添加で, 増粘・安定剤としての効果をもたらし, グルテン代替物質となりうることが期待できる.

  • 井上 尚子, 高橋 勝六
    2021 年 72 巻 11 号 p. 719-729
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/27
    ジャーナル フリー

     衣服を通しての顕熱移動速度と潜熱移動速度を衣服間空隙, 衣服の布, 詰め物層および外気境膜それぞれの熱移動係数および物質移動係数を用いて推算した. 衣服は4組のセット, すなわち, セットA : 下着, シャツブラウス, セーターおよびダウンコート, セットB : 下着, シャツブラウス, セーターおよびジャケット, セットC : 下着, シャツブラウスおよびジャケット, セットD : 下着およびシャツブラウスについて計算した. 計算条件は皮膚表面温度33℃, 湿度50%, 外気温-2~30℃, 湿度20~70%とした. 熱移動速度60 W/m2に対応する外気温はセットAで-2℃, セットBで12℃, セットCで17℃, セットDで24℃となった. 全熱移動速度に対する潜熱移動速度の割合はセットAではダウンコートに使用される布の物質移動抵抗が大きいので0.18と小さくなった. この布は布内の繊維体積分率が0.55のタフタである. 繊維体積分率が大きくなると布内の空気チャンネルの屈曲係数が大きくなって布の物質移動係数が小さくなる. 衣服セットB, CおよびDに対する潜熱移動速度の割合は0.3から0.6の間で外気の湿度が高くなると小さくなる. セットB, CおよびDに使用した布の繊維体積分率は0.33以下で, 布の物質移動抵抗は熱移動抵抗と同様に衣服間空隙の抵抗に比べて小さい. これらの衣服セットの潜熱移動速度の割合は衣服間空隙のものに近くなる.

  • 齊藤 保典, 小林 一樹
    2021 年 72 巻 11 号 p. 730-738
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/27
    ジャーナル フリー

     衣服類に付着した種々のダストが, 居間でどのような挙動を示すかを知ることは, 健康管理の点で大変重要なことである. この目的のために, 室内で利用できる小型ライダーを開発した. ライダーはレーザーポインターとカメラから構成された. その動作を, 人工物 (繊維, スプレー, チョーク粉) を使って, 市販のパーティクルカウンターとの比較により実証した. 日常生活の各種動作 (衣服の着脱, 衣服を叩く或いは払う, 歩き回る) によって衣服から放出したダストの動きを, 高さと時間の変化として可視化した. 衣服類着脱という動作では, ズボンを脱ぐという動作が最も多くのダストを発生させた. 衣服を叩くという動作も多くのダストを発生させたが, 拡散範囲は限定的であった. 払うという動作は, カウント値の小さなダストをより長く浮遊させた. 特に, 室内を歩き回る動作が, ダストの発生と拡散に最も影響を及ぼすことを, 数値的な画像として示すことができた.

ノート
  • ―炒飯, ほうれん草炒め, 厚焼き卵の仕上がりの比較―
    小川 宣子, 小林 由実, 山中 なつみ
    2021 年 72 巻 11 号 p. 739-749
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/27
    ジャーナル フリー

     ガス加熱と誘導加熱 (IH) の違いが炒め加熱と焼き加熱調理の仕上がりに及ぼす影響について, 炒飯, ほうれん草炒め, 厚焼き卵の味, 物性, 組織構造から調べた. フライパンで水を加熱した時の昇温速度が同程度になるように火加減を設定した. 強火で予熱したフライパンと卵焼き器の鍋底と側面温度は, ガス加熱の方がIHの場合に比べて均一かつ高温になった. 炒飯とほうれん草炒めは強火で各々同じ時間炒め, 厚焼き卵は中火で卵の温度が同じになるよう作製した. ガスコンロで炒めた炒飯はIHヒーターに比べ, 食塩相当量が高く, 付着性が低かった. 炒飯の飯を走査電子顕微鏡で観察した結果, ガス加熱の場合では, IHの場合には見られない表面部分の崩れが観察された. ガスコンロで炒めたほうれん草はIHヒーターに比べ, 組織構造が保持されていた. 厚焼き卵の加熱時間はガス加熱の方がIHに比べて短かった. ガスで加熱した厚焼き卵の表面構造には太い均一な網目構造が観察され, 表面の凝集性が高いことの要因と考えられた. 本研究における加熱条件では, ガス加熱の方がIHに比べて食材からの水分蒸発やたんぱく質の熱変性が促進され, 炒め加熱ならびに焼き加熱調理の仕上がりに影響したと考えられる.

資料
  • 丸田 ひとみ, 桑田 七帆, 山下 広美
    2021 年 72 巻 11 号 p. 750-758
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/27
    ジャーナル フリー

     本研究では, 岡山パクチーの成分的な特徴について解析することを目的として, 一般成分, ミネラル, およびビタミンCの季節変動とビタミンCの調理操作による影響について調べた. パクチーの葉部, 茎部, 根部におけるそれら成分含有量の季節変動を調べた結果, 葉では冬に水分含量が少なくなり、たんぱく質, 脂質, 灰分, 炭水化物, ビタミンC, 亜鉛, マンガン, およびマグネシウム含量は冬に高くなる傾向にあった. 日本食品標準成分表の掲載値と比較して岡パクはたんぱく質および炭水化物, またミネラルではカリウムおよび銅を除くミネラル、さらにビタミンCの含有量が高かった. 岡山パクチーの特徴としてカルシウム, 鉄およびビタミンCの含有量が高いことが明らかとなった. 部位により調理によるビタミンCの損失率が異なった.

シリーズ 研究の動向 58
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