日本家政学会誌
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72 巻, 12 号
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報文
  • ―家族観, 生活観を媒介して―
    渡辺 朗生, 今川 真治
    2021 年72 巻12 号 p. 776-788
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     本研究では, 大学生の未来の家庭展望の形成状況を明らかにすること, 親との関係及びこれまでの生活経験が家族観及び生活観形成を媒介して, 大学生の未来の家庭展望の形成に及ぼす影響を明らかにすること, そして, 大学生の家族観及び生活観タイプと未来の家庭展望の肯定的・否定的捉えとの関連を明らかにすることを目的とした. 本研究によって得られた知見は, 以下のとおりである.

     (1) 大学生は, 未来の家庭, 家族形成に対する期待感や希望を持っている一方で, 未来の家庭生活の具象化レベルは低い傾向にある. (2) 異性の親とのコミュニケーションが多く, 同性の親との心理的距離が近いと感じているほど, また, これまでの生活管理や地域参加の経験が豊富であるほど家族観の形成が促されることが示された. また, 家族観及び生活観が形成されることによって, 大学生の未来の家庭展望の形成が促進されるというプロセスが確認された. (3) 大学生の家族観は「放任型」, 「協働重視型」, 「自立重視型」及び「全志向重視型」の4タイプに, 生活観は「無頓着型」, 「自己成長重視型」, 「関係性重視型」, 「自己重視型」及び「理論重視型」の5タイプに分類された. (4) 「全志向重視型」の家族観を持つ大学生と, 「自己成長重視型」及び「関係性重視型」の生活観を持つ大学生において, 未来の家庭展望を肯定的に捉えている人数の割合が高かった.

  • 田中 佑季, 大和田 浩子, 金谷 由希, 綾部 園子
    2021 年72 巻12 号 p. 789-795
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     我々は先行研究で, 肢体不自由者は長期的な身体活動の制限により, 健常者よりも骨密度が低くなることを示唆した. この研究の目的は, 骨折のリスクに関わる要因を検討し, 肢体不自由者の骨折リスクを軽減する一助とすることである.

     対象は19名の男性の肢体不自由者である. 全ての被験者から年齢, 身長, 体重, BMI, 骨密度 (全身・頭部を除く全身・腰椎・Total hip), 脂肪・筋肉・骨の組織重量%, 身体活動量のデータを取得して, 主成分分析を行った.

     第1主成分は体重, 体脂肪率, BMIの因子負荷量が高いので体格, 第2主成分は腰椎, Total hipの因子負荷量が高いので骨密度と解釈した. 本検討により, 肢体不自由者においても身長や重量刺激が骨密度に関与することを示唆した.

  • 山田 密穂, 小泉 昌子, 赤石 記子, 峯木 眞知子
    2021 年72 巻12 号 p. 796-807
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     天然酵母パンについては, 広く知られている白神こだま酵母 (以下, S), ホシノ天然酵母パン種 (以下, H) があるが, それらについての基礎的な研究は少ない. 本研究では, これら2種と対照酵母としてインスタントドライイースト (以下, D) を用いて食パンを調製し, パンの品質および食味特性を比較・検討し, 食パンに与える酵母の影響と特性を明らかにすることを目的にした. 3種の酵母を使用したドウの動的粘弾性測定, 砂糖の有無によるドウ発酵試験を行った. 3種の酵母で調製したパンは, その断面や組織構造を観察し, 重量, 体積, 水分含有率, 色, テクスチャー, 香気成分を測定し, 組織構造を観察した. また, 官能評価による食味特性および嗜好を検討した. その結果, 各酵母を用いて調製したドウでは, 動的粘弾性試験においてH試料は流れやすい性質を持ち, D試料は弾性要素に比べ粘性要素の寄与割合が高いことが示された. 発酵試験ではSのドウは砂糖添加の影響が大きく, Hは砂糖無添加試料の膨化がよかった. パンでは3試料の体積に差はなかったが, Hを用いて調製したパンは, やわらかく, 凝集性が低く, 官能評価では甘味があり, 香りおよび総合評価において好まれた. H製品に含まれている麹由来のアミラーゼ, プロテアーゼがパンの品質に影響を与えていることが推察された.

  • 松岡 晃代, 倉持 清美
    2021 年72 巻12 号 p. 808-817
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     現在, 中学校学習指導要領では, 技術・家庭分野において幼児触れ合い体験は必修化されている. しかしながら, 「受け入れ先が見つからない」, 「家庭科教員の負担」, 「校内教職員の理解不足」が課題となり, 全ての中学校で触れ合い体験が実施できているわけではない. そこで, 本研究では子育て支援行政などの外部機関が主となり実施する触れ合い体験との連携が課題解決につながるのかを検討することを目的とした. 調査方法は, まず東京都23区への事前質問紙調査から触れ合い体験の実施にかかわっている3つの区を選出した. 次に, 3区の子育て支援行政担当者にインタビュー調査を実施し, 触れ合い体験の現状分析を行った. インタビュー内容と, 触れ合い体験実施に至るプロセスの分析から, 子育て支援行政などの外部機関が主となり実施する触れ合い体験との連携は, 上記3つの課題解決につながる可能性が示唆できた.

ノート
  • 柿原 文子, 小泉 好司, 佐々木 敏雄, 野村 陽子
    2021 年72 巻12 号 p. 818-828
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     芭蕉布は琉球時代から沖縄で使われていた夏向きの布であり, イトバショウの偽茎の繊維から作られる. この布はかつては庶民の野良着として日常生活に使われていたが, 現在は伝統工芸品として, 着尺用の高級な織地が製造されている. その繊維の抽出は, 職人の勘に頼るところが多く, また厳選された上質な材料が必要とされている.

     本研究では, 伝統工芸品としての芭蕉布作製では質が悪く使われない材料から, 伝統法における工程を基にした非常に簡単な条件により, 芭蕉布繊維を抽出した. また, 琉球文化圏の市町村誌などからイトバショウ栽培や繊維抽出の条件を調べ, 本研究で使われた簡易抽出法について考察した.

     簡易抽出された繊維については, 顕微鏡観察を行い, 職人が作製した糸の繊維と比較した. その結果, 簡易抽出繊維はよじれが多く, 職人の糸の繊維よりも太く伝統工芸で使われる繊維よりも質は低下していた. しかし, 質の悪い芭蕉布繊維でも一般の夏向きの衣料に使われていた事実があり, 製反時に工夫することで, 簡易抽出繊維が環境にやさしい新しい夏向きの素材開発に繋がる可能性があると考えられた.

シリーズ 研究の動向 59
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