幼児期は最も成長・発達が著しく, 基本的な生活習慣を確立する上で重要な時期である. 幼児における食習慣の問題の一つに偏食が取り上げられることが多い. 本研究では幼稚園での食育に活用するために, パス解析により園児の偏食に関する因果モデルを構築し, 偏食の要因を明らかにすることを目的とした. 幼稚園児の保護者580名を対象に, 園児の生活状況や食習慣に関する質問紙調査を実施した. 有効回答は408名で, 回収率は70.3%であった. 園児の嫌いな食品は野菜類, 海藻類, 魚介類, 牛乳・乳製品の順で多かった. 園児の偏食に関するパス解析により因果モデルを構築し, 『食事の楽しさ』や『食欲旺盛』, 『野菜・海藻 嗜好性』, 「朝食の食品数」が, 「嫌いな食品が多い」に対して負の関連を示すことを明らかにした. 結論として, 食事の楽しさを通して食欲を亢進すること, 朝食の食品数を増やすことが園児の偏食軽減につながる可能性がある.
「洗浄における酸・塩基中和説」とは, ①汚れは酸性汚れとアルカリ性汚れに分類できる, ②酸性汚れとアルカリ性汚れは各々アルカリと酸で中和して除去できる, とする説である. その説は日本の消費者の中で広まっているが, 科学的な誤りが含まれている. そこで本研究では関連情報をインターネット上から収集して分析し, 誤情報が生まれて拡散していく過程を調べた. その結果, 酸性汚れ・アルカリ性汚れに分類する方法に問題のあること, 過度の酸性化やアルカリ化を中和と表現するなどの問題が確認できた. その情報が広まった原因は, もともと中和に関して種々の定義が存在していたことと, 酸・塩基に関連する用語を厳密に理解するのが難しいことである. 日本語の用語としての酸と酸化が混同しやすいことも関与している. 酸とアルカリの中和という表現は, 単純で分かりやすいため多くの人に受け入れられたのであろう.
フードリテラシーに関する研究の国際的動向を明らかにすることを目的とし, 2001年から2019年に発表された86件の文献を調査した. フードリテラシーをタイトルに含む文献の発表数は, 2016年以降毎年増加し, 2019年は22件/年と過去最多であった. フードリテラシーに関する調査研究は, オーストラリア, カナダ, アメリカにおいて実施されているケースが多かった. フードリテラシーに関する文献は6タイプに大別され, 2010年以前はフードリテラシーの概念や教育プログラムの実践に関する文献が主であったが, 2016年以降になるとフードリテラシーの実態や関連因子に関する文献も増加していた. 一方, フードリテラシーの評価尺度の開発や教育プログラムの実践と評価に関しては未だ研究の少ないことが明らかとなった. フードリテラシーの定義は多様であり, Vidgen & Gallegos (2014) の文献は被引用数が特に多かったが, 研究の対象や視点によってフードリテラシーは様々に捉えられていた. フードリテラシーの構成要素は多岐にわたり, かつ相互に関連していることが示唆され, フードリテラシーの構成要素を体系的に指導するカリキュラムの開発・実践・評価の必要性が示唆された.
大学生の手芸・裁縫活動への意識や自分が親になったときを想定した意識などについて, 手作り品をもらった経験を中心に調査した結果, 次のような知見を得た. 手作り品をもらった経験がある者は56.8%であり, 母親からが最も多く, 次いで祖母, 父親は3人と少なかった. 「手作り品をもらった経験」と「手芸・裁縫活動に関する親としての考え」には有意な関係性がみられた. 手作り品をもらった経験のある者は, 手作り品は親子間の愛情表現になり, 手芸・裁縫技術を次世代に伝えていく必要があると思っていた. 子どもの頃に手作り品をもらった経験が, 将来の親としての意識に影響を及ぼす可能性が示唆された.