日本家政学会誌
Online ISSN : 1882-0352
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ISSN-L : 0913-5227
72 巻, 6 号
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学会賞受賞論文
報文
  • ―「食事の連絡帳」の記述から―
    伊藤 優
    2021 年 72 巻 6 号 p. 333-347
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/02
    ジャーナル フリー

     本研究は, 時間的・経済的に困難を抱える母親に対する保育士の支援に関する実践的示唆を得ることを目的として, 一人で仕事と子育てを行うことを余儀なくされた, 乳児を育てる母親と保育士との「食事の連絡帳」でのやりとりを検討した. 本事例を検討した結果, 保育士は母親への助言内容や支援時期について, 母親の就労状況や保育所への信頼構築程度など様々な観点から配慮していることが明らかとなった. また, 保育士は子どもとかかわる時間を持ちにくい母親との連絡帳を通した毎日の情報交換により, 母親に子どもの成長・発達を伝えたり, 子育てに関する助言を保育士から母親へ押しつけにならないよう伝えることができていた. このような保護者支援が可能となったのは, 連絡帳での話題を毎日行われる食事に焦点を当てたことに起因していた. そして, 保育士がこのような食事の特性を生かしながら母親と連絡帳を通して毎日情報を交換することで, 長期的な視点での支援が可能となり, 食事を通して保育士と保護者が共に子どもを支援する関係を築きやすかったと考えられる.

  • 片山 美香, 髙橋 敏之
    2021 年 72 巻 6 号 p. 348-361
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/02
    ジャーナル フリー

     本研究では, 保護者支援の力量に影響を及ぼす要因を明らかにするために, 保育実践の過程で生じる経験に加えて, 親としての子育てという私的な経験の影響を要因として設定し, 検証した.

     まず, 保育士の日常的な実践観察やインタビュー調査を踏まえて26種の保育相談支援技術を導出した先行研究を基に, 保護者支援の包括的な力量を測定する30項目4次元で構成される「保護者支援力尺度」を開発した.

     次に, 作成した保護者支援力尺度を用いて, 「保育者効力感」「保育経験年数」に加えて, 保育士の私的な子育て経験を反映する要因として, 「親アイデンティティ」を設定し, 保護者支援力に影響を及ぼす因果モデルを仮定して検証した. その結果, 「親アイデンティティ」は「保育者効力感」に, 「保育者効力感」は「保護者支援力」にそれぞれ有意な影響を及ぼすことが示された. 親としての経験は保護者支援力に直結するのではなく, 子どもや保護者に対する理解を促して子どもの発達に寄与する自信 (保育者効力感) に繋がっていることが示唆された. また, 子どもの発達に尽力することが保護者支援になっているとの認識が示されており, 保育と保護者支援とが不可分であるという従来の知見を支持する結果が見出された.

  • 手島 陽子, 長谷川 智子, 小西 史子, 外山 紀子
    2021 年 72 巻 6 号 p. 362-376
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/02
    ジャーナル フリー

     自立は青年期の重要な発達課題であり, 主体的自己, 協調的対人関係, 生活管理などの領域から成るといわれている. 子どもの頃に調理に関わることは青年期の自立に影響を及ぼすと仮説を立てた. 大学生178名 (男性53名, 女性125名) を対象に質問紙調査を行い, 学童期の家庭の食環境と調理への関わりをクラスタ分析で分類し, クラスタにより青年後期の自立に差がみられるか分散分析で検討した. 学童期の家庭の食環境と調理への関わりは5クラスタに分類され, 調理への関わりに関する得点が高い2クラスタは, 青年後期の「協調的対人関係」と「生活管理」の得点が高かった. この結果より, 学童期に調理に関わることは, 青年後期の自立の2つの領域へ肯定的な影響を及ぼす可能性が示唆され, 仮説は支持されたと考えられる.

Note
  • 西村 公雄, 佐伯 宏樹
    2021 年 72 巻 6 号 p. 377-386
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/02
    ジャーナル フリー

     メイラード反応を用いることで, 低イオン強度溶液に最大限溶解するデキストラン修飾鶏筋原線維タンパク質の調製条件をランダムセントロイド最適化法により検索した. 調製因子として温度, 相対湿度 (RH), 反応時間, デキストラン/鶏筋原線維タンパク質 (Mfs) 重量比とpHを選び, 15の調製条件を得, 各条件にしたがって, 糖化鶏Mfsを調製した. 低イオン強度溶液への溶解度を評価とした. その結果, 温度53℃, RH65%, 反応時間47.93時間, デキストラン/鶏Mfs重量比14.4 (w/w) 及びpH 8.5の時, 低イオン強度溶液への最大溶解度56.4±10.0%を示すことが判明した. この反応中のタンパク質の挙動をSDS-電気泳動法によって調べたところ, ミオシン重鎖の易動度は, 時間と伴に減少した. このことは, デキストランが反応中に鶏Mfsに結合していることを示していた. また, 最適条件下で調製したデキストラン糖化鶏Mfsのヒドロキシラジカル消去能は, 6.3±0.2μmol没食子酸当量/g of proteinを示した. これらのことより, デキストランによる修飾は抗酸化能や低イオン強度溶液への溶解性を鶏Mfsに付与すると考えた.

シリーズ くらしの最前線 136
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