だご汁およびだご汁類似料理について, 文献調査を行い, 昭和初期頃および昭和中期頃には, 全国各地で様々な料理が家庭で作られ, 食べられてきたことが明らかになった. そのなかでだご汁は, 九州以外ではほぼみられず, 沖縄県を除く九州各県においてだご汁に集約される名称で, 種々食べ継がれていた.
だご汁の喫食の現状について, 中学校または高等学校の生徒およびその保護者を対象としたアンケート調査を実施した. 生徒のだご汁喫食経験率は, 九州全体では71.4%であったが, 県によって大きな差がみられ, 熊本県と大分県が90%以上と特に高く, 鹿児島県では低かった. 喫食経験のある生徒は, だご汁を好んでいる人が多く, 九州全体で83.0%であった. 保護者は, 喫食経験率が九州全体で99.6%, だご汁を好む割合が88.3%と, 高率であった. 生徒の喫食場所・機会については, 「学校給食」がもっとも多く, 次に多かったのが「自宅」で, 喫食回数が多い県ほど様々な機会に食べられている割合が高かった. だごの形状は, 県によって異なる傾向がみられた. 具材は, 昭和時代以前に比べて様々な食材を組み合わせ, 充実した内容となっていると考えられる. だご汁と一緒に出される料理として最も多くの人からあげられたのは, いずれの県でも白飯であった.
2020年4月に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が発令され, 大学への入構が禁止されてから約4か月の間, 大学生が寮や下宿, 自宅でどのように生活環境を整え, 生活してきたか, その実態を把握した. 調査対象は, 下宿生活をする学生が多い奈良県内の小規模女子大学の学部生および院生である.
コロナ禍初期は, 睡眠時間は確保されやすくなったものの, 新しい授業形態や友人や家族に会えない不安などから, 睡眠の質が確保されていたか厳しい状況の学生もいた. また, 目の疲れや首筋や肩のこりを発症した学生は多かった. 食については自炊が増えた, 栄養のバランスを考えるようになったなど, 望まれる食生活に近づけた例も多かったが, 食生活の乱れが一部でみられた. 衣生活では時間のゆとりを活かした衣類の管理や, 気持ちを上げようと衣服への関心を高めた例もみられた. 住生活は, 在宅時間が長くなり, 自室の環境整備に取り組む様子が窺えた.
今後, 情報提供の整備や相談窓口の整備とともに, 寮や下宿の環境整備も必要である. また, 個々人が, 日頃から友人や家族, 他者と繋がりつつ, 日々の暮らしの中で, 趣味や楽しみを持ち, 予期せぬ事態と共存していく生活力を身につけていくことも必要である.
一般に, 介護の質の向上や介護ストレスの緩和には, 介護者と要介護者の相互扶助関係を構築することが必要であることが報告されている. その際に必要なコミュニケーションの円滑化等を導く場面として, 誰かと一緒に食事をする共食が注目されている. 本研究では, 食事介護の際に介護職員が利用者と「共食」を行っている高齢者施設の職員にインタビュー調査を行い, 「共食」の実施が利用者に与える効果について質的に検討した. 調査協力者は, 高齢者介護施設に勤務する経験年数5年から20年の職員6名で, 彼らに対して半構造化面接を実施した. 質問項目は, ①利用者と共食をしているときの様子, ②共食を行うときと行わないときの違い, ③共食を行う上で困難に感じること, ④共食を行うメリットの4項目であった. KJ法を参考に分析を実施した結果, 10個のカテゴリー, 40個のサブカテゴリーが得られた. 本研究の結果から, 高齢者施設での食事介護の際に職員と利用者が共に食事をとる「共食」は, 安心感を生むと同時に相互理解の促進, 利用者の食事摂取の促進などに寄与し, 利用者との良好な相互関係の創出に貢献する可能性があることが示唆された.
楊洲周延が明治21年に制作した錦絵「貴顕舞踏の略図」に描かれた服飾について, 鹿鳴館に関する情報, 当時の服装規定等をもとに検討し, 鹿鳴館での舞踏会の場面であるとは言えないと結論付けた. そこでこの錦絵については二つの可能性が示唆された. 一点目はこの錦絵は舞踏の練習会の場面であるという点だ. 練習であれば女性がデイ・ドレスを着用していることは不自然ではない. 二点目は, 男性の服飾描写には不正確な個所もあり, そこから周延が入手した情報をもとに想像の範囲で描いたものであると推測されることだ. 当該錦絵は服飾史資料と見做すには不確かな要素があり, その扱いには慎重を期さねばならない.