(1) 寒天、のり、心天を用いてカルシウム含量及びその存在型態を化学的に検討した。
(2) 胃の中の状態にならって人工的に溶出試験を行ってみると、胃で溶出するカルシウムはほぼ寒天50%、ゼリーにした寒天60%、のり54%、心天20%位と推定される。
(3) アルコール、水、苛性ソーダ、酢酸及び塩酸の溶媒で各々順次に抽出すればアルコール、水に溶出したカルシウムは全体のカルシウムの乾燥寒天及ゼリー状寒天30%、のり8%、心天23%、アルカリで溶出したカルシウム(アルギン酸カルシウムと推定される)は乾燥寒天17%、ゼリー状寒天11%、のり16%、心天10%、酷酸に溶出したカルシウムは乾燥寒天10%、ゼリー状寒天 2%、のり30%、心天8%位で残りは塩酸で溶出された。
(4) 胃で溶出するカルシウムはアルコール、水、アルカリ及び弱酸に可溶型態のものに限られると思うがそれは全カルシウムの約60~70%であった。それ以外は強酸を用いなければ溶出しない。
(5) 海藻のカルシウムは牛乳のカルシウムに比べてば勿論の事、他の食品のカルシウムに比べても甚しくその利用率が少いので、食事献立からカルシウム摂取量を集計する場合、他の食品のカルシウムと同様に分析数値をそのまま計算に加えることはできないと思う。
(6) しかし、一般的に海藻の炭水化物はマンニットのような糖アルコールを除いて消化されないものとされ、殊に寒天に於てはそれ自体としての食料価値は勿論栄養価値も全くないものとされているが、これらの無機的な価値は一応考えるべきであると思う。
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