新しい理論食料費試算法を用い, 家計調査年報の区分に準拠して, 全国を10地方4地帯, 計14ブロックに分割して, それぞれの地方の資料から, 全国平均ならびに地方別の理論食料費を試算し, 全国平均を100として, 地方別理論食料費の指数を作成した.その結果から次のことが明らかになった.
1) 各地方の毎年の数値の大綱はよく似ており, これらを地方別理論食料費の大きさをあらわす指標として差し支えない.したがって基準 (=100) にあたる理論食料費が決まれば, 地方別理論食料費は, 地方別理論食料費の指数を用いてただちに算出でき, 地方別理論食料費の予測がきわめて簡単になる.
2) 地方別理論食料費の指数の数値を決定する最大の因子は, 地方別の食糧構成であることが察知された.この食糧構成の特色は, 時代とともに徐々にではあるが変化しているので, できるかぎり新しい年次の資料を用いて, 指数の数値を更新するのが望ましい.
上記地方別理論食料費の指数の作成と平行して, 栄養充足状態の目安となる指標の作成にも努めた.従来, 実態食料費の金額からは栄養にまでふれる検討は困難とされていたが, 理論食料費に対する実態食料費の百分率が, 比較的よく栄養充足状態と一致するので, この比率を, 実態食料費を評価する場合の, 一つの指標に加えたらよいと考える.
以上地方別理論食料費の指数および理論食料費に対すを実態食料費の比率を, 食料費検討や食料費設計の指標としていくことは, 食生活指標の充実に役立つと考える.
本報告の要旨は昭和44年-昭和48年の資料にもとついて, 第26回日本家政学会総会に口頭をもって報告したが, 昭和50年に日本人の栄養所要量の改定が行われたので, 本報文の数値はただちに実用できるように, 新しい栄養所要量に準拠し, 昭和48年-昭和50年の家計調査年報を資料として, すべて更新した.なお口頭発表の旧指数ならびに諸資料は, 紙面の都合で省略したのでご容赦願いたい.
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