以上のことから得られた結果を実際に応用すると,
1) 包丁の刃先の摩耗, 欠損は切られる材料の性状によるが, 切り下ろしたときの接触の影響による損傷が大きい, 刃先の減少の状態は, 図8により算出すれば, 今回の実験では, 試料切削と, 切り下ろしたときの接触による影響の割合は, ほぼ, 1 : 2の損傷であると思われたので, 野菜を小口切にする場合, 包丁をまな板に接触させない切削法の方が, 刃先の寿命を長くすることができる.
2) まな板を用いた普通の切削では, 包丁の刃先は, 初期の切削において, 刃先の摩耗欠損が大きい.このことは, 当然のことながら, 包丁の刃先が鋭角で, 刃厚の薄いところを用いるためであるからといえる.
3) 初期の摩耗, 欠損が過ぎると, 刃先の摩耗, 欠損はゆるやかに進行するが, 刃厚を増すので, 切削抵抗も増し, 切削速度は鈍くなる.
4) 今回実験した菜切包丁の垂直圧し切りの場合は, 切削回数約4,000回程度で切削速度が落ちた.
4,000回の切削というと, 胡瓜の場合で約20本の薄打ちとなる.包丁の運動方向や, 食品の硬さ, 切削回数などにより異なるが, 菜切包丁では, 普通の家庭で4~5日の使用に該当すると思われる.したがって, 鋭利な刃先の包丁を使用するなら, 少なくとも, 4~5日に1回研いで用いる方がよいと思う.
5) 刃先の摩耗, 欠損は桧のまな板とプラスチックのまな板では, プラスチックのまな板を使用した方が少ない.
以上のことが明らかになったが, 今後は, 摩耗欠損の両者をわけて検討する予定である.
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