妊婦の体型の変化を把握することを目的として追跡的身体計測並びにシルエッター撮影を実施した.被検者6名, 計測項目は長径, 周径, 幅径, その他の計47項目, 日時は昭和46年5月~昭和52年8月のうち被検者の最終月経より起算した12, 16, 20, 24, 28, 32, 36週目である.おもな結果は次のとおりである.
1) 長径項目では, 前胴高, 腹高, 股上前後長が週を追って増加を, 前中心丈, 前丈が減少を示し, 胴囲線が著しく前上がりとなることが明らかとなった.
2) 周径項目では, 胸囲, 胴囲, 腹囲, 腰囲が有意な増加を, またその他のほとんどの周径項目も増加傾向を示した.
3) 幅径項目では, 胸部横径, 腰部横径, 胴部矢状径, 腹部矢状径, 腰部矢状径, 腸棘幅が有意な増加を示し, その結果躯幹部水平断面は, 胸部ではやや扁平化, 胴部, 腹部ではほぼ円形に近づき, 腰部ではその中間型を示した.
4) 体重, 皮下脂肪厚についてはともに有意な増加を示した.
5) 以上有意な変化を示した項目の増加量と週数との問には, ほぼ直線的関係が認められた.
6) 妊婦の平常時体格と妊娠による体型変化量との関係は認められなかった.
以上の変化は, i) 胎児の成長に伴う母体の変化, ii) 肥満化, iii) 腹部負荷に対する姿勢の変化の3要因によるものでi), ii), iii), の順に強い有意性を示すものと考えられた.
抄録全体を表示