6~20g/100ml大豆たん白加熱ゲルおよび未加熱ゲルの力学的特性について, おもに濃度の影響を検討した.測定は, 静的方法と動的方法を用い, 微小変形と大変形の両領域の実験を行い, 動的および静的粘弾性定数, 破断特性値を得, 次のような結果を得た.
1) 大豆たん白加熱ゲルおよび未加熱ゲルの動的粘弾性率は, 濃度増加に従い急激な上昇を示した.損失正接の値は約0.2であり, 濃度および加熱による変化はほとんど認められなかった.
2) いずれのゲルの場合にも, 応力緩和曲線は6要素マックスウエル型模型に解析することができ, 粘弾性定数は濃度に依存して上昇した.
3) 大豆たん白加熱ゲルの応力-ひずみ曲線は, 破断点の明らかな脆性破壊を示したが, 未加熱ゲルでは, 破断点がはっきり認められない特徴的な曲線となった.
4) 破断ひずみは, 寒天および卵白ゲルに比べて, 大豆たん白加熱ゲルは0.66~0.88と著しく大であった.しかし, 未加熱ゲルの破断ひずみは0.29~0.55であり, 加熱により破断しにくいゲルとなることが示された.また, 破断応力および破断エネルギーは, 加熱により10~~20倍になることを示し, 微小変形の弾性率などが示す未加熱ゲルと加熱ゲルの2倍程度の開きを, はるかに上まわった.
5) 動的弾性率
E'と静的方法より求めた瞬間弾性率
EHとはほぼ一致し, 静的方法と動的方法より求めた弾性率の対応が認められた.動的粘性率η'とマックウェルM
3部の粘性率η
M3とは, 大小関係は一致したがオーダーの違いがあった.
6) 大変形領域の特性値である破断応力
Pfと, 微小変形領域の動的弾性率
E'とは, ゲルの種類により明らかに異なるレオロジー特性であることが示された.
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