家政学雑誌
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34 巻, 2 号
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  • 澱粉質食品の老化に関する研究 (第2報)
    松永 暁子, 貝沼 圭二
    1983 年 34 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    In the previous papers, we reported that the change of degree of gelatinization and retrogradation of starch could be determined sensitively by new enzyme system, β-amylase-pullulanase method (named as BAP method).
    In this paper, we studied the effect of various additives such as salt, sucrose, protein and emulsifiers on the BAP method. As the results, we are able to determine satisfactorily the degree of gelatinization of starch products containing these additives by this method. The degree o f gelatinization of starch in several commercially processed foods was determined by the BAP method. We observed that rice crackers (senbei) gave high degree of gelatinization (about 90%), in comparison with other processed foods of wheat flour such as cookies, and biscuits. Bread retrograded more rapidly than cooked rice when stored under the same conditions.
  • 妻鹿 絢子, 三橋 富子, 藤木 澄子, 荒川 信彦
    1983 年 34 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    市川らの報告をもとに, ショウガ根茎からショウガプロテアーゼを抽出, 精製し, そのプロテアーゼ活性の比較を行った.その結果, ショウガ搾汁, 酵素抽出液, 粗酵素液, 精製酵素B, 精製酵素Aの順にカゼイン分解物が増加し, 酵素の精製が進んだことが確認された.
    これら各精製段階のショウガプロテアーゼをpH5.037℃において, 筋原繊維蛋白質に対して3%になるように添加して作用させた.
    ショウガ搾汁を作用させた場合には, 反応時間60分におけるミオシン分解率は35.8%であったが, 最も蛋白分解力の強い精製酵素Aを作用させた場合には, 反応時間60分で62.3%におよぶミオシン分解率を示した.
  • マイクロ波加熱による食品の硬化現象について (第8報)
    肥後 温子, 野口 駿, 中沢 文子, 島崎 通夫
    1983 年 34 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    脂質組成を異にするパンをマイクロ波加熱したところ, 伝熱加熱と比べ次のような特色を示した.
    1) 脂質組成とは無関係に, すべての供試パンで膨潤度が大きく, ゲル化が促進されていた.
    2) 無添加パン (脂質としてショートニングのみ添加) では, 未膨潤なでんぷん粒とでんぷんゲルの共存が確認され, パンが非常に硬くなった.
    3) 乳化剤添加パン (モノグリセリド添加) では, 添加量の増加に伴って急激にでんぷんゲルが減少し, パンがもろくなった.
    以上の結果は, パンの硬化現象に関して脂質の役割が大きいこと, “セメント” 的なゲル状物質の存在が硬化原因として重要なことを示している.
  • 谷 由美子
    1983 年 34 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    運動競技者の短期間の減量について, 栄養面より適切な方法を検討するため, 女子器械体操競技者を被験者として前回は40日間自由に減食させた結果, Ca, FeおよびビタミンAの摂取量が著しく少なく, 尿中総窒素排泄量の増加より体タンパク質の消耗が懸念されたため, 今回は栄養素のバランスのとれた指示献立に基づいて35日間減食させた.その結果は次のとおりであった.
    1) 栄養素の摂取状況はエネルギー1,258±177 kcal, エネルギー比はタンパク質17%, 脂肪21%となり, 脂肪は制限してミネラル, ビタミンを十分とる目標はほぼ達成できた.
    2) 減食によって体重は平均3.6kg, 体脂肪は2.9kg減少し, 体重減少量にしめる体脂肪減少量の割合は86.3%となり, 前回の79.1%より上昇した.
    3) 減食後A/Gは有意に (p<0.05) 上昇し, 尿中総窒素排泄量 (Cr比) は減少して前回に比して改善された.またドナジオ反応陽性物質の測定より減食による疲労の増大は認められなかった。
  • 泉 加代子, 丹羽 雅子
    1983 年 34 巻 2 号 p. 96-104
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    ギャザースカートの静的ならびに動的シルエットを写真と官能検査によって評価し, その評価値と布の曲げ特性, 振動特性および基本風合いなどとの関係を検討した結果,
    1) 静的シルエットの写真によるHm, θpなどの客観的評価値は, 正確に官能評価値に反映していることが相関分析により得られた.
    2) 静的シルエットは, 曲げ剛性B, 曲げヒステリシス2HB, 単位面積当たりの重量Wの対数変換値との多重回帰式, あるいは3HB/Wと√2HB/Wとの多重回帰式でかなり精度よく表され, その回帰精度はr2>0.8である.また, 静的シルエットは, “はり” “こし” “しなやかさ” の基本風合いの多重回帰式でさらに高い重相関が得られた.
    3) 動的シルエットの官能評価値と布の振動特性, 曲げ特性, 基本風合いとも強い相関をもつことが分析され, 静的シルエットと同一の物理量で表される.
    4) 官能評価によるギャザースカートのシルエットの美しさは, 静的シルエットと動的シルエット間の相関係数r=0.95で, 両者はほぼ同一の評価内容とみなすことができ, シルエットの美しさと布の曲げ特性, 振動特性および風合いとの関連づけが得られた.
  • 芦澤 昌子, 樋口 ゆき子
    1983 年 34 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    The experiments were performed in order to study the relations of visual inspections for seam concerning beauty, uniformity, size, thread tightness and degree of seam puckering, to kind of sewing materials, sewing conditions and the physically measured parameters of seam which contains stitch uniformity and seam puckering etc. In this experiments, the Sheffe's method was successfully applied by the authors to numerically show the results of visual inspections.
    Secondly, the relations between the visual inspections were examined by the correlation analysis method. In addition, the factor analysis method was used to study the relations of the visual inspections to the sewing conditions, the sewing materials and the parameter of seam. These analyses lead to the following conclusions :
    1) As the result of visual inspection
    (1) Significant differences were observed to all items in check of each different combinations of thread and sewing speed.
    (2) Specially the kind of threads has an influence the visual inspection to seam.
    2) It became clear from both correlation and factor analyses that the beauty of seam significantly depends on the uniformity and the degree of seam puckering.
  • 頸部形態の観察 (第2報)
    平沢 和子
    1983 年 34 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    第1報に続き, 65~75歳の女性50名の頸部体表を観察し, 成人女子の頸部形態の経年による変化の範囲とこれに対する生体学的解釈を試みた.
    1) 頸部体表面展開図を推定できる後頸角度は両老に有意の差は認められない.したがって成人女子の後頸角度の範囲は10。から30。とみなすことができ, 体表面展開図は図3のように年齢差がみられない.加齢に伴うオトガイ下部, 舌骨部, 喉頭部の変化は前頸角度の差となって現われた.したがってこの変化によって生じた形態への適合を考える場合, 前頸角度の対応が最も体表に沿うと思われる.青年と成人女子Rohrer示数大のグループの前頸角度の平均の差は13°である。
    2) 体表展開図に現われた頸付根線は, 青年の場合, 肩部では上に凸な曲線であり, 前頸付根線の中間点で下に凸な曲線が多く見られたのに対し, 老年の場合は後中心線から前中心線にかけて下に凸な曲線が多くみられた.これは僧帽筋の頸部が加齢に伴って筋線維が萎縮し, 頸部が円錐形から円筒形に近づいたためと思われる.
    3) 頸付根線によって区切られる老年の頸部断面は青年に比べると高度な有意差で横径は減少し, 前後径は増大する。加齢に伴う胸郭の変形は横径が減少し前後径が増大する.これに僧帽筋の頸部の衰退が加わり, さらに横径が減少したものと思われる.したがって有意差が認められない青年と老年の頸付根囲は, 形の上では大きな変化が認められた.
  • 角野 猛, 佐久間 久仁子
    1983 年 34 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    保存料 (安息香酸ナトリウム, ソルビン酸カリウム, デヒドロ酢酸ナトリウムおよびプロピオン酸ナトリウム) およびグリシンの, 腸内細菌 (S. enteritidis, E. coli, C. freundii, K. aerogenes, P. vulgaris, E. cloacaeおよびS. liquefaciens) の発育抑調作用に対する供試培地の pHおよび薬剤濃度の影響を調べて, 次の知見を得た.
    1) 保存料の誘導期および発育菌量に及ぼす影響は, pH5>6>7の順に強かった.
    2) P.vulgarisは安息香酸ナトリウムおよびデヒドロ酢酸ナトリウムに対して, S. liquefaciensはソルビン酸カリウムに対して強い抵抗性を示した.K. aerogenes, はいずれの保存料に対しても抵抗性が弱かった.
    3) グリシンの誘導期および発育菌量に及ぼす影響はpH8>7>6の順に強かった.
    4) グリシンに対して (S. enteritidis, E. coli K. aerogenesおよびE.clacaeは抵抗性が弱かった.
  • 家庭生活の健全度測定結果 (第2報)
    高橋 惇子, 下東 艶子
    1983 年 34 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1983/02/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    家庭生活の健全度を8項目, 80問から分析して診断したが, それぞれは密接不離の深い関係があり, お互いに影響し合い, 競合し合うのが, 実生活の現象である.
    筆者らは, その関係を, 上述のように平均値 (50PR) 以上の上位群と以下の下位群に区別して, ある項目にすぐれている家庭はその他の項目ではいずれがすぐれているかなどを調べた.さらに相関係数を算出して, 項目間の相関をみた。その結果, 両者から期せずして同一の傾向を把握したことは興味をさそった。すなわち, 家族と教育, 教育と食生活, 教育と衣生活, 衣生活と食生活の4組合わせは相関係数からも, また上下群の差からみても顕著で, 同じ関連性が発見できたのである。
    筆者らは, 経済・健康はいずれのアイテムとも強い相関があり, また, ダイア・グラムに隣接した各領域はそれぞれ関連の深いものとして設定したが, 今回の結果では健康と食生活, 環境と経済, 経済と教育はほとんど相関がない結果となった。しかし他は仮説どおりの結果を得たのである.
    本研究の結果から, 家庭経営に対して, 生活領域の関連に対する一側面を発見した.これは, 松島らによる家庭の生活系 (人間と環境の関係) の関係図, つまり, 家庭生活の主体となる家族と生活手段となる食物・被服・住居 (物的資源) が表出的な軸となり, 目標は家族の決めた目標に向かいながら, 家族・個人の成長・発達が家庭経営の終局の圏標を図示している.そのなかで経済はすべてにかかわり, 環境は家庭生活をより押し上げる外的作用としてかかわり, 健康は個人・家族そのものと直接不離にあると考察できる関係図を一部裏づけたように思われる.
    すなわち, 本研究によると, 家族の幸福な家庭生活を維持するためには, 主婦は日常の家庭経営において, 家族生活と衣・食・住生活の運営や子女の教育の面を強調すべきであろうと考えられる.これらの5領域は家庭生活の健全度を支える基盤的役割を示すものと考えられる.
    その他の項目の環境・経済・健康は他の項目との相関が低くでたが, このことは, 環境は家庭生活の快適性を周辺から押し上げるものである関係から, 直接に家庭内の事象との関連が乏しく現れたものと思われる。また, 経済と健康については, 他の生活アイテムのなかに密着して, 最も強い相関があるべきと考えるが, 本調査では意外な結果となった.とくに, 経済に関しての測定の質問内容の設定の仕方に欠点があったと考える.
    したがって, 今回の質問ではこのような結果を生じたけれど, 質問内容の設定によっては今回と異なる相関を得るものと考えられる。
    今後の課題としては, アンケートに使用した「家庭生活の診断テスト」のに設けられた80問の個々の内容を検討し, 広く一艘の実生活に適切な質問であるか否かの検討をすることである.これは基礎的な問題である.そして, この筆者らの試案的診断テストが標準テストに高められ, 家庭生活の健全度を左右する要素を的確に明示し, 役立つものにしたい.
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