普通包装の胚芽精米と冬眠密着包装の胚芽精米(冬眠米)を用い, 前者は開封した状態で, 後者は包装のまま室温日なた, 室温暗所, 30℃フラン器中に保存し, 保存期間中の脂質の酸化状況を知るため過酸化物価および酸価を測定し, また炊飯香気の変化をガスクロマトグラフィーで調べた.
1) 過酸化物価は開封日なた保存で30~60日ころより急上昇し始め, 140日ほどの間に約8倍の値となった.30℃保存でも緩慢な上昇傾向を示したが, 冬眠米日なた保存では, 上昇傾向はさらにゆるく, 他の試料では保存期間中ほとんど変化はなかった.
2) 酸価は冬眠米30℃保存で急激に上昇し, 105日ほどの間に約6倍の値となった.開封30℃保存では最初の30日間やや高い値を示したが, その後は上昇せず, 他の試料では保存期間中ほとんど変化はなかった.
3) 炊飯香気成分については, 開封30℃保存ではヘキサナール, n-バレルアルデヒド, アセトアルデヒド, アセトン+プロピオンアルデヒドなどの増加が著しく, 30日くらいの間にピークに達した.日なた保存ではこれらの成分は, 50日ころから増加し始め, 70日ころにピークに達し, またペンタンについても同様の増加傾向を示した.冬眠米ではカルボニル類やペンタンの増加はほとんどなく, 30℃保存で50日ころよりエタノールが急増するという特徴が認められた.
4) 以上のことから, 開封日なた保存では, 光により脂質の自動酸化が促進され, 炊飯香気を変化させること, 30℃ではリポキシゲナーゼによる酸化が主として起こり, さらに短期間の問に炊飯香気の変化が起こることが推測された.冬眠米では, 脂質の酸化は抑制されるが, 30℃では, リパーゼによる加水分解の結果, 遊離脂肪酸が蓄積し, 嫌気呼吸の結果と思われるエタノールの増加もあることからこれらが原因となって風味を低下させる可能性が示唆された.
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