大鹿村182名の主婦を対象に, 加工食品について実態を詳細に把握し, 家庭の手作り加工食品の動向を調べる目的で, アンケートによる実態調査を行い, 次の結果を得た.
1) 比較的よく喫食されている加工食品70品目における自家加工率からみて, 全世帯数の約10%以上の家庭で作製している食品は, 25品目であった, 食品の内容は, 梅干漬・たくあん漬・煮豆・野沢菜漬・野菜粕漬・野菜奈良漬・味噌・餅・餡・こんにゃく・干柿・干椎茸・山菜漬・きな粉などで, 土地の産物を比較的労働時間をかけても自家加工していた.世代別には, 一世代と三世代が自家加工率が高く, 年齢別には20歳代の若年主婦が低率を示した.
2) 自家加工する理由としては「自家生産管理・習慣・味覚」などが重要視され, 自家加工意識が強く, 作製に関する参考資料としては, いずれも「親代々からの伝承・我流」などによるものが高率であった.また主婦が加工食品を作る場合と食べるときに, 食塩摂取に対して「ときどき注意する」と「注意する」を合わせると関心度は92.9%で, 高率を示した.
大鹿村の食生活において, 日ごとに食品購入ルートが拡大され, 食生活の都市化も着実に進んできている.この地域では, 土地の産物を利用し, 加工食品を作る伝統的な食習慣がいまも残されていることがわかった.市販品を食べ慣れると味覚がそれに順応し, 自家製の家庭の味はしだいに忘れられ, 味覚が変化していく可能性が大になるおそれがある.そこで今後も, 家庭独自の味の伝承を大切にしたい.また市販品のなかには, 品質・保存性・栄養価など向上の目的で, 食品添加物が用いられ, これに伴う添加物の有害性の問題が問われている現状もある.この点からも, 各家庭で適正な自家加工食品を作る習慣を残し, 家庭における食生活の充実を図るべき主婦の努力を望みたい.
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