家政学雑誌
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36 巻, 12 号
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  • 道本 千衣子, 毛利 佳世, 五十嵐 脩
    1985 年 36 巻 12 号 p. 923-927
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    トゲキリンサイ (Eucheuma serra) から分画されたκ-およびλ-カラギーナンを用いて, 大豆タンパク質, 牛乳カゼイン溶液との反応性, 分散安定性について検討し次の結果を得た.
    1) 大豆タンパク質の分散安定性は, 酸沈殿タンパク質, 7S, 11Sグロブリンのいずれにも, κ型よりλ-カラギーナンのほうが安定化効果が大きかった.これに対し牛乳のαs1-カゼインについてはλ型よりもκ-カラギーナンのほうが効果が大きかった.
    2) 大豆タンパク質溶液を加熱すると, κ-カラギーナンの安定化効果はいくぶん高くなった.牛乳のαs1-カゼインに対しても同様の傾向がみられた.
    3) κ-カラギーナンの大豆酸沈殿タンパク質の安定化作用には, 塩化カルシウム濃度が著しく影響するが, λ-カラギーナンの場合は塩化カルシウム濃度の影響をあまり受けなかった.牛乳カゼインの場合もそれほど大きな影響を受けなかった.
    4) カラギーナンによる分散安定性は主に安定なコロイド生成によることが確かめられた.
  • 安喜 秀己, 宮本 悌次郎
    1985 年 36 巻 12 号 p. 929-933
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    ナイアシンのL.plantarumを用いる微生物定量において, 穀類中の結合型ナイアシンの影響を明らかにするため, 小麦胚芽より結合型ナイアシン標品を精製し, 種種の検討を行い, 以下のような結果を得た.
    1) 穀類試料は, 1Nの水酸化ナトリウム, 120℃, 2時間, 加圧分解で完全に結合型ナイアシンが遊離化され, 0.1Nの硫酸, 120℃, 0.5時間, 加圧抽出では, 結合型ナイアシンは分解をうけず, 遊離型ナイアシンのみが抽出された.
    2) 小麦胚芽より精製した結合型ナイアシン標品をナイアシン源とした生長曲線は, 通常法の条件では, 培養10~13時間目で増殖が一時とまる, いわゆる二段増殖相を示し, その後は結合型ナイアシン200ng相当量がニコチン酸100ngに近い活性を示した.一方, 迅速法の条件では, 二段増殖相はみられず, 2時間目から結合型ナイアシンとニコチン酸の間に増殖の差が現れ, 3~4.5時間培養において, 結合型ナイアシン200ng相当量はニコチン酸50ngとほぼ同じ活性を示した.
    3) 結合型ナイアシン標品を用いて, 迅速法の条件で培養すると, 菌体への取り込みはみられるが遊離化せず, 結合型のまま存在し, 通常法の条件で培養すると, 迅速法の場合よりも菌体への取り込み量は増加し, 取り込まれた結合型は弱酸により遊離されてくるような, ゆるい結合のものに変化した.ニコチン酸は, 通常法, 迅速法の条件にかかわらず, すみやかに大部分, 菌体内に取り込みが行われた.
    4) 小麦製品中の結合型ナイアシン量はアルカリ分解の迅速法測定値または通常法測定値と酸分解の迅速法測定値の差の4/3倍, 遊離ナイアシン量はアルカリ分解値から結合型ナイアシン量を差し引くことにより, 分別定量ができた.
  • 材料配合および貯蔵条件が性状・糊化度におよぼす影響
    市川 朝子, 中島 早枝子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 935-942
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    1) 焼き上がり直後のクッキーのテクスチャーは, 材料組成の違いにより, 一定した傾向を示した.バター量が多く, 砂糖量の少ない試料ほど硬さは低い値となり, もろい性状を示した.
    硬さ, もろさおよびそしゃく性と糊化度に関する相関係数 (r) を求めたところ, もろさとの相関関係の強いことが認められた.
    粉1に対し水分を0.28加えた試料にくらべ, 粉1に対し水分を0.4加えた試料は, 焼き上がり直後の性状では, もろさにおいてとくに顕著な差を示したが, 貯蔵後は, 硬さ, もろさ, そしゃく性ともに著しい違いが認められた.
    2) 焼き上がり直後の色は, 粉に対し同量のバターを加えた試料では, バターによる影響が強く表れた.粉1に対し, バター0.75を加えた試料は, 加える砂糖量が増加するにつれて, 段階的な色の変化を示した.バター0.5の試料では, 砂糖を20%加えた場合に初めて添加した砂糖の影響が色に表れた.
    3) 今回行った高脂肪含有クッキーの糊化度は, 全般に低い値を示した.粉1に対し水分を0.28しか含まないクッキーの糊化度は, 砂糖を加えることにより高くなった.粉1に対し水分を0.4含む試料は, 水分を0.28含む試料とくらべ, 糊化度の値はやや高く, デシケーター内で14日間まで安定した値が保たれた.砂糖を加えることにより, この効果はさらに大となった.
    4) 官能的な粉っぽさに関しては, バター量の違いによる有意差は認められなかったが, 砂糖量の違いにより明らかな有意差力が認められた.また, 糊化度と官能的な粉っぽさの相関係数 (r) は, 0.3~-0.3の範囲の値となり, 相関性はあまり認められなかった.
    今回作成した高脂肪含有クッキーのうちでは, 粉1に対し, バター0.75, 水分0.4, 砂糖を生地の20%含む試料がもっとも好まれた.
  • 池内 ますみ, 中島 純子, 河合 弘康, 遠藤 金次
    1985 年 36 巻 12 号 p. 943-947
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    しいたけ乾燥過程中のNaseとPMaseの挙動, および乾しいたけの加熱過程における核酸関連物質の消長について検討した.その結果は次のように要約できる.
    1) しいたけ中の両酵素の熱安定性に及ぼす水分量の影響を調べたところ, PMaseにくらべてNaseの熱安定性は水分量の影響を強く受け, 低水分域でその熱安定性が著しく増大することが明らかになった.
    2) しいたけを15, 50, 80℃で送風乾燥したところ, 前二者の条件では両酵素の失活はみられなかったが, 80℃ではNaseにくらべpH6~7の領域でのPMaseの失活が目立った.
    3) 50℃乾燥しいたけと80℃乾燥しいたけを水で膨潤させ, さまざまな温度上昇速度で加熱したところ, 7℃/分の上昇速度のときもっとも多量の5'-Ntが蓄積すること, 50℃より80℃乾燥しいたけのほうが5'-Nt蓄積量が多いことが明らかになった.
  • 本縫いミシン縫製に関する研究 (第2報)
    福澤 素子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 949-957
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    本縫いミシン縫製に伴う布地の引き締めの実態を知るために, 6組の布地-縫い糸の組み合わせについて, 種種の条件下で縫製して縫い目での布地の厚さを光学顕微鏡を用いた写真撮影により測定した.そしてこの厚さの測定値を用いて, 一つの縫い目において上糸と下糸で囲まれた布地の面積を求め, その値を使って本報告で新しく定義した引き締め率を算出して, 布地の引き締めに及ぼす上糸張力と縫い目密度の効果および布地と縫い糸の種類による差異について比較検討を行った.なおこの場合糸バランス率が約100%で本縫いの理想的な縫い目を有する試料だけを対象とした.
    その結果主に次のような知見を得た.
    1) 縫い目密度の効果からみた場合, 縫い縮みの現象と縫い目での布地の厚さの変化を主とした引き締めの変化は必ずしも同一挙動を示さないこと, また縫い縮みの程度が小さくても布地の引き締めの程度はかなり大きいことから, それぞれの現象を引き起こすおもな原因は異なっていると推測される.
    2) 糸張力が小さく糸締りの影響が小さい場合でも布地の引き締めは大きい.これには押え金と縫い糸による布地の押えつけが関与しているものと推測される.
    3) 糸張力が大きくなると糸締りの影響で布地の引き締めの程度も増大するが, 糸張力があまり大きくなるとその増大のしかたが鈍くなる.この現象はとくに縫い目密度が小さい場合に顕著である.
    4) 布地によって糸張力に対する引き締めの依存のしかたは異なるが, 糸張力が小さい領域では押えつけられていた布地の復元力の差が, また糸張力が大きい領域では押え金と縫い糸による布地の押えつけられやすさの差がその原因となっている場合がある.
    5) 同じ静的上糸張力で縫製した場合には絹ミシン糸のほうが綿ミシン糸よりも布地の引き締め方が大きい.この差は縫い糸による特性 (太さ, 伸びやすさ, 変形のしやすさ, 布地の押えつけやすさ, 布地との親和性等) の違いが縫製時の引き締め過程と縫製後の布地の復元過程に異なる影響を及ぼした結果と考えられる.
    6) 縫い目密度が一定の場合, 布地の引き締め率B.R. (%) と上糸張力T (g) との関係は経験的ながら下に示した式で表すことができる、
    B.R.=aT+b (abは定数)
    なお, 本研究の一部は昭和58年度日本家政学会年次大会 (第35回) で発表したものである.
  • 樋口 ゆき子, 二宮 玲子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 959-965
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    For the analysis of the neck shape, the development of the neck surface is a effective method.
    As the method of development, the triangular method and the tangent plane method are used.
    The triangular method could be affected by twist if it is applied carelessly.
    We examined the condition of twist by means of the model of which theoretical value is known.
    Then drafts of the neck surface development by the tangent plane method which has no twist were drown, and their patterns were compared.
    The length and the surface area could be computed.
    The following results were obtained.
    1) Drafts of the development of the neck surface represent characteristic features of the neck shape.
    2) There are little difference concerning the length and the surface area between two methods of development.
    3) Almost the same patterns were obtained by two methods (the triangular method and the tangent plane method).
    4) In the triangular method the error caused by the twist on the development of neck surface can be neglected.
  • 川崎 衿子, 大井 絢子, 浅見 雅子, 林 知子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 967-972
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    以上報告してきたことを要約すると以下のようになる.
    1) 男子学生は家庭科の学習は, 小学校までが多く, また, 女子はほとんどの場合, 高校まで学習している.
    2) 住まいの学習歴は, 男子では56%が小学校でしたと回答している.また, 女子は中学では82%, 高校では, 60%と低減するものの高学年へ進んでも多くの者が「学習している」と回答している.
    3) よく知っている語彙は, 全体傾向として, 日常会話でも使用されるものが多く, また, 他教科との関連性や社会生活との関係も深いため, 生活上の知識としてこなされていると考えられる.したがってよく知っている語彙は, 学習歴の差にかかわりなく男女ともに同じように知っており, 両者の問に明確な差はみられない.
    4) 知らない語彙は, 全体傾向として, 建築計画, 歴史, 構造をはじめ, 住宅問題を含む専門用語である.これを男女別に比較すると女子が知らない率よりも, 男子の知らない率が高い傾向をみることができる.なかでも, その男女差の大きいものは, 家庭科の中での住まいの学習に多く使用されている語彙であることから, 男女の理解度の差と学習歴とは, 関連が深いといえる.
    5) 60%の女子は, 住まいの学習を高校まで行ったとしているが, その過程での教科書に必ず記載され, くり返し学習されていると考えられる語彙の理解度が低い.さらに, 過去において学習したという記憶と照らし合わせた語彙の知識の定着実態は, 予想にたがわず低調であることが明らかになった.このことは, 教育現場での住居領域への取り組み方が不十分であり, 住まいに関する知識や, 考え方を生徒に定着させるという点で, 授業方法や授業内容が学習効果を十分あげるまでに至っていないことを示している.
    以上の調査結果から住居領域は多くの問題をかかえている.家庭科の中での住居領域の分量の割合は, 小, 中, 高校ともに1割前後にすぎず, これでは必然的にその密度は薄いものとなり学習経験も豊かになりえず, 生徒の印象も弱いものとなるのは当然である.したがって住教育の充実のためには, 住居領域の質的, 量的検討と同時に, 教師の指導性や, 教材開発にもわたっての見直しが重要課題であり, さらに他教科との関連を密にしながら家庭科の総合的な整備が必要とされる.
    本研究では, 学習歴と語彙の理解度との関係を学生の記憶をもとに調査分析を行ったが, 引き続き正確な理解が行われているかを判断するために記述回答による調査を行い, 語彙理解の実態について, さらに検討を進めている.
  • 松阪市における高齢者の生活構造 (第1報)
    上島 雅子, 渡辺 澄子, 川本 栄子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 973-983
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    松阪市における高齢者の生活意識を調査した結果, 次のようなことが明らかになった.
    1) ほとんどの高齢者は, 生活満足度, 自由時間満足度, 経済満足度において満足しており, 家族も円満であり, 家族からも気づかってもらっている傾向にあった.また, 高齢者の側でも「ふだんの心がけ」や「日々の心縫え」にみられるように, 対人関係, とくに家族関係に気を配っていた.性別による差がみられたのは, 「ふだんの心がけ」と「大切なもの」であり, 主義主張をもつことを心がけている者は, 男性に多く, 女性は少なかった.健康が大切と意識している者は, 男性よりも女性に多くみられた.
    2) 高齢者個々人の生活意識を構成する要因は, (1) 満足・不満足要因, (2) 経済的不安要因, (3) 家族依存要因, (4) 自己中心的要因が主であった.
    3) 4生活意識要因をもとに高齢者を分類した結果, 「生活全般満足タイプ」, 「自立タイプ」, 「家族依存タイプ」が, それぞれ20%あり, これら3タイプを合わせると62%を占めている.その他「生活に不満のあるタイプ」, 「生活に不満のないタイプ」, 「仕事中心タイプ」が26%, いずれのタイプにも入らない者が12%あった.これらのタイプの違いは, 性別, 配偶者の有無職業の有無や経済状態, 地域社会生活とのかかわり方によって左右されていることが明らかになった.
  • 神川 康子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 985-992
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    乳幼児のすこやかな眠りを促すことにより, 乳幼児をもつ家庭の家族員, とくに母親の夜間睡眠を効果的なものとし, 家族の充実した日常生活を保障していく目的で乳幼児の睡眠について解明することを事例的に試みた.結果を示すと図12のようになる.
    これらの結果から, 乳幼児の睡眠をより深く安定したものとしていくために効果的な試みとして, つぎの二つのことがらがあげられる.ひとつは, 乳幼児の生活リズムの形成である.たとえば, 規則的に昼寝や夜間睡眠をとることや食事 (または哺乳) をとるように心がけること.そしていまひとつ重要なことは, 母と子, または家族どうしの安定した精神的生活により得られる, 子どもの情緒の安定であると考えられる.そのためにも, 母親や周囲の家族が, 乳幼児の成長・発達に伴う, 生活や睡眠の変化について深く理解をするよう心がけることが必要であると思われる.
    本報告は事例研究であるので, 現在, この結果に基づいて, 乳幼児の睡眠に関する調査票を作成し, 乳幼児をもつ家庭の実態を調査し, さらに結果の検証を行っている.
    本研究は概要を昭和57年度日本家政学会年次大会 (第34回) において発表した.
  • 青木 淑子
    1985 年 36 巻 12 号 p. 993-997
    発行日: 1985/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
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