総合健診
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37 巻 , 2 号
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[特集]
総合健診と遺伝子検査
  • 登 勉
    2010 年 37 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
     ヒトゲノム計画の完了により,ヒトゲノムの全塩基配列が読了された。疾患の発症機序が分子や遺伝子のレベルで解明され,その分子異常を標的にした治療薬が日常診療において使用されるようになった。ゲノム情報を治療選択に利用するためには,遺伝子検査が重要であるという認識に異論はないであろう。一方,遺伝子検査を病気の予知予防に利用して,健康増進の役立てるという用途も考えられるが,これに関するコンセンサスは得られていない。
     本稿では,総合健診における遺伝子検査の役割について述べる。遺伝子検査の定義が,各学術団体や政府機関などによって様々であり,それぞれの定義する遺伝子検査が取り扱う検査のタイプにも違いがある。しかしながら,遺伝子検査を臨床応用する際に考慮すべき点に関しては,米国CDC がACCE モデルとして提唱しているが,我が国では統一された評価システムは存在しない。疾患頻度が比較的高いアルツハイマー病の場合,遺伝子検査は発症予測に有用でない。多因子病である生活習慣病の場合,多くの遺伝子と環境要因が発症に複雑に関与する。したがって,ある特定の遺伝子の検査のみで発症予測することは困難であり,また,多数の遺伝子を検査してもそれぞれの遺伝子の寄与度が異なるため,非常に複雑な予測式が必要になる。GWAS が進展し疾患関連遺伝子に関する報告が増えている。しかし,より正確な疾患の発症予測のためには,遺伝子検査の検査妥当性,臨床的妥当性,そして臨床的有用性に関する臨床治験が比露であり,環境要因と遺伝要因を考慮した発症予測が可能になる日が近いことを期待したい。
  • 山﨑 義光, 片上 直人, 今井 博久
    2010 年 37 巻 2 号 p. 246-252
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
     我が国では近年,肥満と糖尿病患者の増加が著しく,深刻な健康問題になっている。男性では10 歳間隔の年齢層で20 歳以上のすべての年齢層で肥満者の割合の大幅な増加が見られている1 )。肥満は動脈硬化の危険因子であり,脂質異常,高血圧,耐糖能異常を合併しやすく,心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の基礎的な病因になるため,その増加は我が国の医療全般に多大な影響を及ぼす。また糖尿病は,最新の国民健康・栄養調査の概要によると「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」の総数は約2,100 万人であった。すなわち,肥満や糖尿病は我が国の健康・医療の問題の中で深刻な状況を呈しており,早急に効果的な対策を実施しなければならない問題であることが分かる。
     こうした状況の下,平成20 年度から生活習慣病対策の一環として,メタボリック症候群をターゲットとした特定健診・保健指導の制度が始動した。健診でメタボリック症候群あるいは予備群とされた人に対して,保健指導の実施が義務付けられた。しかしながら,メタボリック症候群に対する効果的な保健指導の方法論が確立されていないため,その指導効果も限定的であり,どのような保健指導を実施すれば効果を挙げられるかが最も求められている。 以前より,日本人は,肥満しやすいあるいは糖尿病になりやすい体質を有していることが知られている。この肥満や糖尿病になりやすい体質―遺伝因子が検索できれば,保健指導に対する指導の効果が飛躍的に高まると期待されている。本稿では,生活習慣病ことに動脈硬化関連遺伝因子の解析の現況と,遺伝子検査をもちいた,生活習慣病指導の効果および問題点について述べたい。
  • 清水 憲二
    2010 年 37 巻 2 号 p. 253-266
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
     日本人の約2 人に1 人が生涯のうちに何らかの癌に罹患すると言われる現在,癌の予防と早期発見法の確立は焦眉の急である。本稿では,そのための戦略として有望とされる癌の遺伝子検査について,その現状と問題点,将来の展望を概説する。遺伝子診断による癌の罹患率予測で最も信頼性が高いのは,高浸透率の遺伝性腫瘍である。特に,遺伝性乳癌/卵巣癌症候群,Lynch 症候群,甲状腺髄様癌等が既に実用化段階に達しており,世界的な広がりを見せている。しかし,これらの遺伝性腫瘍はそれぞれの癌種全体の中では数%を占めるに過ぎず,しかも限られた家系でのみ適用可能な検査であるため,国民全体の癌予防に対する効果は限定的である。孤発性の癌を含め,癌の分子病態学的な研究から,有効な治療法の選択に遺伝子情報を活用するPharmacogenetics が最近進展し,薬剤の効果や副作用の予測に役立っている。この方面の研究と実用化は今後も急速な全面展開が期待できる。一方,癌全体の9 割を占める孤発性癌の発症確率予測は,現時点では未だ発展途上である。その大きな理由は,孤発性癌の発症が多くの遺伝的要因と環境要因の相互作用に基づくことにあり,それぞれの遺伝的要因の寄与率(浸透率)が小さいことである。それでも,最近の数年間に,前立腺癌,乳癌,肺癌等に関しては,発症危険度に関与する複数の遺伝的多型が明らかになり,個人におけるそれらの重複の程度から,高リスクの個人を特定できるようになってきた。ただし,個人別に多くの癌種の発症確率予測を同時に行う方法はまだ世界的にも完成していない。この試みを実現しつつある我々の最近の研究の一部を紹介し,今後の方向を示唆したい。
     最後に,孤発性癌の遺伝子検査が未成熟な状況で実施されつつあるという世界の動向を報告し,癌の遺伝子検査に対する専門家集団や行政の対応,倫理的,社会的な問題等について,私見を述べる。
原著
  • 村上 美絵, 岸田 玲奈, 押方 玲香, 野田 友香, 永田 純美, 宮本 徳子, 寺澤 洋子, 今村 裕行
    2010 年 37 巻 2 号 p. 267-272
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,緑黄色野菜の摂取量と高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)との関係について検討することである。被検者は,健康で喫煙や飲酒習慣を有さない女子大学生103 名である。重回帰分析を行ったところ,HDL-C とHDL2-C は緑黄色野菜の摂取量と体重にそれぞれ独立した関係が認められた。緑黄色野菜を摂取量別に3 群に分け,共分散分析にて体重の影響を除いたところ,少ない群のHDL-C は,中間群と多い群のそれぞれに比較して有意な低値を示した。本研究の結果から,健康な女子大学生において緑黄色野菜摂取量はHDL-C とHDL2-C とともに関連があり,緑黄色野菜摂取量が少ないとHDL-C の低下を招くことが示唆された。
  • 谷 昇子, 丸上 輝剛, 松田 淳子, 進藤 亜紀子, 竹本 敬子, 岡村 智教, 稲田 紘
    2010 年 37 巻 2 号 p. 273-280
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/08/27
    ジャーナル フリー
     我が国の政府は,平成20 年4 月より医療保険者(国保・被用者保険)に対し,40 歳以上,75 歳未満の被保険者と被扶養者を対象に,内臓脂肪症候群に着目した特定健診・特定保健指導の事業実施を義務づけた。この特定保健指導を支援するため,内臓脂肪症候群の患者などが,日々の生活習慣情報を電子的に記録することにより,医師,保健師,管理栄養士が行う保健指導に活用することが可能なツールとして,これまでにPDA を用いて開発済みの在宅糖尿病患者管理支援システムを改良した保健指導支援システムを構築した。このシステムでは,簡便で正確な食事内容の入力を可能とするため,ボタン操作によるメニュー選択方式を用い,食品量の目安がブラウザでいつでも視覚的に確認できる食品模型(フードモデル)参照機能が考案・付加されている。また,総摂取熱量の自動算出機能を加味した。
     しかし,このシステムがそのまま内臓脂肪症候群の予防のための保健指導支援ツールとして適切かどうかの吟味が必要であり,このため本研究では,国立循環器病センター予防検診部職員を対象とするアンケート調査からシステムの評価を実施し,問題点の検討を試みた。その結果,フードモデル参照機能では,視覚情報として食品量を比較することにより,食事への意識を高めることが期待された。また,食事内容の入力では,メニューの選択方法および補正機能を工夫することにより,入力の簡便性および内容の正確性の向上がもたらされることがうかがわれた。本システムはまだ運用までに至ってはいないが,これまでの専門家に対する意見聴取から,調査結果で挙げられた問題点などの改良をはかることにより,保健師や管理栄養士などが行う保健指導の支援に有用なことが期待された。
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