近年、日本は世界有数の長寿国になり、その要因としては国民全体にあまねく普及した医療制度が挙げられ、海外からも高く評価されている
1)。しかし、現在のわが国には多大の健康課題がある。すなわち、社会の急速な高齢化に伴う生活習慣病の増加、介護問題、さらに経済の悪化による社会保障の不安定化も加わり、国民の健康不安も大きく、メンタル関連疾患が増加している。
就労状況も高齢労働者と女性労働者が増加している。2010年度には全雇用者総数の42.6%が女性であったが
2)、女性労働者は非正規雇用者が多く、その雇用形態・条件には問題が多い。そして、すべての就労者には労働安全衛生法により、年1回の健康診断実施が事業者に義務付けられているが、その健診項目として女性固有疾患は対象になっていない。実際には、疾病構造は男女間で大きく異なり、就労女性の健康問題として婦人科・乳腺疾患は大きいが、わが国では受診率も低く、その早期発見・予防の大きな障害となっている。
一般に女性健診は婦人科・乳腺検診を指すが、広義には泌尿器科疾患、更年期障害、骨粗鬆症、メンタルヘルス対策などが含まれる。女性にとってこれらの疾病不安は強く、女性健診を制度として実施すべきである。最近の動きとして、女性健診を制度化した企業・自治体も増加しており、女性就業者には極めて好評である。この女性健診の特徴としては有所見者が多く、当施設での受診結果をみても(2010~2011年度の統計)で、40歳代後半で婦人科検診は50.9%、乳腺検診は24.5%の有所見者比率が認められた
3)。有所見者の大部分は経過観察となるが、受診結果についての十分な指導・相談体制が重要である。
女性の社会進出も進んでおり、ライフステージを通した有効かつ効率的な健診システムを構築したい。そのためには、一般健診とともに女性健診も対応可能な医療機関の整備も必須である。
これからの健康診断は、単に受診時の結果評価のみではなく、受診者の生活、業務、メンタル面を含めた総合的な健康支援としての位置づけが社会から求められている。
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