総合健診
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39 巻, 5 号
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原著
  • -肥満度・血圧・血清脂質・血糖値・尿酸値・脂肪肝-
    谷口 いつか, 上野 晋作, 鈴木 康夫, 斎藤 征夫
    2012 年 39 巻 5 号 p. 567-574
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     本研究は、建設および建設関連業務に従事する労働者で生活習慣病健康診断を平成5年と平成20年に受診した30歳代から50歳代の人々を対象にして、年代別の検査値および検査値異常者の割合を現病歴を含めて平成5年と平成20年での変化を調べたものである。
     平成20年は平成5年に比較して、男性の場合、BMI値、血圧値、総コレステロール(TC)値、尿酸値はすべての年代で空腹時血糖値は50歳代で有意に高かったが、トリグリセリド(TG)値はすべての年代で有意に低かった。肥満者の割合は40歳代と50歳代、高血圧症者、高尿酸血症者の割合はすべての年代で、高TC血症者割合は30歳代と40歳代で、高血糖値者割合は50歳代で有意に増加したが、高TG血症者の割合はすべての年代で減少した。一方、女性の場合、BMI値はすべての年代で有意に低く、「やせ」の割合はすべての年代で増加した。高血圧症者の割合は変化がなかった。TC値は、40歳代と50歳代で有意に高く、TG値はすべての年代で有意に低かった。高TC血症者の割合は、全ての年代で有意に増加し、高TG血症者の割合は40歳代と50歳代で有意に減少した。空腹時血糖値および高血糖値者、高尿酸血症者、脂肪肝者の割合は変化を認めなかった。
     最近の15年間における建設業労働者では、男性の検査値および異常者の割合は増加しているが、女性のそれは男性ほど変化を認めなかった。
  • 吉村 良孝, 江崎 一子, 今村 裕行, 長野 力, 樋園 和仁, 平川 史子, 米持 英俊, 安房田 司郎
    2012 年 39 巻 5 号 p. 575-578
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     動脈硬化は、虚血性心疾患や脳血管疾患の危険因子である。そのため早期に上腕―足首脈波伝達速度(brachialankle pulse wave velocity; baPWV)を測定し、動脈硬化度を把握することは、予防医学の観点から重要なことと思われる。喫煙習慣とbaPWVの関連についてはいくつか報告されているが、若年者を対象とした報告はあまりみられない。本研究の目的は、喫煙習慣が若年男女のbaPWVに及ぼす影響について検討することである。被検者は高血圧や肥満ではない健康的な学生で、男性は21名であり、喫煙群9名、非喫煙群12名、女性は23名であり、喫煙群10名、非喫煙群13名である。喫煙群の累積喫煙量はpack/yearsを用いて調べた。男性の累積喫煙量は8.1±3.4pack/yearsであり、女性は4.1±2.4pack/yearsであった。男女それぞれの栄養素等摂取状況には有意な差は認められなかった。男性の喫煙群のbaPWVは非喫煙群に比較して有意な高値を示した。しかし、女性の両群の間には有意な差は認められなかった。この結果から、若年男性における喫煙習慣は、動脈硬化度を亢進させる可能性が示唆された。
特別寄稿
  • 吉川 博通
    2012 年 39 巻 5 号 p. 579-583
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     「健康寿命」という言葉が世間でよく使われ出したのに合わせ、元気な高齢者が実に多く見受けられるようになり、ますます超高齢化まっしぐらである。一方で、健康のメンテナンスに大いに利用されているわが国の人間ドック健診受診者の中にも高齢者が増え始め、数は少ないが75歳以上のいわゆる後期高齢者がチラホラみられるのも珍しくなくなった。
     ただ後期高齢者になると、健康上、これまでの常識が通用しない面が多くなり、健康そのものの指標が大きく変わることから、一般受診者とは一律に取り扱うことが難しく、どうしても自立した生活が困難となる生活機能障害を予防するための特別なライフステージに応じた対応が必要となってくる。
     昨今、健診無用論を唱える学者もいるが、これは個人個人の哲学的問題であって、イエスもノーもいえるものではない。ただ年々人間ドック健診の受診者が増えることを考えると、それならばその人たちに満足してもらえるシステム作りが必要となってくる。高齢者たちを集め、全国各地で介護予防健診と銘打って全人的、包括的なシステムを構築し、健診を行っていることはすでに周知の通りである。しかしこのシステムを完璧に現在日々の一般健診の中で、数少ない高齢者に行うとなるとそれは至難の業といわざるを得ない。まずできる範囲で一つ一つ着手して行き、これからも増えるであろう高齢者の幸せな老後を送るのに大事なQOLを高める手立てに手を貸すとならば、願ってもない総合健診のレベルアップに繋がるということになるのではないだろうか。
大会講演
日本総合健診医学会 第40回大会
  • 田中 滋
    2012 年 39 巻 5 号 p. 584-588
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     ヘルスケアシステムにかかわる政策は、次の4層にわけられる分析概念の一環に位置付けられる。(1)「個々の患者・利用者」と「保健・医療・介護従事者(チーム)」の関係、(2)保健・医療・介護サービスの利用と提供の体制、(3)保健政策・医療政策・介護政策、社会保障政策、診療報酬・介護報酬政策、(4)以上のすべてをめぐる政治。前半ではその各々を解説する。
     次に政策戦略の要素の一例として、理念(ビジョン)、使命(ミッション)、価値(ヴァリュー)、中核概念(コア・コンセプト)、中核技術(コア・テクノロジー)を提示する。後半では、この5つの要素を(1)日本の介護保険2000年、(2)日本の高齢者ケア2025年、(3)米国の疾病管理1990年代、(4)日本の特定健康診査・特定保健指導にあてはめ、最後に健康診査一般を考察する。
  • -Redox制御と病態(熱傷からの解析)-
    井上 肇
    2012 年 39 巻 5 号 p. 589-595
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     フリーラジカルには、superoxide、hydroxyl radical、hydroperoxy radical、一酸化窒素(nitric oxide; NO)、peroxynitriteなどが知られている。身体は、このようなフリーラジカルによる酸化から生体を防御あるいは修復するためにさまざまな還元機能を有する。これがRedox制御と呼ばれる。
     NOは、血管内皮細胞から産生されるガス状の血管平滑筋弛緩因子として発見された。当初NOは血管内皮細胞のみから産生され、循環機能調節にのみ関与すると考えられてきた。しかし、NOは神経伝達物質としても機能するだけでなく、炎症反応時に産生されたNOが、免疫や殺菌などの生体防御にも関わることが知られている。一方で産生されたNOは、炎症部位で同時に産生されるO2の存在で極めて反応性の強いONOOに非酵素的に変換されて、周囲組織の酸化的ニトロ化を誘導し組織傷害を引き起こす。
     熱傷に伴う炎症では、創傷部周囲から大量の炎症性メディエーターを放出する。その際に多種類の活性分子種も放出され、熱傷創部のみならず正常組織にまで影響して全身性炎症反応症候群(sistemic inflammatory response syndrome; SIRS)を引き起こす。
     著者らは、熱の侵害刺激に伴う急性(0.5~3時間程度)炎症相の段階で、NO産生を阻害すると強い抗炎症効果を認めることを報告した。また、この炎症反応はNOで誘発される訳ではなく、O2の存在で産生されるONOOが、周囲組織をニトロ化することに由来していた。したがって恒常性を維持するNOですら、酸素系活性分子種との接触によってONOOに変換されることを暗示している。すなわち、生体は呼吸をしている限り活性分子種同士の非酵素的反応によって、組織傷害の危機に瀕していることを意味する。これがRedox制御の破綻に伴う個体の老化と疾病の誘発にかかわっているのかもしれない。
  • 米井 嘉一, 八木 雅之
    2012 年 39 巻 5 号 p. 596-601
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     抗加齢(アンチエイジング)医学の観点から、加齢に伴う疾患や退行性変化に関わる糖化ストレスの概念を紹介する。抗加齢医療実践機関では、老化度を筋年齢・血管年齢・神経年齢・ホルモン年齢・骨年齢といった機能年齢として、老化を促進する危険因子を免疫ストレス・酸化ストレス・心身ストレス・糖化ストレス・生活習慣として評価している。糖化ストレスは酸化ストレスと並び重要な老化危険因子として位置づけられる。
     果糖やブドウ糖などの還元糖と蛋白を構成するリジンやアルギニンが非制御的、非酵素的に結合して中間体を生成、さらに反応が進むと糖化最終産物(advanced glycation end products; AGEs)を形成する。AGEsは組織に沈着するほか、AGEs受容体(Receptor for AGEs; RAGE)と呼ばれる受容体に結合し、炎症を惹起する。また過剰のブドウ糖はTCAサイクルの障害を起こし、生じたフマル酸によって蛋白を構成するシステインと反応し、蛋白変性を生じる。脂質やアルコール由来のアルデヒドも同様の蛋白翻訳後修飾を起こす。糖化ストレスとはこれらを総合的に捉えた概念である。
     たとえばアテローム動脈硬化は、酸化や糖化ストレスによってLDLコレステロールから生じた修飾物をマクロファ-ジが貪食した結果、泡沫細胞となって血管内腔に集積して形成される。皮膚ではコラーゲン線維が糖化により架橋形成を起こし、線維間が固定される結果、皮膚弾力性の低下や硬化が生じる。
     若くて健康な状態を保つためにはこれらの危険因子の管理が重要である。糖化ストレスを減らす方法として、(1)食後高血糖や急激なインスリン分泌を避ける食生活、(2)果糖ブドウ液糖など異性化糖を避ける、(3)加齢に伴って衰える筋肉量や内分泌機能を維持、(4)AGEs生成抑制物質など抗糖化物質の利用が挙げられる。本領域の研究が発展することで、抗加齢療法の新たな展開が期待できる。
  • -骨血管相関の視点-
    鏑木 淳一
    2012 年 39 巻 5 号 p. 602-605
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     高齢になっても、生活の質を良好に保つためには、動脈硬化症、骨関節疾患を予防し、治療することが重要である。近年、動脈硬化症の進行は骨粗鬆症にも関連することが明らかにされた。ホモシステインは、動脈硬化症に対する危険因子の一つとされ、また骨粗鬆症においては、生理的コラーゲン架橋の低下などにより骨質の劣化、さらに骨粗鬆症を増悪させることが報告されてきた。本研究では、血清ホモシステイン濃度高値は、現在のわが国におけるメタボリック症候群の診断基準において、メタボリック症候群該当群、予備群、非該当群に認められることが明らかにされた。かかる非該当群の男性では、高血圧症を伴っており、血清総ホモシステイン濃度が、動脈硬化症の進行を予測する上で、現在のわが国におけるメタボリック症候群の補完となりうることが示された。また閉経後女性では、骨密度が低下する場合、血清総ホモシステイン濃度が骨密度正常群に比べ高くなり、脂質異常症あるいは耐糖能異常を伴うことが示された。以上の成績から、血清総ホモシステイン濃度は、動脈硬化症および骨粗鬆症が進行する予測因子となりえ、いわゆる「骨血管相関」の病態を考えるために重要であることが示唆された。
  • 岡田 純, 草薙 千晶, 菅 信一
    2012 年 39 巻 5 号 p. 606-612
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     動脈硬化の画像診断には、種々の手法が増加しているが、健診で利用されるのはその一部である。主流である頸動脈超音波検査や、最近注目されつつあるMRA、CTなどを用いた動脈硬化の画像診断も述べる。
     頸動脈超音波検査:非侵襲性、簡便性では優れている。我々の健診での成績でも、IMTが1.1 mm以上をIMT肥厚とし、これを年齢・性別・BMI・体脂肪率・腹囲・収縮期血圧・拡張期血圧・HDL-C・LDL-C・LDL-C/HDL-C比・中性脂肪・空腹時血糖・HbA1cにて検討した。ロジスティック回帰分析を行うと年齢、性別のみがプラークと相関した。メタアナリシスでは、心血管イベントや脳血管障害とプラークとの関連性も報告されている。
     MRによるプラークイメージングは破裂の危険性のある不安定プラークの検出が試みられ、おもに頸動脈および大動脈で行われている。非造影MRIでも評価できることから、他の画像診断に比べ、MRが優れているとされている。特に、頸動脈の線維性被膜、プラークの脂質成分やプラーク不安定性指標のプラーク内出血、石灰化の確認が可能とされる。
     CTおよびFDG-PET:CTはカルシウムを含むプラークの検出に優れており、心血管イベントの予測に用いられる。CTでも、線維化プラークと脂肪を多く含むプラークとを鑑別可能とする報告もあるが、MRよりは検出感度は劣る。FDG-PETによる動脈硬化の画像診断も行われている。頸動脈においてもPETにて血栓の描出は可能であるが、MRほど明瞭ではない。
     最近の動脈硬化の画像診断について述べてきたが、これらが健診でも有用かは、その利便性やこれらの動脈硬化の診断法が心血管イベントなどの減少・予後に寄与するものかを明らかにする必要がある。
  • 堀江 正知
    2012 年 39 巻 5 号 p. 613-619
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     わが国の医療保険制度は、労働者の医療保険から始まり1961年に国民皆保険制度が成立した。近年、医療費の公的負担額が経済成長を上回るようになり、2008年から老人保健制度を高齢者医療制度に改め、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病の予防をめざす特定健康診査と特定保健指導を導入した。わが国の疾病予防対策は、結核予防のための健康診断を中心に発展し、成人病や生活習慣病の予防のための健康診査や人間ドックなどが発展してきた。また、1978年から国民健康づくり対策が始まり、2003年からは健康増進法に基づく「健康日本21」が推進された。
     一方、わが国の労働衛生対策は、職業性疾病の予防と労働者の適正配置を目的として、作業環境測定と健康診断を中心に発展してきた。1972年に労働安全衛生法が施行され、一般定期健康診断に血圧測定などが追加されてからは作業関連疾患の予防のための検査項目が増え、1996年からは事業者による就業上の措置と保健指導も規定された。また、1989年から健康増進活動(THP)が推進された。現在、特定健康診査と一般定期健康診断の検査項目は統一され、事業者には保険者に結果を提供する義務も規定されている。欧米では事業者が結果を把握して活用する健康診断の仕組みはなく、韓国では保険者が検査を実施して事業者に所見の有無を通知している。
     職場には雇用形態の多様化やメンタルヘルス対策の強化などの課題がある。事業者や自治体の協力を得て特定健康診査と特定保健指導を推進するには、国が小規模事業場における健康管理を経済的に支援する対策、保険者と市町村による資源や情報の一元化、特定健診などによる生活習慣病の予防と医療費の抑制に関する有効性の評価結果の公表、地域職域連携協議会の活用、職場における専門職の負担軽減などを推進する必要がある。特定健康診査などの推進が、産業保健専門職にとって職場や作業の改善といった本質的な労働衛生の活動に注力できる契機となることが期待される。
  • 菊池 春人
    2012 年 39 巻 5 号 p. 620-626
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     特定健診・保健指導における精度管理の基本的な考え方は、いつでも、どの検査機関でも同じ結果が得られるということである。このために測定値の標準化と精度管理が必要となってくる。測定値の標準化については、特定健診項目すべての標準物質が健診開始前に作成され、これに基づいてトレーサビリティをとることで実践されている。また、地域あるいは関連病院間での測定値の共有化も図られてきている。精度管理については多くの施設が日本医師会などの外部精度管理調査に参加して、その成績もかなりよくなってきている。しかしながら、精度管理調査の成績がよい背景にカンニングなどがあるともいわれており、今後精度管理調査実施方法の見直しが望まれる部分がある。ただし、一番重要なのは本来の外部精度管理の意義を確認することであり、そのための啓蒙を行っていく必要があると考えている。
     さらに健康診査で必要な正確な測定結果を得るためには、測定そのものの精度管理だけではなく、採取する前から測定した後までの管理が必要であり、そのため特定健診においては受診前、検体採取後分析前の手順についても指示されている。
     血糖測定については従来解糖阻止剤としてフッ化ナトリウム(NaF)を用いることが一般的であったが、NaF単独での解糖阻止効果には速効性がなく、特定健診の手順では血糖検体は採血後冷蔵保存することになっている。近年、NaF にクエン酸を加えて解糖を速やかに抑える採血管が普及しつつあり、また、そのほかにも速効性のある解糖阻止剤も検討されているので今後これらの血糖の採取容器(解糖阻止剤)がより広く使用されていくようになると思われる。
     特定健診項目の見直しとして、尿糖の必要性についての再検討があげられる。新しい項目としては、心腎連関のうえから、費用を考慮しないのであれば、尿マイクロアルブミン、血清シスタチンCが候補ではないかと考えている。
  • -職域における特定保健指導をめぐって-
    飯島 美世子
    2012 年 39 巻 5 号 p. 627-633
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     保健指導は対象者の健康課題に対応するものである。しかし、特定保健指導の対象者はメタボに限定され、指導項目も当初から運動と食事指導が中心と定められ、睡眠が軽視されている。また、メンタル不調者に対してもメタボの保健指導に終始しているケースが多く見受けられ、せっかくの保健指導の機会が活かされていない。すべて、後期高齢者支援金の加算を避けたいための弊害と推測される。
     また、プログラムの評価は、保健指導を受けた参加者の満足度や達成感を評価することである。そして、メタボの該当者や予備群の減少率に限定するのではなく、集団全員を対象として生活習慣病の疾病率や異常率の年次推移を評価することである。
     短期的には参加者がいきいきとなった、あるいは元気が出てきた、調子がよくなった、という主観的な健康感の改善が期待される。そして、生活習慣全般の改善がみられ、その結果が体重や肥満度、血液の検査値にあらわれると考える。さらにその状態が10年以上継続し、国民全員に施策がおよぶとき、生活習慣病による壮年期死亡や罹患者の減少がみられ、健康寿命の延伸につながると考える。
     今後の特定健診・特定保健指導の取り組みは、それぞれの事業所や健保組合の実態に即して行われている健康管理事業の中に上手に取り込んで展開することであり、創意工夫と効果・効率的な取り組みに期待したい。
  • 坂本 憲枝
    2012 年 39 巻 5 号 p. 634-637
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     このところの人々の健康志向には目を見張るものがある。人々にとって何が一番大切かと問われると、ほとんどの人が「健康であること」を挙げる。だれもが健康でありたい、元気に暮らしたいと望んでいる。健康であるということは、「身体に悪いところがなく、健やかなこと」と広辞苑にあるが、身体が自由に苦もなく動いていれば健康かというとそうではなく、生活習慣病のように外側からみえない病気を抱えている方もたくさんいる。
     日常生活では「健康のため」というキーワードで溢れるほどの情報がメディアを通して私たちに届いている。無意識に摺り込まれているのか、サプリメントや健康食品を利用しないと健康ではいられないような錯覚を起こしている人も多いのではないか。
     現代人は、豊かな生活と忙しい生活の中で、簡単に入手できる健康食品などを組み合わせて健康を買おうとしているようにも思える。こうした状況の中、今こそ「健康であること」を考え直す時期に来ているのでないか。
     自身の健康状態を把握しようとする人は、人間ドックや健診を受けるが、受診者にとって健診施設にどんな思いや印象を受けているのだろうか。
     ネット上で入手できる各種の健康や健診に対する意識調査から、多くの人々の意識を取り上げてみた。また、受診者の立場で健診施設に望むことを述べてみたい。
  • -現状と今後の課題-
    杦本 勉, 光宗 皇彦, 妹尾 悦雄, 萱嶋 英三, 浜田 宏, 田中 美伸, 毛利 元三, 稲岡 美穂, 青井 智彦, 板倉 昌史, 小川 ...
    2012 年 39 巻 5 号 p. 638-645
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     近年の医療技術の進歩により、高齢化が進んでいるが、平成20年度より、特定健診、特定保健指導が始まり、さらに国民の健康に対する関心は高まっている。
     その健康の一端を担っている我々健診施設は、顧客のために、よりよい受診環境の整備が使命であり、それによる顧客満足度の向上が課題である。
     我々は、貴重な時間を顧客からいただいて総合健診を実施していることを認識する必要がある。その時間的負担である健診における施設滞在時間は、当施設では約70%が検査の待ち時間であった。待ち時間の短縮策を検討すれば顧客の時間的負担の軽減につながり、顧客満足度に寄与できるのではないかと考えて分析を行った。
     その結果、各検査部署では、検査所要時間の短縮に努め、さらに優先的に待ち人数の少ない検査部署へ受診者を誘導することで、全体の待ち時間が短縮した。これらの取り組みにより顧客の時間的負担の軽減は認められたが、新たな問題点も判明した。早い人はより早く、遅い人はより遅くなるという時間的負担の二極化現象である。また、検査所要時間の短縮を意識するあまり、接遇面の対応の低下へつながる可能性もある。さらに、受診者の動線も一定でないため、複雑かつ動的負担がかかることも事実である。
     顧客満足度の向上において、時間的負担の軽減は重要な要素の一つであるが、当日の接遇及び動線も考慮してその環境を整備していくことも併せて必要である。さらに、待ち時間の短縮のみならず、待ち時間の有効活用の検討をする必要があり、退屈で嫌な時間からリラックスできる時間へと変えていく取り組みも今後の課題と考える。
     今後、我々総合健診施設は、常に顧客が求めているものは何かを念頭に置き、ニーズを正確に把握し、新しい総合健診受診スタイルを創造していき、顧客から選んでいただける真の優良総合健診施設となる必要がある。
  • -労働安全衛生法改正の動き-
    五十嵐 千代
    2012 年 39 巻 5 号 p. 646-651
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     わが国における自殺者は14年間3万人を超える異常な状況が続いている。自殺者の約3分の2が労働年齢層で、原因の約5割が健康問題と答えている。しかも健康問題の約9割がうつ病といわれており、このことからも、自殺対策の大きな焦点は、働く人のうつ病を主としたメンタルヘルス対策であることが明らかである。
     そのような背景から、厚生労働省では、健康診断にメンタルヘルス支援対策としてストレスチェックの導入を決め、労働安全衛生法改正案を提出し、平成23年12月に閣議通過した。
     この法改正では、働く人のストレスチェックを健康診断時などに実施をするものである。チェック項目は不安・抑うつ・疲労からなる9項目で、その結果、ストレス度を本人のみに返し、ストレスの気づきを促すというものである。ストレス度が高い者は、事業者に申し出をすると、医師による面接を受けることができ、医師が職場に問題があると判断すれば、事業者に対し改善するように指導するものである。
     ストレスチェックは、医師または保健師がおこない、そのストレス度に応じて、受診勧奨したり、保健指導するものである。また、ストレスの原因が、職場にあると把握した場合、本人の了解を得たうえで、事業者に通知する仕組みである。
     この法改正案は一見、単なる2次予防のように見えるが、ハイリスク者を受診勧奨するのと同時に、ストレスチェックから職場の改善に結び付けていくところにポイントがある。
     しかし、本人の話から、職場の問題をアセスメントするには、ストレスチェックにあたった医師または保健師の力量に委ねられている。外部健診機関が健康診断を受け負う場合も、職場環境のアセスメントと労働者との継続的なかかわりが求められる。
     また、企業内に医師または保健師がいる場合は、外部健診機関がおこなったストレスチェック結果をうまく活用し、アウトリーチしながら労働者のメンタルヘルスケアをすることが重要と考える。
  • 及川 孝光
    2012 年 39 巻 5 号 p. 652-660
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
     近年、日本は世界有数の長寿国になり、その要因としては国民全体にあまねく普及した医療制度が挙げられ、海外からも高く評価されている1)。しかし、現在のわが国には多大の健康課題がある。すなわち、社会の急速な高齢化に伴う生活習慣病の増加、介護問題、さらに経済の悪化による社会保障の不安定化も加わり、国民の健康不安も大きく、メンタル関連疾患が増加している。
     就労状況も高齢労働者と女性労働者が増加している。2010年度には全雇用者総数の42.6%が女性であったが2)、女性労働者は非正規雇用者が多く、その雇用形態・条件には問題が多い。そして、すべての就労者には労働安全衛生法により、年1回の健康診断実施が事業者に義務付けられているが、その健診項目として女性固有疾患は対象になっていない。実際には、疾病構造は男女間で大きく異なり、就労女性の健康問題として婦人科・乳腺疾患は大きいが、わが国では受診率も低く、その早期発見・予防の大きな障害となっている。
     一般に女性健診は婦人科・乳腺検診を指すが、広義には泌尿器科疾患、更年期障害、骨粗鬆症、メンタルヘルス対策などが含まれる。女性にとってこれらの疾病不安は強く、女性健診を制度として実施すべきである。最近の動きとして、女性健診を制度化した企業・自治体も増加しており、女性就業者には極めて好評である。この女性健診の特徴としては有所見者が多く、当施設での受診結果をみても(2010~2011年度の統計)で、40歳代後半で婦人科検診は50.9%、乳腺検診は24.5%の有所見者比率が認められた3)。有所見者の大部分は経過観察となるが、受診結果についての十分な指導・相談体制が重要である。
     女性の社会進出も進んでおり、ライフステージを通した有効かつ効率的な健診システムを構築したい。そのためには、一般健診とともに女性健診も対応可能な医療機関の整備も必須である。
     これからの健康診断は、単に受診時の結果評価のみではなく、受診者の生活、業務、メンタル面を含めた総合的な健康支援としての位置づけが社会から求められている。
  • -私の健康法-
    日野原 重明
    2012 年 39 巻 5 号 p. 661-667
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/10/01
    ジャーナル フリー
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