総合健診
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41 巻, 6 号
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原著
  • 宮島 江里子, 加藤 彩, 五十嵐 敬子, 吉田 宗紀, 大井田 正人, 西元寺 克禮, 角田 正史
    2014 年 41 巻 6 号 p. 637-643
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景・目的】定期的な健診では医師が判定を行う際、通常前年度の二次検査結果を聴取し、判定時の参考にする。結果聴取の際、受診者が二次検査を未受診であったり、実際の結果と異なった回答をすると判定に影響が出る可能性がある。本研究では人間ドック後の二次検査受診状況とその事後措置を調査し、本人回答の事後措置と紹介返状信から判明した実際の事後措置に相違があるかを調べることを目的とした。
    【対象・方法】対象はH23年10月~H24年3月とH25年4月~6月に受けた人間ドックで要精密検査または要治療と判定され、二次検査についてのアンケートに回答した505人である。二次検査受診の有無で性別、結果説明、紹介状の有無に差があるかをχ2検定にて検討し、年齢についてはマンホイットニーU検定で比較した。さらに紹介状を作成し、紹介先から二次検査結果の返信があった36人について、本人回答の事後措置と実際の事後措置(異常なし<経過観察<治療)との一致・不一致を集計した。
    【結果】二次検査を受診したのは406人(80.4%)であった。未受診について、年齢、結果説明、性別との関連は認めなかったが、紹介状が出た群の方が有意に未受診者が少なかった。紹介状返信のあった36人のうち、本人申告の事後措置と実際の事後措置が一致したのは30人(83.3%)であり、実際より軽く認識していたのは5人(13.9%)であった。
    【考察】紹介状の作成によって二次検査受診率が上昇する可能性がある。二次検査の結果を異なって回答している人の存在が示され、健診での結果聴取の際に詳細に聴取し認識を再確認する対応が必要である。
  • ─男性の内臓脂肪、女性の内臓脂肪─
    佐藤 友美, 中山 佳津代, 柳樂 和美, 高尾 俊弘
    2014 年 41 巻 6 号 p. 644-652
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】内臓脂肪型肥満の評価判定として最も有用な身体計測の指標を調査し、性差を考慮して関連性を検討した。
    【対象および方法】当院の職員定期健康診断で同意を得た128名(男性44名、女性84名)を対象とした。本研究では職員検診時に既往歴、現病歴、内服歴、身体計測指標(腹囲、BMI、腹囲身長比、ウエストヒップ比)、血圧、血液検査(総コレステロール:TC、中性脂肪:TG、HDLコレステロール:HDL、LDLコレステロール:LDL、non HDL値、TG/HDL比、LDL/HDL比:LH比、空腹時血糖:FPG、空腹時インスリン値、HOMA-β値、HOMA-IR値)、内臓脂肪面積(100cm2≦内臓脂肪型肥満)との相関性を調査した。その結果より、因子分析およびROC曲線にて内臓脂肪型肥満の最も有用な身体計測の指標や内臓脂肪と性差との関連性について検討した。
    【結果】性差と内臓脂肪との相関関係では男女共に加齢、腹囲、BMI、BMI25以上、ウエストヒップ比、腹囲身長比、収縮期血圧、TG、TG/HDL比、空腹時インスリン値、HOMA-β値、HOMA-IR値は正の相関を有意に認めた。さらに男性のみにTG150以上は正の相関、HDLは負の相関を有意に認め、女性では拡張期血圧、TC、LDL、non-HDL値、LH比、FPG、収縮期血圧130以上、LDL140以上、FPG110以上に有意な正の相関がみられた。これらの導き出された因子より因子分析を行った結果、男女共に因子1はメタボリックシンドロームの指標、因子2ではLDLに関連した脂質異常に関係があると解釈した。この複数の変数間の関係より内臓脂肪型肥満の有用な身体計測指標についてROC曲線にて検討すると、腹囲と比較して男性では腹囲身長比(カットオフ値0.48)、女性ではBMI(カットオフ値25.10)に有意な関連性が認められた。
    【考察】内臓脂肪面積は各身体計測値、血液データ等と相関性が認められ、内臓脂肪型肥満は男性では腹囲身長比、女性ではBMIが有用な身体計測指標になり得ると言えた。また女性では内臓脂肪型肥満はLDL関連因子と有意な相関性が認められ、この関係は男性と比較して女性に強くみられた。
  • 松田 翼, 宮城 智恵美, 喜納 聡子, 屋良 真梨子, デューラン ゆかり, 久田 友一郎
    2014 年 41 巻 6 号 p. 653-657
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】浦添総合病院健診センターでは、受診者サービス向上と業務改善の目的で、年2回の受診者満足度調査を実施している。より効率的に改善課題を抽出するため、2013年に相関係数を用いた分析手法を導入した。
    【対象】2013年7月30日から8月5日に医師の診察と保健指導を含む健康診断を受診した者。
    【方法】5段階評価で回答を依頼した。有効回答のうち、「期待どおり」以上と回答した比率(%)を満足度とした。各項目と総合評価のSpearman順位相関係数(以下「相関係数」とする)を重要度とした。相関係数は選択肢に与えられた得点を用いて算出し、有意な相関関係をみとめた場合に、総合評価を高める重要な要素であると判断した。
    【結果】満足度が低い要素(数値は満足度の偏差値)は「医師の接遇」(38.9)、「医師の案内や説明のわかりやすさ」(35.7)、「待ち時間」(28.9)、「料金」(41.2)であった。それらの重要度(数値は相関係数)は「医師の接遇」(0.624)、「医師の案内や説明のわかりやすさ」(0.664)、「待ち時間」(0.685)、「料金」(0.539)で、いずれも総合評価との有意な相関関係(p<0.01)をみとめた。
    【考察】満足度が低い4項目は、いずれも総合評価を高める重要な要素であると判断した。満足度が低い順に「待ち時間」を第1の改善課題、「医師の接遇、案内や説明のわかりやすさ」を第2の改善課題に採用した。「料金」は経営面を考慮した上で検討する。
技術報告
大会講演
日本総合健診医学会 第42回大会
  • 今枝 博之
    2014 年 41 巻 6 号 p. 665-669
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2006年に欧米より胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease: GERD)に関してモントリオールコンセンサスが発表され、逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症などの食道症候群と、食道以外の症状をきたす食道外症候群に分類された。GERDはわが国でも近年増加傾向にあり、日本消化器病学会からGERD診療ガイドラインが2009年に発表された。GERDの原因として、蛋白質摂取量の増加の一方で魚類や塩分摂取量の低下、ヘリコバクター・ピロリ感染率低下、低用量アスピリンやNSAID服用の増加による胃酸分泌の亢進がある。さらに食道裂孔ヘルニアの増加や脂肪摂取量の増加、亀背、カルシウム拮抗薬や亜硝酸製剤服用の増加などによる下部食道括約筋の機能低下や肥満などによる胃酸の逆流増加が関与している。GERDは食事摂取や睡眠、仕事、QOLにも支障をきたすことがある。機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群といった機能性消化管障害の合併もしばしばみられ、消化管全体を診療することが望まれる。また、食道裂孔ヘルニアの合併とともにバレット食道やまれにバレット腺癌の合併も報告されている。
    GERDは患者の症状から診断がある程度可能で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)による診断的治療が有用である。しかし、器質的疾患の鑑別のため上部消化管内視鏡検査が必要である。PPI不応例では多チャンネル食道インピーダンス-pHモニタリングやhigh resolution manometryにより詳細に検討することが可能となった。治療はPPIが基本であるが、初期治療とともに維持療法が重要となる。また、PPIが効果不十分な場合には他のPPIに変更したり、食前の投与や増量、分割投与への変更が報告されている。また、六君子湯や防御因子増強薬、抗不安薬などの向精神薬の投与が有用な場合もある。予防として体重の減量や臥床時の頭位拳上が有用である。内科的治療抵抗例や長期の内服を希望されない場合には腹腔鏡下噴門形成術を考慮する。今後はGERDの治療のみならず、疾患の予防がきわめて重要であり、その確立が望まれる。
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