総合健診
Online ISSN : 1884-4103
Print ISSN : 1347-0086
ISSN-L : 1347-0086
43 巻 , 5 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
原著
  • 杉岡 陽介, 久保 明, 三井 理恵, 福原 延樹, 加藤 倫卓, 仁瓶 史美, 竹田 義彦
    2016 年 43 巻 5 号 p. 537-542
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】加齢とともに増加する終末糖化産物(AGEs)の蓄積が、骨格筋のタンパク質の機能を変化させることが報告されている。本研究の目的は、皮膚組織におけるAGEsの蓄積と骨格筋量との関係を調査することである。
    【方法】対象は、健康診断を受診した中年および高齢の男女70名(58±10歳、男性55%)とした。対象の背景として年齢、性別、body mass index(BMI)、合併症および血液生化学検査の情報をカルテから調査した。皮膚組織におけるAGEsの蓄積の指標として、AGE Readerを用いてskin autofluorescence(SAF)を、骨格筋量の指標として、2重エネルギーX線吸収測定法を用いて骨格筋指数(SMI)を、筋力の指標として、握力を測定した。SMIと各調査項目との関係を、Pearsonの積率相関係数とSpearmanの順位相関係数を用いて解析した。また、SMIに独立して関係する因子を抽出するために、SMIを従属変数、年齢、性別、血清クレアチニン(Cr)、グリコヘモグロビンおよびSAF等を独立変数としてステップワイズ重回帰分析を行った。
    【結果】SMIと有意な相関があった項目は年齢、性別、BMI、中性脂肪、Cr、握力およびSAFであった(それぞれ、r=0.312、P=0.011;r=-0.692、P<0.001;r=0.607、P<0.001;r=0.302、P=0.028;r=0.464、P<0.001;r=0.741、P<0.001;r=-0.413、P<0.001)。重回帰分析の結果、SAFと性別が独立してSMIと関係する因子として抽出された(それぞれ、P<0.001)。
    【考察】中年および高齢の男女において、SAFは性別と共に独立してSMIに関係する因子であった。
  • 杦本 勉, 光宗 皇彦, 妹尾 悦雄, 萱嶋 英三, 清水 信義, 田中 美伸
    2016 年 43 巻 5 号 p. 543-546
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     顧客満足度の向上の取り組みにおいて、顧客の時間的負担の軽減は重要な要素であると考える。
     このため、我々は、時間的負担の軽減には、効率的に各検査を稼動させ、高い稼働率を維持すると考え取り組みを行ってきた。
     本研究においては、胃部X線検査の稼働率の変動と時間的負担の関連について調査した。
     結果として、胃部X線検査を早い時間帯から高い稼働率を維持することが時間的負担を軽減させる要因の一つであることが判明した。
     反面、稼働率を上げることを優先したことで、胃部X線検査に顧客が集中してしまい、他検査への導線が複雑化し、逆に顧客満足度の低下につながる可能性も否定できなかった。
     今後、可能な限り時間的負担を可視化することで継続的に時間的負担の分析を行い、あらゆる角度から改善していくことが、我々に求められる。
     さらに、発生する待ち時間を、顧客にとってどのような有効活用ができるかを検討することが必要であると考える。
  • 水野 杏一, 山下 毅, 小原 啓子, 船津 和夫, 近藤 修二, 横山 雅子, 中村 治雄, 影山 洋子, 本間 優, 前澤 純子
    2016 年 43 巻 5 号 p. 547-552
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     最近特定の職業と肥満の関連が指摘され、職業習慣病という言葉も聞かれている。エンジニアはパーソナルコンピュターなどの使用時間が長く、肉体的活動が少なく、不規則な生活、職場のストレスなどにより肥満が多いと報告されている。これらの研究は断面調査なので、エンジニアという職業が肥満を引き起こすのか、エンジニアを目指す若者がすでに肥満なのか明らかでない。そこでエンジニア会社の入社時健診を解析することにより既に肥満が入社前より存在しているか検討した。対象はエンジニア関連会社に平成27年度に入社する20歳代の男性(エンジニア予備軍)179人で、平成26年度国民健康・栄養調査(国民調査)から同年代の男性257名、および非エンジニア企業に入社する同年代男性新入社員49人と比較した、BMI 25以上の肥満の割合はエンジニア予備軍で30.2%、国民調査で20.9%、非エンジニア18.4%で、肥満の割合はエンジニア予備軍で対照群より約10%高かった。エンジニア予備軍で血圧上昇、耐糖能異常、脂質異常症の動脈硬化危険因子を持つ割合は肥満者が非肥満者に比べ有意に高かった(P<0.001)。肝機能異常を持つ割合も同様であった(P<0.001)。腹囲85cm以上の内臓肥満を有するのはBMIによる肥満者の94.4%におよんだ。しかし、メタボリック症候群を有するのはエンジニア予備軍で3.4%、エンジニア予備軍の肥満者でも11.1%で国民調査の同年代2.2%と比べ有意な差はなかった。以上、エンジニア予備軍は入社前から肥満が存在していた。若年者の肥満は後に認知症になりやすいこと、メタボリック症候群は多くなかったが、若年者の肥満者は将来メタボリック症候群になりやすいことなどより、肥満に対して早期の介入が必要である。その際、肥満の管理を個人のみに任せるのではなく、社員の健康を重要な資産とみなす健康経営が浸透してきているので、企業の積極的な介入が入社時より望まれる。
  • 木村 典夫
    2016 年 43 巻 5 号 p. 553-559
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     従来より行われているバリウムを使った胃がん検診の受診率はなかなか増加しない。本年度より内視鏡による胃がん検診が推奨されたが地域によっては内視鏡医のマンパワーの問題もある。そこで画像検診を行うかを層別化するための胃がんリスク検診であるABC検診が普及してきている。しかし、本来胃がんリスクのないA群から胃がんが発症することがあり問題視されている。その原因は、Helicobacter pylori(以下H. Pylori)検査が偽陰性かH. Pylori既感染が含まれるためである。血清H. Pylori抗体検査はH. Pylori感染を診断するために開発されたため、H. Pylori既感染を診断するための判定基準はない。真のA群を診断するためには、H. Pyloriの未感染と既感染・現感染を分ける必要がある。A群の中の偽陰性・既感染を偽A群と呼ばれ、胃がんリスクを有するため除外する必要がある。そこで今回2014年当院人間ドック受診者で胃内視鏡検査に血清H. Pylori抗体とペプシノゲン検査を施行した1,081例について検討した。そのうち311例が除菌後で、残る770例をABCD群に分けた。A群は632例82.1%で偽A群を除外するために井上らの報告によりH. Pylori抗体のカットオフ値を3U/mL以上、ペプシノゲンⅠ 30ng/mL以下、ペプシノゲンⅡ 12ng/mL以上、Ⅰ/Ⅱ比4.5以下を異常とした。それ以外を正常とし、いずれも正常とした場合を真のA群とした。その結果A群は、480例62.3%に減少しその中の内視鏡的既感染は7例で偽A群を1.1%にまで少なくさせることができた。7例のうち2例は十二指腸潰瘍瘢痕を認め萎縮がほとんどなく胃がんリスクがないと思われ、残る5例にC2以上の萎縮を認めた。他2例もカットオフ境界であり、最終的には0.8%にまで偽A群を少なくさせることが可能であった。
  • 長谷川 暢子, 森口 次郎, 大橋 史子
    2016 年 43 巻 5 号 p. 560-566
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景】日本における子宮頸がん検診受診率は約3割と非常に低い。そこで、独自の健診項目が設定可能である企業や健康保険組合(健保)は、エビデンスの確立された細胞診医師採取法ではなく、受診率向上を目的として簡便な細胞診自己採取法を広く採用している現状がある。
    【目的】本研究は、対策型検診の位置づけにある職域検診や家族検診において、細胞診自己採取法の有用性の有無を検討した。
    【対象】2013年4月1日から2015年3月31日までの2年間に、京都工場保健会(当会)子宮頸がん検診を受診した医師採取61,489例と自己採取5,927例を対象とした。
    【方法】医師採取法と自己採取法をそれぞれ職域検診と家族検診の2群に分類し、各年代における細胞診陽性率についてFisher’s exact testを用いて比較検討した。
    【結果】細胞診陽性率について、職域検診群、家族検診群ともに医師採取法において細胞診陽性率が高く、有意差(p<0.01)を認めた。また、自己採取法においては1例も腺細胞系病変が検出されなかった。
    【考察】職域検診や家族検診において、明らかに自己採取法の精度が劣り、医師採取法の代替法とはなり得ないことが本研究で証明された。特に、自己採取法は子宮頸がんの好発年齢である20~40歳代において偽陰性が多い傾向にあり、これは対策型検診の目的である死亡率減少効果が不十分であることに加え、妊孕性が奪われるなどQOLの低下を招く危険性がある。また、自己採取法は近年増加傾向にある子宮頸部腺癌の検出には不向きである可能性も示唆された。原則医師採取による実施が望ましいが、近年、自己採取HPV検査は医師採取法と同様に有効であるという報告もあり、医師採取法の代替法として期待される。
    【結語】企業・健保は子宮頸がん検診において細胞診自己採取法を採用すべきではない。
  • 池窪 勝治, 橋本 さおり, 伊加 加奈子, 倉橋 由里子, 船塚 理恵, 神野 勉, 石蔵 裕子, 島屋 真希, 石原 亨介
    2016 年 43 巻 5 号 p. 567-575
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     2012年1月から2015年3月までの3年3カ月間に、健康ライフプラザを受診し、胸部X線検査を受けたのべ52,516名(男性;28,052名、女性;24,464名)を対象として、胸部正面像の読影により、気管偏位につき後ろ向き検討を行った。甲状腺疾患に起因する気管偏位が49例(0.1%)に認められた。49例中13例の気管偏位例は、受診時に甲状腺超音波検査(US)により長径が10mm以上の結節・のう胞と診断された220例のグループから検出された。
     気管偏位の程度を偏位I-IVに分類し判定した。気管偏位の原因の追究は診療録における現症、既往歴、家族歴、甲状腺機能検査および診療情報提供書などを詳細に調査し、判定した。
     49例における気管偏位の割合は偏位I;14例(28.6%)、偏位II;11例(22.4%)、偏位III;12例(24.5%)および偏位IV;12例(24.5%)であった。気管偏位の原因疾患の割合は、良性結節が26例(53%)、良性結節・橋本病4例(8%)、橋本病7例(15%)、バセドウ病と甲状腺腫は各3例(6%)であった。乳頭癌、濾胞性腫瘍、従隔内甲状腺腫、プランマー病および多発性甲状腺のう胞はいずれも各1例(2%)であった。
     以上の研究結果から、胸部X線検査による気管偏位の検出においては、甲状腺疾患を念頭におき精査を行うことが重要であると思われる。
  • 神戸 義人, 横田 春樹, 山本 侑子, 沼田 美和, 大沢 愛美, 成澤 勉, 横須賀 浩二, 内藤 祥, 裴 英洙
    2016 年 43 巻 5 号 p. 576-583
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     インターネットの普及、およびそのサービスの発展が著しく、インターネット依存(以下、ネット依存)の懸念が広がっている。また、メンタルヘルスや生活習慣との関連性も危惧されている。今回、当財団での健診受診者に対してネット依存に関する調査を実施し、ネット依存度をスコア化することで社会人におけるネット依存の現状を調査した。対象は当財団における2015年度の健診受診者のうち、235名を対象にネット依存の現状を調査した。調査は、Kimberly Young博士の開発したヤングテストを使用した。ネット依存度はヤングテストでスコア化(100点満点)し、40点以上でネット依存傾向ありと判断し、点数が高い方がネット依存度は高度となる。235名のうち、男性129名、女性106名。平均年齢は40.0歳、ネット依存度の平均スコアは34.2点。分布は、20代が44名でスコアが41.6点、30代が67名でスコアが34.9点、40代が87名でスコアが31.6点、50代以上が37名でスコアが30.1点であった。男女別では、男性のスコアが34.7点、女性が33.7点であった。ネットは若年者により多く普及していると言われており、今回の結果からも年代が低いほどスコアが高値となり、特に20代では約60%の回答者にネット依存傾向があった。ネット社会がますます加速する中で、ネットによる弊害も多く発生している。ネット依存による生活の乱れや体調不良等の増加も予測されるため、健診を通じてネット依存による危険性の啓発を検討したい。
実践報告
  • 奈須 喜美子, 唐澤 博之, 岩岡 秀子, 武田 正, 山村 光久, 杉山 敦, 百瀬 正, 青木 政子
    2016 年 43 巻 5 号 p. 584-594
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     上部消化管内視鏡検査を受けた人間ドック受診者を対象に、新しいHelicobacter pylori(Hp)抗体試薬であるスフィアライトH.ピロリ抗体・Jを用いて行なったABC分類の結果を参考に、松本市における胃がんリスク検診(ABC検診)のシステムを構築した。Hp抗体の測定には既存試薬より感度が良いとされる同抗体試薬を用いた。B群における未分化癌ハイリスクグループに対する検討では、B-1群に比べB-2群の萎縮性胃炎の割合が高いことを確認し、B群をB-1群、B-2群に細分類することとした。すなわち松本市におけるABC分類はA群、B-1群、B-2群、C群(C・D群)の4群である。A群を低リスク群、B-1群を中リスク群、B-2群とC群を高リスク群とし、B-1群以上を内視鏡による要精検群とした。B-1群は2~3年毎の内視鏡検査を、B-2群とC群は毎年の内視鏡検査を推奨した。A群の偽A群に対する対応では偽A群の混入率をできるだけ低く抑えるためペプシノゲン(PG)値(PGⅠ≦35ng/mLおよびPGⅠ/Ⅱ≦4.0、PGⅡ≧15ng/mL)による拾い上げを行なうこととした。リスク検診においては受診後の経年的な管理が重要になる。松本市では受診者が、自身の胃がんリスクの理解を深め内視鏡検査の動機づけになることを期待して「胃の健康度」手帳を導入、受診者全員に配布することとした。手帳には検診の結果、内視鏡検査の記録(毎年1回検査を行っても最低10年間の記録が可能)、除菌の成否が記載でき、内視鏡的管理が経年的に行なえるような体制作りを目指した。この検診システムを用いて平成26年度より胃がんリスク検診(ABC検診)を開始したが、今後はこの検診の有効性と問題点の検証が必要で、行政との協力のもと更に発展させていくことが大切である。
大会講演
日本総合健診医学会 第44回大会
  • 松田 一夫
    2016 年 43 巻 5 号 p. 595-600
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
     日本の年齢調整大腸がん死亡率は10数年前から減少しているが、米国や英国ではもっと以前から減少に転じており現在では日本よりも低い。また2015年の大腸がん死亡予測数を日米で比較するとほぼ同数である。日本の人口が米国の4割に満たないことを考慮すれば、これは極めて異常な事態である。米国で大腸がん死亡が減少した理由のひとつとして約60%の人が10年に1回の大腸内視鏡検査を受けていることが挙げられる。一方で日本やEU諸国では便潜血検査による大腸がん検診が行われている。
     便潜血検査(化学法)による大腸がん検診の有効性はRCTで証明されている。ただし便潜血陰性にもかかわらず自覚症状等によって発見される中間期がんが存在する。1995年から2002年に福井県内で実施された大腸がん検診受診者(延べ272,813名、OC-Sensorによる要精検率5.3%、精検受診率69.8%)を福井県がん登録と記録照合して検診後2年以内に判明した浸潤大腸がんを把握した結果、大腸がんの総数は409例で、そのうち中間期がんが76例(19%)を占めた。中間期がんは右側結腸に51%(39/76)が存在し中間期がん以外の31%(103/333)に比して有意に多かった(P<0.001)。
     便潜血検査による大腸がん検診の効果は確実であるが、問題は精検受診率が低く、受診率も低いことである。地域保健・健康増進事業報告によれば2013年に地域で実施された大腸がん検診の精検受診率は66.0%であり、国民生活基礎調査によれば2013年の40~69歳における受診率は37.9%に過ぎない。日本の大腸がん死亡を減らすには、当面は便潜血検査による大腸がん検診の受診率向上と精検受診率を改善する苦痛の少ない精検法が求められ、将来的には右側結腸がんにも感度が高いスクリーニング法に期待したい。
feedback
Top