【背景と目的】胃X線検査は胃がんの死亡率減少効果を示し、処理能力のある検査として確立されているが、近年では低迷する受診率、受診者の固定化や高齢化などの問題点も抱えている。胃がんの発生には
H. pylori 感染胃炎が強く関連するため、これを考慮したうえで対象者を胃がん低リスク群および高リスク群に分類する効率の良い検診手法が注目されている。岡山県健康づくり財団では、平成23年度から対策型胃がんX線検診において背景胃粘膜の胃炎分類を取り入れ、胃がんリスク群の拾い上げを行っている。
【対象と方法】対象は平成23~25年度に岡山県下でX線にて実施した対策型胃がん検診の受診者延べ41,952名(男性17,011名、平均年齢:68.1歳)である。新・胃X線撮影法に準じて間接撮影を施行し、消化器専門医3名よる病変チェックと背景胃粘膜診断を行った。背景胃粘膜診断については、胃X線画像から正常(N)、萎縮性胃炎(AG)、皺襞肥大型胃炎(HG)の3群に分類した。ニッシエやレリーフ集中などの異常所見を認めなくとも大小粗大の胃小区所見や皺襞肥大は要精検とした。
【結果】全体の要精検率は9.3%(3,913/41,952)、がん発見率は0.17%(73/41,952)、早期がん比率(深達度不明2例除く)は69%(49/71)であった。背景胃粘膜診断の内訳はN群63.9%(26,800/41,952)、AG群34.4%(14,423/41,952)およびHG群1.7%(729/41,952)であった。各群からのがん発見率はN群0%、AG群0.4%(57/14,423)、HG群2.19%(16/729)であり、AG群およびHG群はN群に比べて有意に高い発見率であった。また、陽性反応的中度はAG群1.95%(57/2,927)、HG群2.7%(16/591)であり共に高値を示した。早期がん49例中26例(53%)はAGおよびHG所見のみからの胃がん発見であった。
【結論】対策型胃がんX線検診において
H. pylori 感染胃炎を考慮し、その対象者をリスク集約することで胃がん発見に大きく寄与すると考えられた。
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