総合健診
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44 巻 , 6 号
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特集
原著
  • 古屋 麻起子, 石津 弘視, 和田 正明, 細見 由佳, 柴﨑 亜希子, 亀川 佳枝乃
    2017 年 44 巻 6 号 p. 781-790
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     ヘリコバクター・ピロリ(HP)は、近年、胃がんの発症にも大きく関係していることが分かり関心度も高まってきた。しかし、HP検査の多くは一般健診項目に入っていることは少ない。そこで、健康診断受診者に対してオプションとしてHP検査を受診勧奨して、検査後の行動を分析し、HPに対する認識と理解度を検討した。2014年7月~2015年6月に健診項目として血中HP抗体(HP抗体)検査をした395例をA群、2015年7月~2016年6月にHP抗体検査をした704例をB群とし、健診項目で同検査をした323例をB1群、同年の健康診断案内送付時にHP抗体検査のオプション申込用紙を同封し、同検査を追加した381例をB2群とした。A群に対しては診察時に除菌治療の説明をしなかったが、B群に対しては、診察時に口頭による陽性時の除菌治療の必要性と、専門医への紹介状を健康診断結果と併せて送付することを説明した。HP抗体検査実施率は、両群とも40歳代が約4割と最も多く、40・50歳代で全体の7割近くを占めていた。HP抗体検査陽性における二次検診実施率は、A群:45.1%、B1群:42.1%、B2群:42.3%であった。また、男性ではA群:42.6%、B1群:34.1%、B2群:38.8%、女性ではA群:52.9%、B1群:69.2%、B2群:50%であった。
     HP抗体検査の関心度は高く、実施者はオプション勧奨することでB群がA群の約2倍に増えた。しかし二次検診実施率は低調であった。よって、HP感染症への意識は高まっていても、二次検診の必要性を感じず中途半端な状態で健診を終えていることが確認できた。当健診センターでは、2016年7月より二次検診の受診を促すために、二次検診に該当する健診診断結果にはリーフレットを同封することにした。また、人間ドックでは電話にて受診を勧奨し、フォローアップを行っている。これらを今後も継続し、二次検診受診率の向上を目指したい。
  • 杉原 栄一郎, 田澤 美香代, 野村 美加, 福田 洋
    2017 年 44 巻 6 号 p. 791-795
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】心房細動(AF; Atrial fibrillation)が原因でおこる脳梗塞(心原性脳梗塞)は、他の原因でおこる場合より重篤なことが多い。このため、企業に勤める従業員に対して、AFの認知度の調査を施行し、AFの早期発見とそれに起因する脳梗塞発症の予防の検討を行った。
    【対象と方法】ライオン株式会社平井研究所に勤務する50歳以上の従業員に対し、AFの疾患として認知度、AFが脳梗塞の危険因子であること、AFが原因の脳梗塞予防薬の存在、自己検脈の有無などをアンケートにて調査した。
    【結果】回答が得られた80名の解析を行ったところ、AFの認知率は72.5%であったが、無症候性のAFの認知度は46.3%、AFの血栓形成の認知度は43.8%と低い傾向であった。AFが脳梗塞の原因となることは54%と半数以上が知っていたが、AFによる脳梗塞の予防薬を知っている割合は33.8%と低値を示した。
    【結語】AFの認知度やAFが脳梗塞の危険因子であることの認知度は、高血圧や糖尿病と比べ低く、産業保健の場においては、脳梗塞予防を念頭におき、AFの疾患概念や脳梗塞発症予防薬の存在の説明、検脈の習慣づけの普及などAFに対する介入が健康診断後や保健指導の面談時などに必要と考えられた。
  • 厚美 直孝, 田村 美和子, 倉 尚樹
    2017 年 44 巻 6 号 p. 796-800
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     当健保が2014年度から開始した糖尿病重症化予防プログラムについて概要と経過を報告する。対象は2013年度健診でHbA1cが8.4%以上であった13名で、健保常勤医師による面談と全身の診察、手帳による受診管理と保険者・医療者連携からなる介入プログラムを実施した。2013年度健診データ(前値)と、面談6か月後のHbA1cおよび体重を評価項目とした。面談6か月後の体重変化と糖尿病に対する主治医の投薬変更について関連性を考察した。さらに対象者の2016年度健診データから本プログラムの長期的な効果を検討した。
     評価項目のうちHbA1cは、前値10.1±1.3%に対し、面談6か月後は8.1±1.4%と有意に低下した(p<0.01)。体重は、前値が78.5±13.8kg、面談6か月後が80.0±14.0kgであった(NS)。体重が前値に比べて2kg以上増加した群において、インスリンまたはインスリン分泌促進薬の増量との関連が示唆された。プログラム開始後に投薬が増量されてHbA1cは改善したが、体重が増加した例が少なくないことが課題として示された。
     2016年度健診における医療機関受診継続者12名のHbA1cは7.8±1.9%であり、長期的にも効果の継続が認められた。
     以上よりコントロール不良の糖尿病に対する本プログラムは、短期および長期の両方でHbA1cに対する改善効果が認められた。一方で、投薬増量によりHbA1cは改善しても本人の生活習慣の改善が十分でない場合も認められ、治療薬への依存がさらに大きくなる可能性も示唆された。これらの結果を踏まえて、今後はコラボヘルスにより事業主との連携をさらに深めた介入プログラムを導入し、糖尿病重症化予防の効果について検証を続けていく予定である。
  • 池窪 勝治, 橋本 さおり, 伊加 加奈子, 倉橋 由里子, 神野 勉, 石蔵 裕子, 島屋 真希, 石田 輝子
    2017 年 44 巻 6 号 p. 801-812
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     2003年~2016年までの13年間に、兵庫県予防医学協会、健康ライフプラザを受診し、橋本病と診断された454例の甲状腺機能の経時的変動、甲状腺の性状および結節の合併につき後ろ向き研究を行った。
     橋本病454例は本施設にて初回時1回のみ甲状腺機能検査を受けた252例(A群)と初回時から長期に渡って経過観察した202例(B群)の甲状腺機能の変動につき詳細に検討した。両群とも専門医に紹介した症例の経過は紹介先からの返書により調査した。経過観察できた350例の初回検査では73.0%が正常機能であり、甲状腺機能低下症6.6%を含め27.0%に甲状腺機能異常症を認めた。経過観察後の甲状腺機能は76.0%が正常機能であり、24.0%が甲状腺機能異常症と診断した。甲状腺機能低下症は初回時22.0%、経過観察後10.6%であり、全体を通じて2.6%に無痛性甲状腺炎が発症していた。
     甲状腺超音波検査(US)を施行した427例では内部エコー不均一が73.1%に認められた。甲状腺体積を測定した286例では69.2%に腫大(≧20g)が認められた。
     甲状腺自己抗体(TgAb・TPOAb)の検討では、両抗体測定例でTgAb陽性が93.1%、TPOAbは71.2%が陽性で、TgAb陽性率が高かった。US内部エコー不均一例でのTgAb陽性率は、不均一がない症例より陽性率が高かった。
     USを施行した橋本病427例中151例(35.4%)に良性結節、13例(3.0%)に乳頭癌を合併した。一方、研究期間中に抗体検査が行われた良性結節501例中99例(19.8%)および乳頭癌65例中16例(24.6%)に、橋本病を合併していた。
     以上の研究結果から、橋本病の大部分は正常機能を保持して経過するが、少数例に甲状腺中毒症や機能低下症がみられ、潜在性甲状腺機能異常を繰り返しながら経過し一部は機能低下症に陥る事が判明した。よって著者らは橋本病の管理のフローチャートを考案し、QOLの向上に努めている。
     今回、興味深い橋本病および結節合併例の超音波画像と粘液水腫心の1例を提示した。
  • 井上 詠, 高山 美智代, 別所 理恵子, 吉田 諭史, 柏木 和宏, 槇野 香奈子, 清水 良子, 広瀬 寛, 杉野 吉則, 岩男 泰
    2017 年 44 巻 6 号 p. 813-818
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】本邦で大腸がん(colorectal cancer; CRC)の発生、死亡が増加しており、CRCの発生要因として生活習慣、メタボリック因子との関連が示唆されているが、本邦での両者の関連を示す大規模な報告はない。今回、CRCの前癌病変と考えられている大腸腺腫性ポリープの発生に対するリスク因子について、人間ドックにおける総合的な健診データを用いて、メタボリック症候群(MetS)に焦点をあてて検討を行った。
    【方法】2012年8月から2015年7月の間に当院で総合的な人間ドック健診を行った7,213名の受診者中、大腸内視鏡検査を受けた者が1,835名で、胸部CTを受検しなかった者を除外した1,772名を対象とした。年齢、性別、身体計測(体格指数(BMI))、CTにより計測した内臓脂肪面積(VFA)、血圧、血液生化学的データ(脂質代謝、糖代謝)、高血圧、脂質異常症、糖尿病の治療歴を独立変数として検討を行った。大腸腺腫性ポリープ(腺癌を含む)と各変数との関連を単変量解析により評価し、さらに多重ロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析により検討を行った。
    【成績】対象のうち506例(28.6%)に大腸ポリープを認め、進行がんは5例(0.28%)であった。446例(25.2%)がMetsに該当していた(男性31.3%、女性12.0%)。単変量解析では性別、年齢、BMI、VFAがポリープと有意な関連性を認め、また、MetSは有意に大腸ポリープと関連していた(P<0.01)。ロジスティック回帰分析では、性別と年齢、内臓脂肪蓄積、さらにMetSを構成する要因として糖質異常がそれぞれ大腸ポリープの独立したリスク因子であった。
    【結論】本研究により加齢、肥満、男性およびメタボリック症候群に該当することが日本における大腸腫瘍発生のリスク因子である可能性が明らかとなった。
  • 田中 和子, 堺 義子, 高垣 裕美子, 辻野 京子, 康永 真紀, 中西 英子, 南 慶子, 古林 孝保, 徳永 勝人
    2017 年 44 巻 6 号 p. 819-824
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【背景と目的】我国では、逆流性食道炎の頻度が急増している。欧米では、逆流性食道炎を背景とするバレット食道が、食道腺癌のリスクとされている。日本人における研究でも逆流性食道炎はバレット食道のリスクとされ、その対策が急務となっている。当健診センター人間ドック内視鏡検査で発見された逆流性食道炎の背景を検討し、その予防のためのリスク因子を求めた。
    【方法】2015年4月1日より2016年3月31日までの内視鏡受検者1,062人(平均年齢55.3歳)、男性680人(同56.5歳)、女性382人(同53.1歳)を対象とした。ロサンゼルス分類-GradeA以上の逆流性食道炎あり群220人となし群842人の2群について性、年代、肥満(BMI25以上)、油物多い、飲酒(1日2合以上)、ストレス、喫煙、萎縮性胃炎なし(木村・竹本分類C-0,1)、食道裂孔ヘルニア等の9個の背景因子の頻度比較をχ2乗検定で行った。次に、逆流性食道炎の有無を目的変数とし、上記背景を説明変数として、ロジスティック回帰分析により逆流性食道炎の予測因子を求めた。
    【結果】逆流性食道炎の頻度は全体で20.7%、男性27.6%、女性8.4%であった。男性の60代未満は60代以上より高頻度であったが、女性では両年代間の差はみられなかった。上記背景の内、食道炎あり群ではなし群に比べ、男性、肥満、飲酒、喫煙、萎縮性胃炎なし、食道裂孔ヘルニアの頻度が有意に高値であった。ロジスティック回帰分析の結果、予測因子として有意であったのは、オッズ比順に、食道裂孔ヘルニア(3.4)、男性(3.3)、肥満(1.8)60歳未満(1.7)の4因子であった。2合以上の飲酒は有意ではないがリスク増加の傾向を認めた。萎縮性胃炎なし、喫煙、油物多い、ストレスは有意な因子ではなかった。
    【結論】逆流性食道炎は女性の高齢者に多いという従来の報告とは異なり、女性の年代による頻度差はみられなかった。萎縮性胃炎なしが有意なリスクとならなかったのは、萎縮あり群に、胃酸分泌の明白な低下が報告されていないC-2を含めたことによる可能性がある。逆流性食道炎の予防には、まず食道裂孔ヘルニアを内視鏡検査で確認すること、男性性差や年代を考慮すること、生活習慣の改善により肥満予防を勧めることが重要と考えられた。
調査報告
  • 中道 陽子, 木下 正行, 栗原 達哲, 眞崎 正, 山縣 文夫, 八巻 悟郎, 高築 勝義, 及川 孝光
    2017 年 44 巻 6 号 p. 825-831
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】血清Helicobacter pylori(HP)抗体検査において、測定法の違い(CLEIA法とLA法)により検出結果にどう違いが出るか検討した。また、得られた結果によりABC分類(胃がんリスク判定)にどのような影響があるかを検討の目的とした。
    【対象】2016年8月より、当施設でHP抗体検査・ペプシノゲン(PG)検査を実施した受診者を対象とした。対象受診者は人間ドック・健康診断受診者合わせて199例である。
    【方法】CLEIA法による検査は、SphereLight Wakoを用いた。専用試薬である「スフィアライトH.ピロリ抗体・J,ペプシノゲンI・II」を使用した。LA法による検査は、外注先にて「LZテスト‘栄研’H.ピロリ抗体」を使用した。それぞれのHP抗体陽性率と、得られた結果によるABC分類判定について比較・検討した(HP抗体検査cut off値:CLEIA法 4単位/mL、LA法 10U/mL)。
    【結果】HP抗体検査結果は、CLEIA法では199例中27例(13.6%)が陽性であった。LA法では、15例(7.5%)が陽性であった。両方法とも陽性となったのは、13例(6.5%)であった。HP抗体検査結果が、不一致となったのは16例あった。16例中、CLEIA 法のみ陽性は14例、LA法のみ陽性は2例であった。ABC分類判定の一致率は、92.0%であった。
    【考察】HP抗体検査において、LA法に比べCLEIA法の陽性率が高くなった。原因は、(1)cut off値の相違、(2)検出感度の違い、(3)試薬中抗原株の違いが考えられる。胃がんリスク判定検査としてのABC分類では、偽陰性を低減するかが重要である。今回の結果より、検出率がより高かったCLEIA法の有用性が示唆された。
大会講演 日本総合健診医学会 第45回大会
  • 篠原 幸人
    2017 年 44 巻 6 号 p. 832-837
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     1954年に人間ドックが本邦で初めて産声をあげたのと同様に、脳ドックも1988年に本邦で初めて生まれたものである。脳ドックは、非侵襲的な頭部CTの普及に加えて、MRI、頸部超音波エコーなどの開発により、一般の人間ドック健診の盲点をカバーする部分ドックの一つとして広まりつつある。現在、脳ドック施設数は約600(学会認定施設255)で、更に増加傾向にある。
     本講演では脳ドックの標準検査項目を紹介するとともに、演者が関係する山中湖ハイメディックの初期のデータ(対象3,780例、平均年齢55歳、男性2,417例)から、一見健常にみえる受診者に高頻度にみられるMRI・MRAの異常、特に最も多く発見される無症候性脳虚血性病変(いわゆる隠れ脳梗塞と白質病変)に対する各種人間ドック健診の検査成績の関係、また予後調査などについて概説した。
     いわゆる隠れ脳梗塞は280例(7.4%)に観察された。また、白質病変は脳室周囲高信号(T2またはFLAIR画像)14.4%、深部皮質下白質高信号18.9%、無症候性脳出血0.1%、未破裂脳動脈瘤は4.2%で認められた。
     無症候性脳梗塞発現に有意に関係する因子は、年齢、糖代謝異常、高血圧、性別(男性)などで、無症候の虚血性白質病変もほぼ同様の傾向を示していた。
     これらの受診者を平均38か月観察した結果、1.3%に相当する27症例が各種の脳卒中を発症した。特に虚血性脳血管障害発症例の予知因子としては、統計学的には頸動脈狭窄、脳内血管の狭窄、無症候性脳梗塞などの存在とともに、糖代謝異常、高血圧、心房細動、喫煙などの因子が影響すると考えられた。
     トータル・ヘルスケアの意味からも、人間ドックと脳ドックのコラボレーションは重要であり、今後は疾患の早期発見・治療のみならず、その発現予防すなわち一次予防にも力を注ぐべきである。
  • 山下 静也
    2017 年 44 巻 6 号 p. 838-845
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     家族性高コレステロール血症(FH)は常染色体優性遺伝疾患で、LDL受容体及び関連蛋白の遺伝子異常によって血清LDL-Cが増加する。特徴はアキレス腱等の腱黄色腫や結節性黄色腫、早発性冠動脈疾患であり、高LDL-C血症を家族内に認める。肝細胞から分泌されるPCSK9の機能獲得型変異もFHの原因となる。日本動脈硬化学会(JAS)では動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版を発行し、第5章に独立してFHの診断基準、治療の指針が記載された。PCSK9変異も含めると、ヘテロ接合体は200-500人に1人、ホモ接合体は16-100万人に1人との報告もあり、FHは高頻度の遺伝性疾患であるが、我が国でFHと診断されている者は1%未満に過ぎず、健診医学的にもその認知と早期スクリーニング法の確立は重要な課題である。FHは薬物治療でLDL-C値の低下が可能であり、早期診断・治療により動脈硬化の発症・進展を抑制できる。治療にはスタチンかつ/または小腸コレステロールトランスポーター阻害薬を併用し、効果不十分な場合はPCSK9阻害薬かつ/またはレジンかつ/またはプロブコールを併用する。更に効果不十分な場合はLDLアフェレシスを行う。FHホモ接合体や重症ヘテロ接合体ではLDLアフェレシスの適応となる。日本動脈硬化学会では成人及び小児FHに対する診療ガイドを作成したが、一次予防のLDL-C管理目標値は100mg/dL未満で、目標値に到達しない場合でも、未治療時のLDL-C値の50%未満を治療目標とすることも可とする。しかし、最近PCSK9阻害抗体医薬が市販され、LDL-Cの顕著な低下も可能となったため、二次予防ではLDL-C<70mg/dLを目指す。小児のFHは従来生活習慣改善療法とレジン投与が第一選択となっていたが、日本小児科学会と本学会との合同で、小児FH診療ガイドを作成し、スタチンを第一選択薬とした。JASではFH啓発のため、FH Foundationやヨーロッパ動脈硬化学会(EAS)、日本心臓病学会とも連携し、世界FH Dayに合わせて市民公開講座、医師向け講習会、マスコミ向けプレスカンファレンス等も行い、FHの啓蒙を行っている。FHは早期発見・早期治療が極めて重要であり、今後も本学会が中心となってFHの啓発活動を行っていきたい。
  • 川尻 剛照
    2017 年 44 巻 6 号 p. 846-853
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     家族性高コレステロール血症(FH)は、常染色体優性遺伝する著明な高低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)血症である。単一遺伝子疾患として最多で、一般人の200~300人に一人存在し、健診で遭遇する可能性は高い。明確な診断基準があるにも関わらず、診断率が低いことが問題視されている。無治療FHホモ接合体はほぼ全例が、ヘテロ接合体であっても60%以上が心血管疾患により死亡する。逆に、コレステロール低下療法の恩恵を最大限に享受する患者群でもあり、予防医学の見地からも極めて重要な疾患と言える。
     FHの原因はLDLの細胞内取り込みに関わるLDL受容体の欠損または機能低下型遺伝子変異である。近年、LDL受容体の細胞内分解に関わるPCSK9の機能亢進型遺伝子変異でもFH類似の病態を呈することが明らかとなった。
     従来の薬物療法によるLDL-C低下率は約66%であり、スタチンを極量まで増量すること、多剤併用することを躊躇してはならない。しかし、FHは極めて難治性であり従来の薬物療法だけでは限界があった。従来、LDLアフェレシスは最強のLDL低下療法であったが、治療は侵襲的で時間を要するばかりでなく、そのLDL-C低下効果は一過性であり、しかも高価な治療法であった。
     PCSK9の発見を端緒とし、PCSK9阻害という新しいコンセプトの創薬が始まった。抗PCSK9モノクローナル抗体製剤は、従来の薬物療法下さらに60%以上LDL-Cを低下させることにより、冠動脈プラークを退縮し心血管イベントを減少させた。LDLアフェレシスよりさらに強力なLDL-C低下作用を発揮し、FHの治療は劇的に変化した。
     健診でFHと確定診断するには限界があるが、少なくともFHが疑われる症例は専門医の受診を促し、積極的なコレステロール低下療法が行われるべきである。
  • 佐藤 友美, 山田 桜子, 藤本 壮八, 高尾 俊弘, 勝山 博信
    2017 年 44 巻 6 号 p. 854-860
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】生活習慣病治療者の生活スタイルの検討により、問題となる習慣の改善を目指す。
    【対象】2008年4月より2016年3月末までに、川崎医科大学附属川崎病院(現在は川崎医科大学総合医療センター総合健診センター)にて特定健康診査を受けた10,417名(男性4,054名、女性6,363名)とした。
    【方法】検討項目は特定健康診査問診票項目と生活習慣病(内服なし群、内服群は高血圧症:HT、糖尿病:DM、脂質異常症:DL、HT+DM、HT+DL、DM+DL、HT+DM+DL)との関係をPearson相関係数、多変量解析を用いて解析した。
    【結果】各生活習慣病と特定健康診査項目との相関関係・多変量解析にてHT群では性別、生活習慣改善の意識(意識)、20歳から体重が10キロ以上増加(20歳からの体重増加)、飲酒、飲酒量、就寝前2時間以内・週3回以上の夕食摂取(就寝前食事)に有意な関連性を認めた。同様にDM群では性別、十分な休養・睡眠(休養・睡眠)、飲酒、就寝前食事、1日30分以上・週2日以上の運動(週2日運動)に関連がみられ、DL群では性別、意識、20歳からの体重増加、休養・睡眠、飲酒、喫煙、就寝前食事。HT+DM群では性別、20歳からの体重増加、歩く速度。HT+DL群では意識、20歳からの体重増加、休養・睡眠、週2日運動、歩く速度。DM+DL群は意識、20歳からの体重増加、食べる速度、1日1時間以上の身体活動に関連し、HT+DM+DL群では性別、意識、20歳からの体重増加、休養・睡眠、飲酒、週3回以上の夕食後の間食に有意な関連を認めた。
    【考察】生活習慣病治療者の生活スタイルは各疾病で異なるが、まずは日常生活の中でこれからでも改善できる生活習慣を実践することが疾病改善・予防に繋がる。また20歳からの10キロ以上の体重増加という受診者背景は長年の生活習慣から病を得た現状を窺わせる。これらより若い世代からの健康の保持増進のために早期介入が必要と考える。
  • 向原 圭
    2017 年 44 巻 6 号 p. 861-864
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
     メタボリックシンドローム健診では、メタボリックシンドロームという危険因子がある患者に対して、脳血管疾患による死亡率、虚血性心疾患による死亡率、糖尿病腎症による新規透析導入患者数を減らすことを目的で生活習慣に焦点を当てながら、動機付け面接を行っている。しかしながら、健康の決定要因の多くは、個々の力だけでは変えることが難しいため、個々の患者に対するアプローチでは限界があり、地域全体に対するアプローチが必要となる。地域全体に対するアプローチを具体的に実践していく際に、慢性疾患ケアモデルが参考になる。このモデルを基にして地域ごとに、それぞれの地域の実情にあった具体的なアプローチを考えていくことになるが、このアプローチが本当に有効なのかどうか、について検証するための研究を行う必要がある。最後に、メタボリックシンドローム健診には様々な医療専門職が関わっているが、職種・専門分野を越えたプロフェッショナリズムの概念を実践に移すことで社会への責任が果たされると考える。
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