【目的】高比重リポ蛋白(HDL)にはHDL2 とHDL3 の亜分画が存在し、それぞれに含まれるコレステロールであるHDL2 コレステロール(HDL2-C)及びHDL3 コレステロール(HDL3-C)は、前者は肥満、喫煙で低下し、後者は飲酒で上昇することが知られているが、その他の要因についての検討は十分ではない。本研究では、抗加齢ドックにおいて測定した詳細なデータをもとにHDL2-C及びHDL3-Cに影響を及ぼす要因の検討を行った。
【対象】2006年6月~2016年3月に当センターにて抗加齢ドックアドバンスコースを受診したのべ536名(男性285名、女性251名、年齢27~89歳、平均年齢62.3歳)を対象とした。
【方法】抗加齢ドックにおいて測定したアディポネクチン、ビタミン類、ホルモン類、その他一般検査項目及び問診について、HDL2-C、HDL3-Cと相関分析を行い、説明変数の候補因子を選定し、HDL2-C、HDL3-Cそれぞれについて重回帰分析(ステップワイズ法)にて解析を行った。HDL2-C、HDL3-Cともに性別が説明変数として選択されたので、男性ではフリーテストステロン、女性ではエストラジオールを説明変数の候補に加え、男女別にHDL2-C、HDL3 について重回帰分析を行った。
【結果】HDL2-C、HDL3-Cにおいて、中性脂肪、性別で負の相関を認めた。HDL2-Cにおいてアディポネクチン、β-カロテンは正、BMIは負の相関を認めた。HDL3-CにおいてLDLコレステロール(LDL-C)、DHEA-S、ビタミンA、ビタミンEαは正、喫煙歴、年齢は負の相関を認めた。男女別HDL2-C解析では、β-カロテンが男性において正、ビタミンEαが女性において正の相関を示した。男女別HDL3-C解析では、男性においてDHEA-Sが正、喫煙歴、BMIが負の相関を示した。また女性において飲酒歴、ビタミンA、ビタミンEαが正、年齢、エストラジオールが負の相関を示した。
【考察】HDL-Cは受診者の生活習慣を念頭にHDL亜分画や性差を考慮した指導が有用である可能性が示唆された。
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