総合健診
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最新号
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原著
  • 和田 高士
    原稿種別: 原著
    2020 年 47 巻 5 号 p. 539-545
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     1999年に、東京慈恵会医科大学は、日本では初めて人間ドックの施設としての基本検査項目としてウエスト周囲長(WC)を導入した。男性のWC85cm、女性のWC90cmが内臓脂肪面積 100cm2 に相当する。内臓脂肪の蓄積状態を反映するWCは簡単に測定することができる。これらのカットオフデータは、心血管障害を伴うメタボリックシンドロームの診断基準として採用された。肥満の基準は、日本ではBMI≧25kg/m2 と定義されている。

     対象者は1999年から2018年までの人間ドック受診者、30歳から79歳までの男性122,567人、女性54,267人である。年度毎にWCとBMIの上記の診断基準を満たす該当率を性別、5歳刻みの年齢群で求めた。20年間の推移を明らかにするために、年度別データから線形近似で解析した。

     男性では55~69歳でBMI、WCともに増加していた。男性では30~39歳でBMI、WCともに減少した。男性の40~54歳と70~79歳では、BMIは増加したが、WCは減少した。女性では、30~34歳と65~69歳でBMI、WCはともに減少し、50~64歳では増加した。そのほかの年齢群では、BMIの減少とWCの増加が見られた。腹囲に関する国からの報告では、特定健康診査調査と国民健康・栄養調査がある。本研究のデータは、大多数で実施される特定健康診査調査結果に近かった。

大会講演
日本総合健診医学会 第48回大会
  • 上嶋 健治
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 546-552
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     近年、「心不全パンデミック」と呼ばれるような心不全患者の増加がある。入院を要した心不全患者の原因疾患としては、1)虚血性心疾患、2)高血圧、3)弁膜症であり、最近では、虚血性心疾患の率が上昇している。しかし、左心機能が保たれた心不全のHFpEFは、左心機能が低下した心不全のHFrEFに比べて高血圧の占める割合が高く、高血圧が国民病とされる本邦では、患者の超高齢化に伴ってHFpEF患者が増加している。

     増え続ける心不全患者に対応するためには、心不全を一局面の病態ではなく、進行する連続的な病態としてとらえる必要がある。2018年に日本循環器学会が発行した「急性・慢性心不全診療ガイドライン」では、心不全患者を、ステージA:器質的心疾患のないステージ、ステージB:器質的心疾患のあるステージ、ステージC:心不全ステージ、ステージD:治療抵抗性心不全ステージ、と定義している。ステージA/Bでは無症候であっても高リスク群であれば早期に治療介入して心不全の発症を予防し、ステージC/Dでは症状の改善に加えて、心不全の進行・再発予防、生命予後の改善を図る。

     心不全の一次・二次予防での運動療法の役割は大きく、心不全患者の病態・病期などに応じて継続的に実践する必要がある。2017年には心リハ学会による心不全の心リハの標準プログラムが公開されている。これは心リハのプログラムであると同時に実践のマニュアルであり、努力目標に向かって継続的な業務改善を行うことで、心不全患者への心リハの質を担保するものである。

     心不全患者数が増加し続けることが予測される中、多様な問題を抱える心不全患者への効果的な対応には、エビデンスに基づく効果的な予防・治療と質の高いチーム医療の確立が急務である。中でも、ステージA/Bの患者を早期に発見し、生活習慣の管理や危険因子への適切な介入に努めることは極めて重要であり、本学会の意義と役割は大きいものと考える。

  • 吉岡 成人
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 553-558
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     1970年には人口の7.0%にすぎなかった高齢者は、2019年には人口の25%以上となり、1人の女性が生涯に生む子供数は1.42となっている。日本における少子高齢化は極めて速いスピードで進行し、高齢化のピークをむかえる2040年以降には、高齢者の医療費が医療費全体の8割近くになると試算されている1)

     高齢者の増加とともに、高齢2型糖尿病患者も増加している。2018年の国民健康栄養調査によれば、HbA1c6.5%以上または糖尿病の治療を受けているものは、男性の18.7%、女性の9.3%、70歳以上では、男性の24.6%、女性の15.7%と、加齢とともにその数が増加している。糖尿病患者の高齢化とともに、糖尿病の併発症としての、認知症、がん、骨折、うつ病、歯周病などが患者のQOLを低下させる大きな要因となる。さらに、高齢糖尿病患者では高血糖自体が血管障害のみならず、サルコペニア、フレイル、低栄養、心不全などの老年症候群をきたす要因となり、加齢に伴う経年的な腎機能の低下は治療に伴う低血糖のリスクを増強する。

     高齢の患者にどのように対応するかは簡単なことではないが、若年成人や前期高齢者で示された予防医学的なエビデンスが後期高齢者や介護が必要な高齢糖尿病患者にあてはめることが妥当かどうかを十分に勘案したうえで、最小限の薬剤を適切に処方し、マイルドな血糖管理を行うという基本的な姿勢が重要なのではないかと思われる。

  • 菊池 真大
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 559-563
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     胆道がんは、日本では決して珍しいがんではなく、年間2万人以上が診断されており、男性では8番目に、女性では7番目に多いがんである。50歳代から増え始め、高齢者に多くみられる現状で、その治療選択に難渋する場合もみられる。手術の侵襲性や抗癌剤の選択肢が狭いこと、その治療反応性、そして予後を見極めた上でどのタイミングで緩和ケアに繋げるかといった諸問題が存在する。

     予防医学的な観点からは、この疾患をいかに早期に発見し、治療に繋げられるかが急務である。胆道がんの中でも、胆嚢がんは、胆嚢結石、膵胆管合流異常、先天性胆道拡張症、胆嚢ポリープなどが危険因子で、前2者との関連性は高い。健診における超音波の役割は大きく、胆嚢がんの診断には必要不可欠な検査である。一方で、胆管がんの危険因子は、先天性胆道拡張症、肝内結石、潰瘍性大腸炎、印刷業の職歴などだが、いずれも合併頻度は高くなく、健診の場でも肝機能障害や胆管拡張などの超音波異常から拾い上げるしかない。

     胆道がんを考える場合、他のがんとの違い、その特殊性を理解していないと、間違った情報が患者に渡り、その後の経過や余命に影響を及ぼすケースがある。消化器全般を扱う消化器内科医でも、胆道領域のがんは、慎重な判断と、わかりやすい説明、全人的なケアが要求される。

     胆道がんは、通常の健診を受けていても初期にはみつけられず、進んだ段階で発見されることもあり、少しでも早期発見に繋げるべく、健診分野で何が出来うるのかを考えていきたい。

  • 塚本 和久
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 564-573
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     わが国の死因の第1位は悪性新生物であるが、その多くが動脈硬化に起因する心疾患(第2位)と脳血管疾患(第4位)による死亡を合わせると悪性新生物のそれに比肩するレベルに達する。また、生活習慣病関連疾病の医療費は国民医療費の1/4を占めている。それゆえ、平均寿命や健康寿命の延伸を図るのみならず、国民医療費対策軽減の観点からも血管病予防は極めて重要である。これらを背景として、2019年12月には「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が施行されている。

     さて、疫学研究から多くの脳心血管疾患危険因子が明らかにされ、それに伴い血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症などを管理することの重要性が認識され、それぞれの疾患に対する診療・治療ガイドラインが作成・改訂されてきた。一方、これら危険因子を包括的に管理することの重要性もエビデンスとして示され、包括的管理の重要性が提唱されてきた。

     これらを受け、2008年には特定健診による脳心血管疾患の重大なリスクである生活習慣病対策が開始されるとともに、2015年には、「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2015」が12の学会と日本医師会により作成され、一般臨床や職域における包括的ガイドラインとして活用されてきた。そして、その後、各学会のガイドラインが改訂されたことや、高齢者人口の増加に伴い高齢者特有の問題も包含した管理チャート策定の必要性が出てきたことより、総合健診医学会も加えた14学会、そして日本医学会連合および日本医師会の合意のもとに「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019」が2019年5月に発行されるに至った。

     本講演(本稿)では、現在までの日本での疫学などに言及するとともに、「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019」の2015年版からの改訂点も含めた概要をまとめる。

  • 矢澤 一良
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 574-577
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 加瀬澤 信彦, 徳高 平蔵, 大北 正昭, 新名 玄
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 578-584
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     自己組織化を基礎とする研究は、近年、世界中で急速な発展が見られる。この応用である自己組織化マップ(Self-Organizing Map: SOM)解析法については複雑系の事象データの分析に対して、非線形回帰法として分布型の如何に影響されないというメリットを有している。さらにSOMでは相互の類似関係を保持したまま全体を要約することができるという特長がある。

     近年、著者らが行った技術的開発においては、球面SOMの正面側と隠れた背面側の同時表示がディスプレイ上で可能となった。そのため構成要素間の類似関係を視覚的に全体把握することができるようになった。さらに要素間類似度を計算するDIMモードをSOM解析に導入することによって、要素間の類似度の定量化が実現し、要素間相互の強度比較が可能となった。このようにしてSOM解析技術の改良が進み、様々な変動要因が複雑に絡み合って存在している健診データの複雑系解析から、臨床への応用研究に向けての橋渡しの基盤が今日整いつつある。

     本シンポジウムで、われわれは日本人成人の総合健診受診者の検査値、生活習慣問診、摂取栄養調査等の情報を含むデータを一つのモデルとして取り上げて検討した。そして2つの項目(要素)間のすべての組合せにおける類似度を最新のSOM解析法によって網羅的に算出し、それらの主要な要素について男女のエイジングにおける類似度が各年齢区分で最大となる点をそれぞれ検索してプロファイルに収めた。このことにより、われわれは2要素間の類似強度が男女それぞれのエイジングに関わって変化する状況を動的に把握することができるとともに、要素組合せの臨床的意義の観点から健康リスクの最も高まる兆候年齢、すなわち未病の発生時期を推定して医療支援と保健指導を行う適切なタイミングを検討することが期待される。

     われわれはこの研究成果から、エイジングにおける男女の生体動向の情報を詳細に検討し、総合健診の健康増進システムに活用することによって、健診の一層の質的向上に寄与することができると考えている。

  • 山田 千積, 増田 由美, 高松 千織, 岸本 憲明, 後田 奈々, 護山 健悟, 高清水 眞二, 久保 明, 西﨑 泰弘
    原稿種別: 大会講演
    2020 年 47 巻 5 号 p. 585-590
    発行日: 2020/09/10
    公開日: 2020/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

     健診・人間ドックは「受けっぱなし」(医療者からみると「やりっぱなし」)ではその意義を失う。特殊で高額な検査に頼らずルーチン検査からであっても、健診・人間ドックの検査結果には健康寿命を延ばすヒントが多く詰まっており、読む者次第で驚くほど豊富な情報が得られる。急性疾患から生活習慣病などの慢性疾患まで、結果からどのような病態が読み取れるのか、またそれをどう実践的に生かすのか?、いま、現場では更なる具体的なアプローチが求められている。

     基準範囲とは、一般的に「健常人の95%が含まれる検査値の範囲」と定義されているが、絶対的なものではない。基準範囲内にある場合、多くはアルファベットの結果判定がAとされる。受診者はそれだけをみて一喜一憂することもあり、医療者はそれだけをみて「問題ない」と判断することもある。血液検査においては、検査値の経年変化をみることが重要であり、判定結果に関わらず、前回、前々回からの推移を確認しなければならない。数値がこの数年で少しずつ基準値の上限に近づいてきていないか、あるいは急激に悪化していないか、などを見極めることが必要である。

     また、1つの数値にとらわれていないだろうか。病気やそのリスクの有無については複数の指標で判断されるため、1つの数値が基準範囲内だからといって、安心はできない。年齢とともに「要経過観察」や「再検査」といった判定が出やすいのが血圧、脂質、糖代謝、尿酸値といった生活習慣病関連の項目である。一方で、全てを基準範囲内に収める必要はあるだろうか。ある値が体質的に基準値より高め・低めでも、健康な方々はおり、いわば「個人の基準値」も考慮すべきである場合もある。

     検査結果を読み解くためのアプローチとしては、①検査結果の経年変化をみる、②検査結果の組み合わせで判断する、③検査結果の変化の理由を考えることが重要である。

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