糖尿病の血糖コントロール状態を把握する指標には, 空腹時血糖 (FBG) とヘモグロビンA
1C (HbA
1C) の組み合わせが一般的である。HbA
1cが化学法のフルクトサミン (FRA) にとって代わった理由の一つに, 病体把握が的確で, しかも手技的に難点がなく, 施設間差が少ないことが考えられる。
一方, 和光純薬のFRA酵素法は, 従来の化学法の問題点が回避されており, 原理的には, プロテアーゼの作用により遊離した糖化アミノ酸にフルクトシルアミンオキシダーゼを作用させ, 過酸化水素を生成させているため, 酵素法の利点を生かした方法である。
キット性能評価のデータとしては, 同時再現性 (CV) が0.2~0.3%, 日差再現性が1.5~3.4%であり, 直線性は900μmo
l/
l付近まで認められ, 血中共存物質の影響はほとんどない。以上のことから性能は良好と評価した。本法と化学法との相関 (
n=58) は相関係数
r=0.944と高度であったが, 回帰式は
y=1.078x-35.7とズレがあり, 本法が約36μmo
l/
l低値となった。
次に他の糖尿病マーカーとの相関を調べたところ, FBGとは
r=0.641, HbA
1Cとは
r=0.845, 糖化アルブミン (GA) とは
r=0.966であった。FRAはGAを多量に抱合していることから, GAと高度な相関を認めたことは, 信頼性を補遺するのに十分であった。
最後に当院健診センター受診者のうち, 正常 (FBG100mg/d
l以下, HbA
1C5.8%以下) と診断された194名の基準範囲を求めたところ, 血清FRAが147.2~222.0μmo
l/
l, 血漿FRAが137.7~210.1μmo
l/
lとなった。
以上のごとく, 本法によるFRA測定は, GAと高度な相関を認めたことから, FBGとHbA
1Cの中間的糖尿病マーカーとして有力な指標となり, バッチ処理も可能であることから, 健診の場での利用も期待できる。
抄録全体を表示