日本病院総合診療医学会雑誌
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最新号
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原著
  • 本間 理, 西岡 大輔, 今井 沙紀, 佐藤 久美子, 土門 祐, 松本 祐治
    2026 年22 巻4 号 p. 162-168
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】国民皆保険制度下における社会経済的地位が手術に与える影響は明らかではない。本研究では腹腔鏡下大腸癌手術における所得階層と術後合併症,在院日数の関連について調査した。【方法】2019年4月~2023年8月に腹腔鏡下大腸癌手術を施行した症例を所得別に分類し,後方視的に解析した。主要評価項目は術後在院日数および合併症発生率とした。【結果】合併症発生率に所得階層毎の有意差は認めず,医学的成績は均質であった。一方,在院日数は所得階層と有意な負の相関を示し(spearman’s ρ= -0.341),低所得層や生活保護受給者で著明に長期化した。【結論】日本の国民皆保険制度下において,腹腔鏡下大腸癌手術の手技は,所得格差に関わらず均質に保たれていたが,術後在院日数は所得ランクと有意な負の相関を示した。
  • 森田 悟, 本多 寛之, 徳増 一樹, 大塚 勇輝, 中野 靖浩, 櫻田 泰江, 松田 祐依, 須山 敦仁, 増田 陽平, 長谷川 徹, 髙 ...
    2026 年22 巻4 号 p. 169-178
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    COVID-19罹患後症状(long COVID)の発症機序には未解明な部分が多く,診断や治療においてエビデンスのあるものは限られる。本研究では,long COVID 患者の実臨床における多様な後遺症状と治療のための処方の特徴・推移を解析した。2021年2月から2025年8月までに当院を受診したlong COVID患者1,194人では,初診時に後遺症状の緩和目的で処方された1,894処方のうち831処方(43.9%)を漢方薬が占め,内訳では補中益気湯が439処方(52.8%)と最多であった。症状では倦怠感が最も多く,味覚・嗅覚障害はデルタ株期の感染例に多く,オミクロン株期ではブレインフォグや睡眠障害が増加する変化が見られた。以上より,long COVIDの診療では補中益気湯を主とした倦怠感への処方と漢方薬・西洋薬を併用した随伴症状への処方が行われ,平均7割の患者において平均約301日で通院終了に至る傾向が示された。
  • 樋本 尚志, 前場 隆志
    2026 年22 巻4 号 p. 179-184
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者39例における血清微量元素濃度と肝病変とそれに付随する代謝異常との関連について検討した。微量元素として血清亜鉛(Zn),セレン(Se),銅(Cu),およびフェリチン濃度を測定した。肝機能は血清ALT値,アルブミン(Alb)値およびFIB4-indexで評価した。糖・脂質代謝異常はHbA1値,HOMA-IR値,LDL-コレステロール(LDL-C) および中性脂肪(TG) 値を測定し,体組成として体格指数(BMI)および骨格筋指数(SMI)を算出した。MASLD 患者における血清ALT値は血清フェリチン値と有意に正の相関を示した。血清Alb値は血清Zn, Se値が正の相関を,Cu値が負の相関をそれぞれ示した。また,血中HbA1c値は血清Se値と,HOMA-IR値は血清フェリチン値とそれぞれ有意な正の相関を示した。しかしながら,脂質代謝や体組成の異常と相関する微量元素は検出されなかった。以上より,MASLD患者におけるこれらの微量元素を測定することは,肝病変の病態のみならず耐糖能異常の把握にも有用であることが示唆された。
症例報告
  • 関谷 健, 金澤 建, 伊従 朱音, 岩中 悠真, 高橋 碧, 唐渡 諒, 阿部 祥英
    2026 年22 巻4 号 p. 185-190
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    一過性全健忘(TGA)は突然の前向性・逆向性健忘を呈し,神経学的異常を伴わない,まれな疾患である。小児例は非常に少ない。今回,軽度頭部打撲後にTGAの臨床像を呈した小児3例を経験した。いずれも意識障害や神経学的異常なく,同じ質問を繰り返した。前向性健忘は24時間以内に改善し,逆向性健忘も経時的に改善したが,受傷前後の記憶は欠落した。脳MRIでは拡散強調像を含め,海馬の特徴的所見は認めなかった。TGAの発症機序は海馬虚血,大脳皮質拡延性抑制,静脈還流障害が考えられ,若年例では軽度の頭部打撲が誘因になることが指摘されている。これらの知見は軽度の頭部打撲を受けた小児でTGA が発生する可能性がある。よって,頭部打撲後に急性健忘を呈する症例では,脳震盪やてんかん発作に加え,TGAを鑑別に含めることが有用である。また,小児TGAはまれではあるものの,予後良好であることを医療従事者は認識すべきである。
  • 渡部 嘉文, 徳原 満雄, 住友 康眞
    2026 年22 巻4 号 p. 191-196
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    症例は96歳,女性。虚血性腸炎の疑いで2度の保存的治療を受けたが,左下腹部痛が再発し当科を受診した。造影CTで左側結腸に壁肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇,S状結腸近傍に限局する腸管外ガスを認めた。また,下腸間膜静脈に造影欠損も認めた。大腸内視鏡検査でS状結腸に狭窄を伴う潰瘍性病変がみられたが,生検で悪性所見は得られなかった。下腸間膜静脈血栓症,大腸虚血ならびに狭窄と診断し,高齢で侵襲の少ない治療を希望されたため腹腔鏡下横行結腸人工肛門造設術を施行した。術後8か月目のCTでS状結腸腫瘤ならびに多発肝腫瘤を認め,S状結腸の潰瘍性病変は癌であった可能性が強く疑われた。下腸間膜静脈血栓症はまれであるが,左側結腸の壁肥厚を認めた場合に虚血性腸炎の鑑別診断に挙げる必要がある。また,高齢者の下腸間膜静脈血栓症では癌の存在を常に念頭に置き,血栓症の原因について慎重に診断を進めなければならない。
  • 八城 弘憲, 堀 哲雄, 北條 瞬, 谷山 朋彦, 吉岡 亮
    2026 年22 巻4 号 p. 197-203
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    83歳,男性。呼吸困難のため救急搬送され,左優位の胸水貯留を認めた。十二誘導心電図と心臓超音波検査が実施され,心不全が原因と疑われたが,利尿剤投与後も左胸水は減少せず,胸水細胞診では腺がんが検出された。その後,左肺腺がんに伴うがん性胸膜炎と診断し,化学療法を開始した。化学療法実施後に左胸水は減少したが右胸水は増加し,第2クール終了後に下痢と倦怠感のため入院となった。下痢の精査加療中に敗血症性ショックになり両側胸水貯留と下腿浮腫が悪化し心不全の増悪がみられた。下部消化管内視鏡検査で生検を実施したが,心不全の悪化のため死亡され,死亡後にトランスサイレチン型心アミロイドーシスであったと判断した。心不全の原因の一つである心アミロイドーシスの診断は容易ではないが,化学療法により心不全の急激な悪化が起こりうるため,化学療法開始前に心電図などを手がかりにより早期の診断を行うことが重要である。
  • 神安 柊, 生田 卓也, 大谷 裕一郎, 岸槌 雄太郎
    2026 年22 巻4 号 p. 204-209
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    炭酸リチウムは双極性障害に汎用される治療薬であるが治療域が狭く中毒に注意が必要である。今回,炭酸リチウムの長期服用患者が感染症加療目的の入院中に振戦が出現し炭酸リチウム中毒の診断に至った1例を経験した。炭酸リチウムは服用量が変化しなくても,脱水や腎機能低下により容易に血中濃度が上昇し中毒症状を引き起こす場合がある。炭酸リチウム服用者には定期的な血中濃度測定が推奨されているが,本邦では実際には血中濃度測定を施行せず,漫然とした処方が行われている実態も明らかになっており炭酸リチウム中毒の早期発見,予防に取り組む必要性がある。
  • 榎本 好恭, 佐藤 明史, 柿崎 裕太, 加藤 伸史, 藤嶋 悟志, 渡邊 明美, 髙橋 和江
    2026 年22 巻4 号 p. 210-215
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    結核性腹膜炎は比較的稀な疾患であり,癌性腹膜炎と類似した画像所見を呈することから,診断に難渋する場合がある。今回われわれは,婦人科系悪性腫瘍に起因する癌性腹膜炎が疑われ,産婦人科に入院したものの確定診断に至らず,当科において準緊急手術として頸部リンパ節生検および審査腹腔鏡を施行し,リンパ節結核および結核性腹膜炎と診断した症例を経験した。当院には呼吸器内科専門医が常勤していないため,結核・抗酸菌症治療医が在籍する他施設と連携し,早期に抗結核治療を開始した。その結果,術後9日目に当該施設への転院が可能であった。結核性腹膜炎は,発症から診断までの期間が遷延すると死亡率および合併症率が上昇するとされている。本症例は結核治療終了後3年以上が経過し治癒に至っており,早期に治療を開始できたことが良好な予後につながったと考えられた。
  • 川西 健矢, 髙木 慎太郎, 寺岡 雄吏, 鎌田 大輝, 安居 みのり, 関本 慶太朗, 仙波 重亮, 中村 一樹, 水本 健, 田丸 弓弦 ...
    2026 年22 巻4 号 p. 216-222
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    40歳台女性。X-5年に母国のフィリピンで血小板減少を指摘されていた。X-1年に来日。X年2月に近医で白血球減少,血小板減少,肝障害を指摘され当院を紹介受診した。初診時の腹部超音波で肝表面は不整で肝硬変様であり,門脈壁肥厚(periportal fibrosis,PF),および肝実質に亀甲紋様の高エコー(interlobular septalfibrosis,ISF)を認め日本住血吸虫症が疑われた。CTで肝表面と一部の大腸にも石灰化を認め,下部内視鏡で上行結腸と直腸に多発する塑像な黄色調の斑状の粘膜変化を認めた。血清抗体検査は陰性であったが肝生検および大腸生検でそれぞれ虫卵が確認され,日本住血吸虫による肝硬変と診断した。典型的な画像所見が診断の契機となった日本住血吸虫症の1例を経験した。社会のグローバル化に伴い今後遭遇する機会が増える可能性があり,熟知しておくべき疾患と考えられるため報告する。
  • 藤岡 淳, 松本 知己, 玉野井 徹彦
    2026 年22 巻4 号 p. 223-228
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    カタトニアは,気分障害や統合失調症に合併しやすい病態として知られているが,初診時点でカタトニアを想起し,背景疾患まで診断することは難しい。妄想の訴えのある60歳代女性が,数ヶ月の経過で増悪する寡動,無言症,拒絶症,高体温を主訴に受診した。常用の抗精神病薬を中止した後に症状が増悪していることや,ベンゾジアゼピン系薬投与で速やかに症状が改善したことなどから,悪性カタトニアと診断した。カタトニアは,統合失調症や気分障害などの精神疾患を背景に発症することが多いが,背景疾患が未診断の状態で発症することもある。また,カタトニアは中枢神経疾患などの器質的疾患に続発することもあるほか,経過中に深部静脈血栓症や肺炎などの合併症を来しやすいことから,診断・治療に際しては,精神科医だけではなく,内科医の視点も重要になる。そのため,カタトニアの診断・治療において,総合診療医が重要な役割を果たせる可能性がある。
  • 中正 香奈江, 平田 温
    2026 年22 巻4 号 p. 229-235
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    低Na血症に関連して横紋筋融解症を発症したと考えられる2症例を経験したので報告する。【症例1】:39歳,女性。統合失調症で内服加療中の患者で,痙攣発作,意識障害を主訴に救急搬送された。血液検査で低Na血症に加えて,CPK値の軽度の上昇,白血球数の増加を認めた。【症例2】:74歳,男性。脳梗塞を既往症に有する患者で,意識障害を主訴に救急搬送された。血液検査では低Na血症を認めるとともにCPK値の軽度の上昇を認めた。両症例とも低Na血症が意識障害の原因と考えて血清Na値の補正治療を開始した。入院後から横紋筋融解症の合併を推測させる血清CPK値の著しい上昇を認めたが,低Na血症の改善とともに血清CPK値も改善した。低Na血症の改善に従い横紋筋融解症の合併を示唆する高CPK血症が改善したことから横紋筋融解症発症への低Na血症の関与が推測されたので文献的考察を加えて報告する。
研究短報
  • 北風 希, 吉岡 慧, 菊池 健太郎, 茂木 千代子, 田邉 亜紀, 芦川 鈴子, 中原 拓海, 藤岡 ひかり, 田中 剛
    2026 年22 巻4 号 p. 236-239
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が,肺炎入院患者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の検出率に与えた影響と,その関連因子について検討した。当院に2019~2024年に肺炎で入院した60歳以上の患者1,691例のうち,喀痰からMRSAが検出された215例を対象とし,検出率の経年推移および過去1年以内の高齢者施設利用歴・入院歴との関連を解析した。その結果,MRSAの総検出率は16.5%から9.0%へと経年的に低下した。しかし施設利用歴と入院歴を有する例では,17.1%から24.5%へ上昇していた。以上より,COVID-19流行期の接触感染対策が,MRSA検出率の低下に影響した可能性が示唆された。一方で,施設利用歴と入院歴を有する患者は介護の必要度が高く,頻回な接触が避けられないため,さらなる感染対策の強化が必要と考えられた。
症例短報
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