日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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11 巻 , 1 号
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総説
  • 城川 美佳, 藤田 茂, 瀬戸 加奈子, 松本 邦愛, 平尾 智広, 長谷川 敏彦, 長谷川 友紀
    2010 年 11 巻 1 号 p. 2-14
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     医療安全を確保、促進するためには、医療安全文化の醸成が重要である。医療安全文化の構成要素として、これまでいくつかの概念が提案されているが、定量的評価を目的とした評価ツールはこれまで開発されていない。米国Agency for Healthcare Research and Qualityは施設類型別に医療安全文化評価票を作成し、そのデータを収集、分析し、医療安全向上のための活動に用いている。現在までに開発された評価票には、病院、療養施設、診療所を対象としたものがある。各評価票は職員を回答者とする自記式アンケート方式であり、それぞれ3領域、12カテゴリによって評価する構造を持ち、カテゴリは施設の役割を反映した構成になっている。日本の3病院での試行結果からは、当該評価票の日本での導入の可能性は高いと考えられるが、今後、その信頼性、妥当性について検討する必要があると考えられる。

原著
  • 中川 義章, 竹村 匡正, 吉原 博幸, 中川 義信
    2010 年 11 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     効率的な病院運営を行う上で経営状況の把握とともに他病院との比較は必須であり、容易な評価・比較方法が必要とされてきた。そこでわれわれは人件費に注目し、人件費をベースとした二種類の指標 RMP(Ratio of marginal profit after personnel cost per personnel cost)とRIP(Ratio of investment per personnel cost)を作成した。次いで両指標を用いて損益分岐点を示し分析可能とした。これらの指標を用い国立病院機構144病院の効率性の評価を試みた。この結果、2004年度RIP<RMPで黒字であった病院は急性期型73病院のうち47病院存在し、このうち最小のRMP値は0.31であった。一方RIPは黒字病院の約95%で0.6未満であり、RIPが0.6を越えた12病院のうち黒字であったのは3病院(25%)にすぎなかった。2008年度の黒字病院のうち、最小のRMPは0.35であった。一方慢性期型71病院の2008年度分析を行った結果、経営が黒字化する最低のRMP値が急性期型では0.35であったのに対し慢性期型病院では0.25であった。

     RIP、RMPを用いることで診療形態の異なる病院の評価が可能になると思われた。

事例報告
  • 佐藤 智太郎
    2010 年 11 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     最近の関節リウマチに対する抗 TNF-α抗体をはじめとする一連の生物学的製剤による治療は従来の概念を一変させるほどの効果を示すが、現在までその使用は一部のリウマチ専門施設に限られる傾向にあり、一般病院や診療所レベルでは副作用の懸念等から普及が遅れている。一部施設のリウマチ外来の混雑は激しくなり、遠方からの通院も患者にとって大きな負担である。これらの問題の解決のため、関節リウマチ循環型地域連携クリティカルパスを考案し、らくらくパス(RACRC-Path:Rheumatoid Arthritis Circulatory Regional Collaboration-Pathway)と名づけた。近隣医療機関を対象とした勉強会を開催し、連携医(かかりつけ医)を選定した。国立病院機構名古屋医療センター(以下、当院)での生物学的製剤導入後は連携医に紹介し、6ヶ月毎に当院を受診して治療効果の判定および副作用チェックを行っている。有害事象の出現に備えて、当院の救急外来や病棟での24時間365日対応の体制を整えた。最近では、連携医の要望によりメトトレキサートをはじめとした従来型の抗リウマチ薬にも使用を拡大した。2007年9月から2008年11月までに14医療機関の33名に本クリティカルパスを適用した。複雑になりつつある関節リウマチ治療や患者意識の高まりに対し、本クリティカルパスの使用により患者の予後の改善と安心を得られると考える。

  • 平澤 桂一, 松村 成宗, 茂木 学, 山田 智広, 武藤 伸洋, 金丸 直義, 下倉 健一朗, 阿部 匡伸, 森田 佳子, 葛󠄀西 圭子
    2010 年 11 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     入院患者のベッドからの転倒転落事故の予防は重要である。患者へのアセスメントやベッドセンサ等の対策を講じているにも関わらず、特に夜間、高齢者でインシデントが多く発生している。有効な転倒転落事故予防方法の検討を行うためには、実際に危険性のある患者が夜間どのような動作でベッドから起き上がっているか調査する必要がある。本研究では、赤外線カメラを用いて起き上がり映像を取得し、動作を分析した。被験者は都内の病院で同意が得られた70代から90代の高齢の入院患者5名である。

     具体的には、夜9時から翌朝8時までの映像について、患者5名で合計23日分を分析した。その結果、起き上がり動作の総数は299回で、うち端座位に至るものは128回であった。手すりの使用と長座位の有無、動作の順序に着目して分類すると、基本的な動作パターンは5種類に分類可能であった。また、起き上がり時に手すりを利用する割合は約8割であった。ベッドからの転倒転落事故を予防する手法として、手すりを把持することと長座位になったことを合わせて検知することが有効であると考えられる。

  • 山田 昌弘
    2010 年 11 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     2000年頃から大規模病院においても運用されてきた電子カルテシステムも、Operating System(以下、OSと略)のアップグレードやデータ量の増加に伴い、更新の時期になりつつある。その際問題となるのが旧システムからのデータの移行とカスタマイズされたシステムの変更である。

     今回われわれは異なるベンダー間でのシステムリプレースを行い、これに伴って約7年分(約1億件)のすべての電子カルテデータの移行に成功した。われわれの行ったデータ移行は、旧リレーショナルデータベース型の電子カルテから属性を含んだ形でXML(Extensible Markup Language)出力し、これを再変換して、新システムの中のXML文書データウェアハウス型データベースシステムに移行収容するものである。このデータベースシステムは新システムのオーダリングシステムとは独立し、生成されたすべての固定したデータを長期間保存するためのシステムであり、トラバース型アクセスを用いることによりデータが増加してもレスポンスの低下が少ない。

     このデータ移行に関しては、データの欠損や破損、データの変換処理、移行期間とシステム停止時間、移行データの検証、費用負担、プロジェクトマネジメント、将来に向けた標準化等、種々の問題が発生した。しかし、システムリプレースとそのデータ移行は、病院情報システム全体のシステム構築、標準化を考え直すきっかけとなった。

  • 南川 英明, 近藤 忠男, 折井 孝男
    2010 年 11 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     NTT 東日本関東病院では、2006年度の診療報酬改定に基づいて院外処方せんの後発医薬品への変更対応を2006年4月より可能とした。本研究では2006年4月から変更となった処方様式の院外処方せんの問題について検討した。調査期間は2006年4月から2008年3月までとした。調査結果より、調査期間中に後発医薬品へ変更された院外処方せん枚数は、全院外処方せん発行枚数(569,571枚)の0.39%(2,228枚)であった。月別の調査結果では、2006年3月が18枚/23,596枚であったが、徐々に増加して2008年3月は175枚/23,743枚であった。年齢層別では、50〜60代の年齢層で後発医薬品への変更割合が高かった。男女比は、男性が女性の3倍であった。診療科別では、循環器内科が20.4%(450枚)と一番多く、次いで糖尿病内分泌内科16.8%(372枚)、精神神経科が15.7%(346枚)の順であった。薬効分類別では、精神神経用剤が11.8%(500枚)、消化性潰瘍剤11%(468枚)、血圧降下剤11%(465枚)の順であった。また、後発医薬品へ変更したことによる薬価点数差は、平均で533点/枚であった。薬価差の大きい後発医薬品、投与日数の長期な処方になると、患者に経済的メリットが大きいことが考えられた。

  • 井上 ふみ子, 加茂 力, 岡田 みちよ, 鈴木 まち子
    2010 年 11 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     本邦の介護施設入所者の28.5%が嚥下障害を有する。嚥下障害は、地域医療の健康管理に重要な課題となっている。われわれは、地域住民と介護福祉施設および在宅医療介護スタッフに対して、嚥下障害患者に対する介護教育プログラム(以下研修プログラム)を提供した。本研究は、川崎北部地域において嚥下障害患者介護に関する基礎知識と考案した研修プログラムを評価することを目的とした。

     嚥下障害患者のための口腔ケア、嚥下食、食事介助に関する基礎的な技術を習得するための研修プログラムに看護師19名、介護福祉士17名、介護支援専門員8名および地域住民26名が参加した。研修プログラムの効果は講義前後に20問の質問アンケートを実施して評価した。

     講義前は4グループで食事介助の知識が低く、特に看護師を除く3グループで低かった。講義前の20問正答率は、グループ間で差はなく講義後は4グループとも改善した。講義後は全グループの正答率が有意に改善したが、地域住民の食事介助に関する正答率は他と比較し有意に低かった。嚥下食に関する講義前後の正答率はグループ間で差はなかった。口腔ケアに関する講義前後の正答率は地域住民において有意に改善した。食事介助に関しては、全グループにとって知識獲得に最も効果があった。嚥下障害患者介護において看護師や介護福祉士に比較して地域住民は最も基礎的な知識獲得となった。

     本研究により、提供した研修プログラムが嚥下障害患者介護の専門的な知識改善に有効であると考えられた。

紹介
  • 平井 有美, 藤本 俊一郎, 合田 雄二
    2010 年 11 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     クリティカルパスは医療の標準化、質の向上、経営基盤の確立に有用であるが、その適正な内容の確保のためにはバリアンス分析が必須である。当院では電子クリティカルパスでオールバリアンス方式でのバリアンス分析を試みたが、バリアンス登録が大変な業務であったために、十分な登録が得られなかった。そこで、センチネル方式の一つである退院時バリアンス収集法を採用し、臨床指標を中心とした退院時アウトカム評価登録システムを構築した。アウトカムを「共通アウトカム」と「クリティカルパス固有アウトカム」の二つに分類し、前者は全てのクリティカルパスで共通する「臨床アウトカム・QOLアウトカム・時間アウトカム・経済アウトカム」の4項目で構成し、後者は個々のクリティカルパスの特徴を反映した「クリティカルパス固有アウトカム」の項目で構成した。その結果、退院時にアウトカム評価登録が行われるようになり、クリティカルパス分析のためのデータ収集が可能となった。このシステムはまだ稼動を開始したところであるが、今後集積された各種評価指標を用いて医療の質の構成要素(構造・過程・成果)の分析を行い、クリティカルパスの改定を進めていきたい。

  • —転落防止柵の考案—
    會田 秀子, 小林 弘幸, 堀 賢, 李 慶湖, 川崎 志保理, 梁井 皎
    2010 年 11 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     集中治療室(ICU)でのベッド転落事故報道を機にA社ICUベッドの安全性を検証したところ、サイドレール(ベッド柵)の高さが足りないことが判明した。そこで転落防止対策としてサイドレール型柵とアクリル板柵の2種類を考案し、看護師の立場から検討した。サイドレール型は拘束感が強いがチューブアクセスが容易なためチューブ管理に有用であった。一方、アクリル板柵は透明性があり拘束感は少ないが、重たいため設置が不便であった。また、どちらの柵も高さを確保すると安全性が向上するが、医療者の利便性は低下した。今後、双方の利便性を兼ね備えた器具の開発が必要と考えられた。

  • 清川 哲志, 片渕 茂, 野村 一俊
    2010 年 11 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2010/05/01
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

     クリティカルパスを作成するときにどのような達成目標を挙げるべきか迷うことが多い。われわれは国立病院機構熊本医療センターにおいて使用されていた450種類のクリティカルパスから1,137種類の達成目標について内容を解析した。その結果1)患者所見、2)治療・検査・栄養、3)生活(活動・清潔)4)理解・自己管理、5)その他に分類することが可能であった。さらに、分類からクリティカルパスの作成を容易にするために用語集を作成した。

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