日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
Print ISSN : 1881-2503
ISSN-L : 1881-2503
11 巻 , 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 瀬戸 加奈子, 藤田 茂, 飯田 修平, 川島 周, 西澤 寛俊, 長谷川 友紀
    2010 年 11 巻 3 号 p. 171-178
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     近年、患者や患者関係者による病院職員に対する暴力行為が顕在化してきている。本研究では、病院における院内暴力の発生状況、内容別の頻度及び院内暴力に対する院内体制の整備状況等を検討した。

     社団法人全日本病院協会の全会員2248病院を対象に自記式質問紙調査を2007年12月から2008年1月に実施した。

     有効回答率は49.2%(1106/2248病院)であった。対象病院の52.1%(576病院)が過去1年間に6882件の職員に対する院内暴力を経験していた。原因者の86.9%は患者本人であった。また、院内暴力に対する組織的な管理体制の整備を行っている病院は1〜3割程度と少数であった。院内暴力を経験した病院では、そうでない病院に比較して院内体制の整備が進んでいるものの、職員の安全確保についての不安はむしろ高い傾向にあった。

     本研究の回収率は約5割にのぼり医療機関の院内暴力に対する関心の高さが窺える。 現状では組織的な管理体制の整備が十分行われておらず職員の安全確保のためにも早急な対策が必要と考えられる。今後、質の高い医療サービスの提供を円滑に進めるには、院内暴力を未然に防止するために、ガイドラインや報告制度の整備等を普及することが優先度の高い課題であると考えられる。

事例報告
  • 須田 喜久夫, 石丸 純夫
    2010 年 11 巻 3 号 p. 179-183
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     地域の医療連携を円滑にすすめていくには草の根的なネットワークの存在が重要であり、多職種間の交流の機会が多いほど、脳卒中治療においては診療システムが構築されやすい。首都に隣接した地方中核都市型の医療圏をもつ済生会川口総合病院では、2008年2月に作成され、埼玉県のほぼ全域で使用が認可された脳卒中地域連携クリティカルパス(医療者用)をもとに、2008年4月より運用を開始した。川口地区に存在する計画管理病院は当院を含め4病院となるが、各病院間で運用状況が異なっているため、2009年3月まで(2008年度)の当院での運用状況を中心に適用に関する様々な問題点を検討した。その結果、維持期を担う診療所や療養型病院などに対するクリティカルパスの普及がシステム上困難であること、年3回開催される情報交換会の規模が徐々に増し、意見を集約しづらいなどの課題が浮き彫りにされた。

  • −退院を規制する因子と退院調整業務を円滑にする新しい試み−
    上田 奈々, 森本 保, 山本 初実
    2010 年 11 巻 3 号 p. 184-188
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     三重中央医療センターは2008年4月、地域連携総合相談支援センターに退院調整看護師を配置した。退院支援のフローチャートを作成し、各部門へのフィードバックのため月刊活動報告広報誌を発行している。退院調整の妨げになる要因を2008年4月から2009年3月の間で退院調整看護師が介入した患者104名を対象に、退院調整活動の評価として、支援開始日・介入期間・在院日数を評価指標とし、患者背景因子(疾患、年齢、退院先、医療ケアとしての人工呼吸管理、気管切開、膀胱カテーテル留置、胃瘻、経管栄養の有無)から調べた。

     支援開始日数は、膀胱カテーテル留置群で有意に長く、介入期間は、人工呼吸管理、気管切開、胃瘻、経管栄養が必要な群で有意に長かった。さらに、気管切開、膀胱カテーテル留置、胃瘻、経管栄養の必要な群では在院日数も有意に長かった。重回帰分析では、支援開始日は膀胱カテーテル留置、介入期間は人工呼吸管理・胃瘻、在院日数は膀胱カテーテル留置がそれぞれ退院調整の妨げになる要因として検出された。この結果をもとに、急性期治療中から支援を開始できるよう退院調整スクリーニングシートを考案した。

     急性期離脱後も継続した医療ケアが必要な症例の在院日数を短縮させるためには、退院後の医療ケアを依頼する近隣医療機関との連携を強化することが重要である。今後、当医療圏において継続した医療が実践できるよう、組織的で効率的な退院調整活動に取り組んでいきたい。

  • 島ノ江 千里, 持永 早希子, 平野 和裕, 中野 行孝, 藤戸 博
    2010 年 11 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     外来がん化学療法を安全に実施するには、保険薬局の薬剤師を含めた地域全体の医療スタッフによる疾病管理が重要である。今回、「がん化学療法研修会」に参加した薬剤師202名(薬局薬剤師137名、病院薬剤師61名、その他4名)を対象に外来がん化学療法患者への服薬指導上の問題点や薬剤師による患者への支援の重要性、外来がん化学療法に関する知識の自己評価についてアンケート調査を行い地域薬剤師における問題点を検討した。

     今回の調査の結果、 薬剤師が在宅がん患者に行う支援において、病院薬剤師と薬局薬剤師は共通の役割意識と問題意識を持っており、がん患者への服薬指導時の問題として薬局薬剤師の71.1%と病院薬剤師の51.1%が自分自身の知識不足をあげ、さらに薬局薬剤師では患者情報の不足を服薬指導時の問題点とあげている者が多かった。また、外来がん化学療法に関する知識の自己評価は、外来がん化学療法患者への服薬指導の経験や勤務年数の長さによって高くなっていたが、服薬指導経験がある群と勤務年数が10年以上の群で病院薬剤師と薬局薬剤師の自己評価の得点には有意な差がみられた。

     在宅がん患者の支援を地域で円滑に行うには、地域薬剤師の質の確保が重要であり、職場環境の違いによる問題を回避するために、地域連携クリティカルパスなどのツールを用いて、施設内外の薬剤師の役割や情報を明確にし、ガイドラインの作成や研修会により地域薬剤師のスキルの標準化を行っていくことが重要である。

  • 清水 幸雄, 岡澤 美貴子, 折井 孝男
    2010 年 11 巻 3 号 p. 196-200
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     抗がん剤を用いたがん化学療法は、効果の反面、副作用の出現が治療の継続に支障をきたす場合がある。抗がん剤投与により誘発される骨髄抑制は抗がん剤の用量規制因子であるため、がん化学療法は血球減少に伴う合併症予防と対策を念頭において施行されなければならない。

     本研究は、東京大学医学部附属病院におけるがん化学療法施行患者への顆粒球コロニー形成刺激因子製剤(granulocyte-colony stimulating factor:G-CSF)使用状況を調査するとともに、米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)のG-CSF使用ガイドライン(2006)の適用状況について検討した。対象患者は2006年4月1日から2006年4月14日までにがん化学療法を行った入院患者125例であり、このうちG-CSFが投与された患者は27例(22%)、G-CSFが投与されなかった患者は98例(78%)であった。G-CSFを投与された患者27例中11例(40.7%)はASCOガイドラインのG-CSF投与基準を満たし、16例(59.3%)は満たしていなかった。G-CSFを投与されなかった患者98例中94例(95.9%)はASCOガイドラインの G-CSF 投与基準を満たし、4例(4.1%)は満たしていなかった。本研究により、G-CSF が過剰に予防投与されている可能性が示唆された。

  • 栗原 綾子, 田隝 博樹, 上島 健太郎, 井上 忠夫
    2010 年 11 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     血液凝固に影響を与える薬剤(ACD:anti-coagulation drug)を服用中の患者が安全に検査・手術を受けるには、薬剤の適切な休薬が必要である。

     近年、多くのジェネリック薬が発売されており、他の医療機関での処方薬剤のチェックでは薬剤師の介入が不可欠である。

     国際医療福祉大学三田病院脊椎・脊髄センターにおける患者服用薬チェック業務は、検査・手術の入院が決定したら、外来受診の際に薬剤師がACDの鑑別と休薬期間の指導を行っている。

     今回、2009年1〜3月の3ヶ月間に脊椎・脊髄センターで検査・手術入院した患者を対象とし、薬剤師による患者服用薬チェック業務の実績調査を行った。対象患者は283名(平均年齢:60.7歳)、その内ACDを服用している患者は121名(平均年齢:69.2歳)で服用率は42.8%であった。本調査期間におけるACDの服用ミスによる検査・手術の延期や中止は1例もなく、薬剤師によるACDの患者服用薬チェック業務の意義が高いことが改めて確認できた。

紹介
  • 平井 有美, 池内 亜紀, 高田 有美, 藤本 俊一郎
    2010 年 11 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2018/12/14
    ジャーナル フリー

     香川シームレスケア研究会で使用している情報共有ファイルとしての「私の診療記録」の実際の運用について報告した。「私の診療記録」は患者が提供された自身の医療および介護情報を集積するためのファイルである。情報の内容は、入院診療計画書、疾患および治療説明書、各種同意書、地域連携のオーバービュークリティカルパス、患者用クリティカルパス、看護計画、検査結果、服薬指導、 介護保険の資料・ケアプラン、在宅での記録、調剤薬局からの薬剤情報などである。現在は脳卒中・大腿骨近位部骨折で使用しており、急性期・回復期・維持期・在宅の医療者間の情報共有ファイルとして有用である。今後は運用の対象をがん地域医療連携へも拡大していきたい。

feedback
Top