日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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12 巻 , 3 号
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原著
  • 芳賀 香代子, 松本 邦愛, 北澤 健文, 伊藤 慎也, 長谷川 敏彦, 長谷川 友紀
    原稿種別: 原著
    2011 年 12 巻 3 号 p. 134-139
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     外科医師の不足の問題は近年、小児科・産科医師不足と並んで大きな関心を集めている。しかし、その現状について数量的・包括的に明らかにした研究はそれほど多くない。本研究は官庁統計を用いて、現在外科に起きている医師不足の問題を、需要の将来推計を含めて検討することを目的とする。現在、外科医師は、実数として減少しており、特に男性医師の減少が大きい。一方の需要は高齢化に伴い増大している。しかし、需要の増大は2020年前後にはピークアウトすると推計される。外科医師不足の解決のためには、養成に長時間を要することを考慮すると、医師総量としての増加を図るよりも、即効性のある労働環境の改善、医療システムの再構築が有効であると考えられる。

  • 笠原 康代, 島崎 敢, 石田 敏郎
    原稿種別: 原著
    2011 年 12 巻 3 号 p. 140-147
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     本研究は、内服与薬業務を遂行する看護師の行動特性について検討することを目的とした。われわれは66項目から成る調査紙を国内56病院の一般病棟で働く3,319名の看護師に配布し、1,638名から有効回答を得た。

     誤薬あり群となし群で評価得点に有意差のみられた37項目を用いて因子分析を行った結果、“情報活用”、“連携”、“業務調整・知識獲得”の3因子が抽出された。そして、誤薬頻度と経験年数を独立変数として、因子得点を分散分析によって比較した。結果、“情報活用”と“業務調整・知識獲得”では、誤薬3回以上の群が他の群よりも有意に低かった。このことから、誤薬の少ない看護師は多い看護師よりも患者状態や薬剤情報を積極的に活用し、安全に与薬が遂行できるよう意識して業務調整を行い、また安全のための知識や技術に関する最新情報を積極的に補完していることが示唆された。“連携”では、誤薬3回以上の群において、中堅看護師が若年看護師や熟練看護師よりも有意に高かった。このことから、若年看護師や熟練看護師は他のスタッフと積極的に連携をとっていないために誤薬を犯し、中堅看護師は積極的に連携をとっているにもかかわらず誤薬を犯してしまう傾向のあることが示唆された。

事例報告
  • 香川 惠造
    原稿種別: 事例報告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 148-155
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     地方の医療は、高齢者の人口比率が高く、医療従事者の都市部への偏在があり、医療提供体制は深刻な状況にある。

     このような中で、地域医療を守るためには諸課題を戦略的に克服していく必要がある。第一には、地域基幹病院が医療従事者にとり魅力的なマグネットホスピタル、教育力のある病院へと進化することが求められる。また、臨床的に守備範囲の広いジェネラリスト—総合診療医—の育成に取り組む必要がある。同時に、院内保育所をはじめ働きやすい労働環境の整備や再就職支援など女性医療者を支援する基盤整備が必要である。第二には、医療を支える地域力である。コンビニ受診を抑制するなど地域をあげて医療を守る文化の醸成である。第三はチーム医療・医療連携の推進である。病院の中ではチーム医療を推進し、質の高い医療を提供する。地域においては全域をチームと見なして各医療機関、介護施設などが機能に応じた役割分担をし、シームレスな連携に努める。また、地域連携クリティカルパスの普及を推進し、地域における医療の標準化、医療情報の透明化につとめる。結果として、患者中心の医療体制が構築できると考える。

     本稿では、市立福知山市民病院の概要ならびにマネジメントの手法を用いた地域での取り組みについて最近の動向を紹介する。

  • 原田 浩二, 森山 美知子, 百田 武司, 長束 一行, 大森 豊緑
    原稿種別: 事例報告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 156-160
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     心筋梗塞の再発予防に関する患者教育の実態を明らかにするために、広島県と大阪府豊能医療圏における病院及び診療所に対して郵送による質問紙調査を行った。調査期間は2010年1月〜3月、質問紙配布数は病院157施設、診療所395施設、病院の有効回答数は31部(有効回答率19.7%)、診療所は168部(有効回答率42.5%)であった。

     地域連携クリティカルパスの使用は病院16.1%、診療所14.3%、患者教育実施率は病棟74.2%、病院外来61.3%、診療所59.5%であり、専門スタッフの配置割合は病院よりも診療所が低く、病院では管理栄養士による食事療法、薬剤師による服薬指導、看護師による糖尿病管理の教育が特徴であった。診療所は医師による教育が多く、教育時間は5〜10分程度であった。

     病院では在院日数が短く、かかりつけ医に患者をもどすことから包括的な患者教育の実施は少なく、一方診療所では専門スタッフの配置が少なく、医師の診察中による短時間の教育にとどまる状況をみると、再発・重症化予防に向けた教育プログラムが組み込まれた、病診連携を推進する地域連携クリティカルパスの運用が重要で、これにアウトカム評価指標を導入した、医療機関と医療保険者、疾病管理会社等との連携による新たな再発予防システムの構築が必要と考える。

  • 藤本 俊一郎, 平下 浩司, 渡辺 信之, 平松 匡文, 河内 雅章, 宮本 真和, 井上 秀幸, 池上 英文, 森 譲二, 平井 有美
    原稿種別: 事例報告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     抗血栓薬の休薬・周術期対応・再開の院内標準化を図ることを目的に「抗血栓薬の周術期管理指針」を作成した。標準化は1)指針による多職種の業務の明確化と、2)多職種間での情報共有化を可能とする病院情報システムの改善で行った。指針は(1)治療科・処方科・薬剤部・看護部など、多職種での対応の標準化に用いる指針、(2)治療科としての対応に用いる抗血栓薬休薬同意書、(3)抗凝固薬内服患者における緊急手術指針、(4)処方科としての対応に用いる抗血栓薬休薬に伴うリスク説明書、で構成した。

     運用面では病院情報システム(電子カルテ・電子クリティカルパス)機能を活用することで、多職種間での情報の共有化が図れるよう設定した。

     現在、指針の活用は円滑であり、安全性の確保に有用であると思われる。しかし、血栓性イベント発症のリスクの低減のためには治療医・処方医が個々の患者の状態を分析し、患者と休薬の必要性とリスクについて十分に話し合い、合意を得て、方針を決定することが求められる。

  • 原 司, 濃沼 政美, 中村 均, 吉柳 富次郎, 増本 陽秀
    原稿種別: 事例報告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     治験実施医療機関において、契約した治験の速やかな遂行、すなわち「治験のスピードアップ」は大きな課題である。治験薬搬入日から治験契約終了日までの日数に対する治験薬搬入日から最終被験者組入れ日までの日数の割合(以下、被験者組入れに関するリードタイム率と定義)が治験のスピードを表わす。

     飯塚病院で2003年度から2007年度の間に契約した第III相臨床試験のうち、2008年3月までに終了した治験18件のプロトコールから被験者組入れに関するリードタイム率に影響する治験プロトコールの5因子(選択基準数、除外基準数、検査項目数、治験期間(日数)、治験薬剤形)からなる回帰式:被験者組入れに関するリードタイム率(%)=1.80×選択基準数−1.23×除外基準数−2.16×検査項目数−0.08×治験期間(日数)+剤形ダミー(内・外用剤:5.45/注射剤:−5.45)+68.56を導いた。これら5因子についてF検定でp値を求めたところ、被験者組入れに関するリードタイム率を小さくする条件は、選択基準数が少なく、除外基準数が多く、治験期間(日数)が長く、注射剤であることが判明した。また、新規契約プロトコールの5因子を得られた回帰式に代入することにより、当該治験の被験者組入れに関するリードタイム率を治験契約時に予測することが可能となった。

  • 真鍋 健一
    原稿種別: 事例報告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     九州内28国立病院機構病院において、2008年4月より薬剤管理指導およびがん化学療法の充実のために9病院で薬剤師数が増加し、そのうち2病院で薬剤師の病棟常駐が試みられた。そこで病棟常駐の効果について、経済的効果として薬剤管理指導件数、がん化学療法の無菌製剤処理件数、医療の質的効果として持参薬調査件数、プレアボイド報告件数を指標に、その推移を検討した。まず2病院における病棟常駐前後の比較を行い、次に病棟常駐を行っていない病院との比較を行った。病棟常駐を行った2病院では、2008年3月以前と比べて薬剤管理指導件数(p<0.0001)、持参薬調査件数(p<0.00001)が有意に増加した。1病院ではプレアボイド報告件数が大きく増加(p<0.00001)した。病棟常駐を行っていない病院の、薬剤管理指導件数や無菌製剤処理件数、持参薬調査件数、プレアボイド報告件数に増減の一定の傾向を見出せなかった。薬剤師の病棟常駐は、薬剤管理指導件数の増加という経済的効果と持参薬調査件数やプレアボイド報告件数の増加に見られる質的効果に大きく寄与することが明らかとなった。

  • 櫻井 秀彦, 恩田 光子, 伊藤 一, 早瀬 幸俊
    原稿種別: 事例報告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 177-185
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     保険薬局に勤務する薬剤師と事務職の組織ならびに職務に関する意識を調査し、それらの因子構造と因子間の関連性を検討することにより、薬局の組織有効性に影響を与える要因を明らかにする目的で調査研究を行った。

     関西を中心に店舗展開している薬局に勤務する薬剤師と事務職全員を対象に、自記式調査票を配付し回答を求めた。組織や職務に対する意識に関する27の質問項目について、薬局スタッフ409名分(薬剤師257名、事務職152名)の回答を用いて因子分析を行い、共分散構造分析による多母集団同時分析を実施し、各因子間の関連性について職種間で検証した。

     因子分析の結果、『理念・経営方針』、『管理姿勢』、『職場の雰囲気』、『組織への評価』、『自身の職務への評価』と解釈できる5因子が抽出された。

     『組織への評価』と『自身の職務への評価』に『理念・経営方針』、『管理姿勢』、『職場の雰囲気』が影響する仮説モデルを検討したところ、薬剤師では『理念・経営方針』が、事務職では『職場の雰囲気』が、他の因子への影響や相関が相対的に高いことが示された。

     本結果からは、組織や自身の職務への評価を高めるためには、薬剤師においては薬局の理念・経営方針の浸透や共感が重要であり、事務職においては職場の雰囲気が重要であるなど、職種により異なった関連性が明らかとなり、保険薬局における人的マネジメントにおいて有用な示唆が得られた。

報告
  • 渡辺 明良
    原稿種別: 報 告
    2011 年 12 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     日本医療マネジメント学会に設置されている原価計算委員会では、病院原価計算の今日的課題について整理・検討が行われてきた。そこでは、原価計算の目的が不明確であることや、原価の定義や範囲があいまいなことなどを起因とする、間違った記述や議論の齟齬が生じていることがあげられた。

     そこで、当委員会として病院原価計算手法に関する提言が必要との認識のもと、これらの課題についての整理と検討を行った。その結果、病院原価計算の目的に対応した原価対象や原価範囲を設定する必要性があることが考えられる。

     特に、病院会計準則に基づく総原価を「医療原価」や「医業管理費」のように区分し、定義したうえで病院原価計算を実施することで、当学会の学会発表や論文において散見される、原価計算に言及する際の理解の齟齬や誤解の減少が期待される。

紹介
  • 奥村 幸光, 山内 智子
    原稿種別: 紹介
    2011 年 12 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     名古屋掖済会病院では2002年より医療情報連携システム(エキサイネット)運用を開始し継続している。今後、より広く効果的にシステムが活用されることにより、地域医療連携に貢献しかつ患者サービスが向上することを目的としている。エキサイネットを介して閲覧できる医療情報は、診療予約、検査予約、空床状況、オーダー情報(病名、投薬・注射・検査・処置)、検査結果、診療録、観察項目、DICOM 画像、所見レポート、ストリーミング映像、など重要な個人情報である。特に異なる診療所・病院間で医療情報を共有する時、組織母体の違いによる障害やセキュリティ対策に取り組むことが、地域完結型医療を推進する上でもっとも重要事項である。これまで様々な通信方式を試してきた結果、PKI〈Public Key Infrastructure〉-USB、SSL-VPN〈Secure Socket Layer Virtual Private Network〉方式がコスト面と信頼性において優れ、本システムのセキュリティ面を支える重要な因子である。現段階でも地域連携クリティカルパスを円滑に運用していく上で多くの障害を抱えているが、本システムはその障害を克服するための有効な手段と考える。

  • 松本 邦愛, 瀬戸 加奈子, 長谷川 友紀
    原稿種別: 紹介
    2011 年 12 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 2011/12/01
    公開日: 2020/06/12
    ジャーナル フリー

     経済連携協定(Economic Partnership Agreement:EPA)は関税の引き下げを中心とした国際貿易上の協定であり、看護師・介護福祉士の移動に関する取り決めはその一部分をなす。現在のEPAを通じた日本の看護師・介護福祉士受け入れ規模は、諸外国と比べて小さく日本国内の労働市場にはほとんど影響を与えないと考えられる。しかし、送り出し国の多くは、将来の高齢社会に備えた看護・介護技術の習得を目的の一つとしており、EPA を通じた移動に一定の意味がある。日本は将来、看護師・介護福祉士が不足すると考えられており、将来の本格的受け入れの是非を検討することが求められている。受け入れ国、送り出し国双方の利益となるよう、国民的な議論を早急に始める必要があるだろう。

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