日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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13 巻 , 4 号
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総説
  • 江口 勝美
    原稿種別: 総説
    2013 年 13 巻 4 号 p. 175-179
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     佐世保・県北医療圏は人口が減少し、少子化が進行し、高齢者の増加が既に始まっている。今後、高齢者・超高齢者の増加と相まって、独居老人、認知症、多疾病を保有する高齢者が増え、地域医療にとって重要な課題となる。

     佐世保市立総合病院はこれからの諸課題を戦略的に克服していくことを念頭に運営している。第一には安全・安心且つ高度先進医療の提供である。地域医療支援病院として地域の診療所・病院と連携しながら、地域完結型医療の具現に努力している。本院でも「あじさいネット」を開始して、将来は診療支援機能だけでなく、病薬連携、病々連携、離島支援・救急医療支援システムの構築などと拡大していく計画である。また、本院は救命救急センターを開設し、救急医療の核として、小児・周産期救急患者、離島・へき地の救急患者の最後の砦として稼働することを目指している。

     第二は優れた医療人の育成、最高の人材が広く集まる病院を目標に掲げている。医師・看護師など医療人不足は深刻である。本院は地域医療研修センターを組織し、初期・後期研修医だけでなく、看護師、技局、事務部の医療に対する質の向上を目指している。

     第三は地域医療の質の向上への貢献である。地域完結型医療を遂行していくには、地域全体の医療の質の向上が必須である。本院を含め基幹病院が介護・在宅まで継ぎ目のない医療の提供を可能にするようにしなければならない。

     第四は経営基盤の安定した病院である。自治体病院といえども、安定した経営基盤があってこそ、良質な医療が提供できると考えている。

原著
  • 川本 俊治, 松田 守弘, 田村 律, 渡辺 弘司
    原稿種別: 原著
    2013 年 13 巻 4 号 p. 180-184
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     虚血性心疾患・地域連携クリティカルパス(LCP/CAD)の普及がかかりつけ医の心疾患再発予防の患者教育に変化をもたらすかを明らかにする。

     国立病院機構呉医療センターではLCP/CADを2007年より呉市医師会員施設宛に280名、80施設に紹介した。今回、内科を標榜している呉市医師会員235名に記名式アンケートを実施し、79件(33.2%)から回収を得た。かかりつけ医は脂質・糖代謝の管理目標値指導、血圧や脈拍測定指導、薬の副作用指導においては高い指導率を示した。一方、飽和脂肪酸摂取制限、体重測定、カリウム摂取、魚介類摂取の指導は低値であった。LCP/CAD経験例数5例以上では脂質代謝・糖代謝の目標値指導(p=0.01)、飽和脂肪酸制限指導(p=0.02)、ω3系脂肪酸摂取指導(p=0.01)、仕事量の調節(p=0.03)の指導に差を認めた。LCP/CAD経験5例以上群では LCP/CAD が診療や患者指導に有効で(p=0.05)、管理目標値が適切と評価した(p=0.03)。

     LCP/CADを5例以上経験するとかかりつけ医から患者への生活習慣改善指導が充実する。

事例報告
  • α-グルコシダーゼ阻害薬の朝食直前薬の無投薬
    大沢 幸嗣, 本間 佳子, 松元 俊
    原稿種別: 事例報告
    2013 年 13 巻 4 号 p. 185-188
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     医療事故削減には、その施設の報告を詳細に解析する必要がある。2008年度の東京逓信病院における薬に関するインシデントでは内服薬の与薬忘れ(無投薬)が最も多かった。無投薬で最も頻度が高かったのはα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の朝食直前投与であった。このα-GIの朝食直前投与の無投薬に関するインシデントは看護師の経験年数に依存しておらず、看護師全般の朝食直前に投与すべき薬に対する認識の低さが考えられた。

     そこで、α-GIの朝食直前投与の無投薬の予防対策として、2009年4月から看護師全員を対象にα-GIの適正使用に関する情報提供を行った。

     その結果、α-GIの朝食直前薬の無投薬に関するインシデント数は2008年度に対し、2009年度では90.7%減、2010年度では94.4%減であった。

     このことから、医療事故の対策にはその施設の報告を詳細に解析し、看護師に協力を得ることが非常に有用であることが示唆された。

  • 松本 恵, 桑村 恒夫, 矢川 結香, 赤松 孝
    原稿種別: 事例報告
    2013 年 13 巻 4 号 p. 189-193
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     プレアボイドとは、薬剤師が薬物療法に関連した患者の不利益を回避もしくは軽減した事例のことである。プレアボイド事例の集積・共有は、医薬品の適正使用や医療安全の観点から重要である。九州厚生年金病院では、これまでプレアボイドを実施してきたが、それぞれの薬剤師が個人的に行っていたため、その事例に関する情報共有ができていなかった。そのため、プレアボイドの事例報告を習慣的に実施し、薬剤部内でその情報を共有するシステムの構築を試みた。

     プレアボイドの事例報告を継続的に実施できるよう薬剤師にアンケートを実施し、報告に係わる負担を軽減するよう運用の検討を行った。2010年6月から12月までのプレアボイド報告件数は129件であった。業務別では薬剤管理指導業務92件、調剤業務33件、回診4件であり、介入の内容は腎機能低下時における過量投与が30件、相互作用・併用禁忌が16件、持参薬から当院処方への切り替え間違いが12件、副作用の早期発見が7件などであった。収集された事例は薬剤師全員にその事例を定期的に報告し、特に重要なものについては院内全体へ周知を行った。

     今回の取り組みにより、すべての薬剤師が調査期間中に事例報告を実施していた。これより効率的なプレアボイドを実施し、その情報を共有するためのシステムを構築することができた。

  • 吉永 拓真
    原稿種別: 事例報告
    2013 年 13 巻 4 号 p. 194-197
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     南風病院は、2006年4月よりDPC(Diagnosis Procedure Combination)対象病院となった。以来、日々膨大なデータが蓄積されている。また既存の病院情報システムに関しても、多種多様なデータが蓄積されている。これらは病院にとって貴重な資源であり、その資源を活用することでの情報提供を検討した。

     視点としては、臨床現場スタッフが現状を把握することができ、さらに改善点まで抽出することができるようアウトプット内容を検討した。診療行為プロセスの可視化を試みた結果、胃の悪性腫瘍・胃切除術あり・副傷病なし症例(DPCコード:060020xx01x0xx)において、評価前、評価後で手術前日数に短縮が図られ、平均在院日数に関しては有意に改善傾向がみられた。また手術室の稼動状況の可視化を試みた結果、午前中での手術室稼動率が高くなり、10時時点での手術室稼動状況については全ての曜日において改善傾向がみられた。客観的な評価、具体的な議論がなされた結果、患者満足の視点、職員満足の視点、健全経営の視点とともに良好な結果となった。

  • 原 司, 増本 陽秀, 濃沼 政美, 吉柳 富次郎, 中村 均
    原稿種別: 事例報告
    2013 年 13 巻 4 号 p. 198-202
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     治験実施医療機関において「治験実施率の向上」は大きな課題である。飯塚病院で2003年度から5年間に契約し、2008年3月までに治験実施率の確定した外来患者を対象とする治験38件のプロトコールを回帰分析することにより、治験プロトコール因子の選択基準数、治験期間(日)、検査項目数が治験実施率に影響することが明らかとなった(ロジスティック回帰式:p=0.0048,R=0.2456,ROC曲線下面積0.82)。3因子のパラメータについて尤度比検定でp値を求めたところ過去の一定期間で確定した治験実施率の中央値以上とする条件は、選択基準数が少なく、治験期間(日)が長く、検査項目数が多いことであることが判明した。また、検査項目内容は治験実施率に影響しないことも判明した(分散分析)。治験プロトコール因子の選択基準数、治験期間(日)、検査項目数を回帰式に代入することにより、契約治験の実施率が過去の治験実施率の中央値以上かどうかを治験契約時に予測することが可能となった(正判別率83.3%)。治験契約時に治験実施率を予測することは、治験実施管理において有用であると考える。

紹介
  • 宮原 貴子, 桜井 祐人, 岩出 和徳, 吉安 美和子, 佐久間 優子, 小松 達司
    原稿種別: 紹介
    2013 年 13 巻 4 号 p. 203-207
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     国立病院機構横浜医療センターでは2010年4月の新病棟移転を機会に、電子カルテをはじめ各部門システムからなる「診療情報システム」が導入された。診療業務の全面電子化に伴い、治験業務も電子カルテと連動する「治験管理システム」を導入し、このシステムを中心に「診療情報システム」の利点を生かし、治験診療を、日常診療と差異なく行っている。

     入院患者を対象にした治験(以下、入院治験)では、外来での治験の様に常に治験コーディネーター(以下、CRC)が関わることは困難であり、入院治験は各関係部署のスタッフが治験の実施内容を把握しにくいという問題点があった。そこで、入院治験実施にあたり、電子カルテシステムの機能である診療クリティカルパスに外来治験で活用している治験管理システムの利点を統合した入院治験クリティカルパスを構築した。これにより、CRC不在時でも治験関連病棟スタッフおよび関係部署への情報伝達・共有が円滑に行われ、質の高い治験が実施可能になった。

  • 抗MRSA補助薬の有効性に関する文献的考察
    入口 慎史, 今井 徹, 折井 孝男
    原稿種別: 紹介
    2013 年 13 巻 4 号 p. 208-214
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

     我が国ではMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症が院内感染で大きな問題となっている。MRSA感染症においては難治症例が多数存在し、抗MRSA薬に加え、リファンピシン(RFP)やトリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST合剤)が併用される。そこで、PubMedおよび医学中央雑誌(医中誌)にて文献調査を行い、敗血症・肺炎に対するRFP、ST合剤の有効性について検討した。敗血症に対するRFPの有効性についてはランダム化比較試験(RCT)が1件、症例対象研究が1件あった。いずれの試験においても、有効率に統計学的な有意差が認められなかったが、多くの症例報告では著効が報告されていた。また、肺炎に対するRFPの有効性についてはRCTが1件あり、臨床的著効率はRFP併用群とVCM単独群では併用群の方が有意に優れていた。一方、敗血症、肺炎に対するST合剤の有効性を示す報告は少なく、エビデンスは限られていた。以上の結果より、敗血症、肺炎へのRFPの併用について、難治症例の治療の選択肢の1つとなることが示唆された。

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