日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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13 巻 , 1 号
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原著
  • 松本 邦愛, 芳賀 香代子, 花岡 晋平, 北澤 健文, 長谷川 友紀
    原稿種別: 原著
    2012 年 13 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2012/06/01
    公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

     がんはわが国の死因の第一位であり、その社会的負担も大きい。本研究は、主要な9部位のがんの社会的負担を Cost of illness 法を用いて推計し、1996年、2002年、2008年の変化を明らかにした。胃がん、肝臓がんの疾病負担は相対的にも絶対的にも減少し、乳がん、子宮がん、肺がんなどは疾病負担が増加した。これらの変化の背景には、患者数や死亡者数の変化だけではなく、平均在院日数の変化、平均死亡年齢の高齢化などの影響が大きいことが明らかになった。がん対策の政策決定では、このような疾病負担、およびその変化についても考慮されることが望ましい。

事例報告
  • 小川 優美, 佐藤 真由美, 神川 康也
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2012/06/01
    公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

     帝京大学ちば総合医療センターの地域連携クリティカルパス(以下連携パス)の特徴は、受傷前屋外移動能力と認知機能により連携パスを分類し、治療期間や退院基準を設定していることである。屋外手放し歩行自立群をA、屋外補助具歩行自立群をB 、屋外移動監視または介助群をCとし、認知症症例にはCが適応される。連携パスの対象となった86例(A 34例、B 25例、C 27例)の治療期間のバリアンス分析と転帰について調査した。バリアンス発生率は A 47%、B 60%、C 22%であった。バリアンス要因はA・B共に荷重制限や既往症などの患者要因が最も多く、次に介護力不足や在宅設備の遅れなどの社会的要因であり、Cは患者要因のみであった。退院時屋外歩行自立獲得率は A 65%、B 40%、C 7%、自宅復帰率は A 88%、B 84%、C 63%であり、屋外歩行が自立していなくても自宅退院できることが示唆された。またCでも自宅退院しており、 受傷前の身体精神機能に対する家族の理解力や介護力、家屋環境などの環境因子が促進因子として関与したと考える。目標治療期間と移動における退院基準の妥当性は乏しかったが、受傷前屋外移動能力・認知機能により連携パスを層別化することは、治療期間や退院時の歩行能力を予測し、患者・家族を含めチーム全体で情報を共有することで包括的な支援を可能にするという点で有効である。

  • 上條 由美, 的場 匡亮, 小市 佳代子, 柴田 雅子, 椎葉 典子
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2012/06/01
    公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

     医療機関において、事故防止対策への取り組みは、必須事項となっている。昭和大学病院では、個々の附属病院が独自にインシデントレポートや事故報告書等の様式を定め、医療事故の防止に努めてきたが、附属病院間での詳細な比較は、充分にはおこなわれていなかった。そこで、2010年1月から12月までの当学の4つの附属病院A〜D病院において報告されたインシデント・アクシデントレポート11,171件について、病院間の相違を検証した。

     各病院のインシデント・アクシデントレポートの件数は、A病院4,304件、B病院1,975件、C病院4,331件、D病院562件だった。報告レベルに関しては、全ての病院で、レベル2までが80%以上、レベル3aまでが90%以上だった。行為別事象としては、AからDすべての病院で、誤薬・誤注射といった薬品に関するものが一番多く、続いて転倒・転落、ルート・チューブだった。これらの三大事象のそれぞれの割合は、各病院によって異なっている。職種別の報告では、全ての病院で看護師からの報告が最も多く、全体の80%以上を占めている。医師からの報告は少なく、全ての病院で全体の6%に過ぎなかった。インシデント・アクシデント報告形式は、病院によって相違がある。今後は、分類基準やフォーマットを統一して、全附属病院が統一したレポート様式を使用することにより、情報の共有化を図り、より効率的で有効な医療事故予防対策を検討していく必要があると思われる。

  • 嶋崎 明美
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2012/06/01
    公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

     患者の不安・不満を軽減する方法を検討するため、急性期病院において退院支援を受けた、あるいは長期に入院した423患者・家族に質問紙調査を行った(回答率44.4%)。調査は、退院の話が出てから退院するまでの期間の満足(「退院満足」)を、入院全経過についての満足(「入院満足」)と区別して行った。患者・家族は治療・予後と退院後生活に不安を示し、入院期間の長さ・職員の対応・治療効果に不満を持っていた。

     50.4%の回答者が、医療者との関わりによって、不安軽減と現状認識ができる「心理変化」を生じていた。「心理変化」の有無はχ検定で、相談相手が医師であることと、患者が相談相手の対応に満足すること(「対応満足」)に有意に関係していた。一方、退院を支援する地域医療連携室の職員に相談した場合は、「心理変化」と相関せずに「対応満足」と相関し、「心理変化」・「対応満足」・「退院満足」・「入院満足」の間には互いに有意な正の相関があった。重回帰分析では、「退院満足」には「心理変化」と「対応満足」が有意な影響を与え、「入院満足」には「対応満足」のみが有意に影響したことから、「心理変化」と「対応満足」は患者満足に関わる別々の要因と考えるのが適切であると示唆された。

     治療結果の満足を必ずしも与えられない医療における患者満足には、医療者との関わりがもたらす患者・家族の手続き的公正感が大きな役割を果たすと考える。

  • —信頼関係の再構築のために—
    林 里都子
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2012/06/01
    公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

     医療における苦情・クレームのより満足のいく解決のために、対話による合意を目指す医療メディエーションの普及が期待されている。それに応えるべく、研修を通してその理論と技法に関する教育が最近開始された。その中で苦情・クレーム対応に必要とされるイシュー、ポジション、インタレストの抽出、すなわちIPI(issue, position and interest)分析が難しいと受け止められているとの印象を持った。そこで、IPI分析を容易にし、しかも苦情・クレームのマネジメントにも役立つ道具として、IPI分析シート(シートI)、IPI 分析の可視化シート(シートII)、マネジメント資料シート(シートIII)の3シートからなる FACE(Fact・Angry・Claim・Emotion:FACE)シートを開発した。

     次にこのシートの有用性について確認するために、看護職の管理業務に携わる80名に対してメディエーション研修直後にアンケートによる調査を行った。各シートの評価はシートIでは92%、シートIIでは74%、シートIIIでは77%の人が有用と回答した。以上より、今回開発したFACEシートは苦情・クレームのIPI分析やマネジメントのためのツールとして、医療現場で有効活用ができると推測された。

紹介
  • 邨瀬 智彦, 近藤 真哉, 古株 哲也, 宮﨑 のどか, 岸上 靖幸, 小口 秀紀
    原稿種別: 紹介
    2012 年 13 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2012/06/01
    公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

     硬膜外麻酔は現在広く普及しており、多くのメリットがエビデンスとして報告されている。デメリットとして、極めてまれではあるが、重篤な合併症も一定の頻度で発症しうる。トヨタ記念病院産婦人科では無痛分娩や帝王切開術の麻酔、婦人科手術の全身麻酔に併用するなど、積極的に硬膜外麻酔を施行してきた。

     電子カルテの医師記録に硬膜外麻酔シート(テンプレート)を作成し、2008年6月より運用を開始した。電子カルテに搭載されたデータウェアハウスを用いて2010年5月までのデータを集計し、対象となった423例について検討した。硬膜外麻酔における質評価指標(Quality Indicator)として、硬膜穿刺の発症率、再刺入率、有効率を設定し、その有用性を検討した。その結果、硬膜外麻酔を始めて2年以内の若手医師は、上級医と比較して硬膜穿刺の発症率と再刺入率が高く、有効率が低い傾向を認め、これらの3つの指標が質評価指標として有用である可能性が示唆された。当科での今回の結果から、硬膜外麻酔シートを他の診療科でも使用すれば、容易に診療科間の質評価指標の比較検討ができると考えられた。さらに今後、病院間でこれらの質評価指標を比較検討できれば、硬膜外麻酔の安全性と有効性が客観的に評価できる。

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