日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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13 巻 , 2 号
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総説
  • 中村 雅彦
    原稿種別: 総説
    2012 年 13 巻 2 号 p. 48-53
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     わが国では、2008年に病院勤務医の負担の軽減を図り、診察に専念できる環境を整備することを目的に、医師事務作業補助体制が導入された。医師の指示の下に、事務職員が診療録や退院時要約、診断書、意見書などの医療文書の作成を代行することが認められ、業務にあたる医師事務作業補助者の育成が進められている。医師事務作業補助者登場の背景には、わが国の医師の絶対数の不足のほか、多岐にわたる書類作成や病院運営のための委員会・会議への出席など、診察以外の業務の負担増が指摘されている。さらに、長年、改善が叫ばれている診療録作成・管理の点からも、「開示に値する」診療録の作成など医療文書の質向上への医師事務作業補助者に対する期待は大きい。導入後、業務負担軽減に関する医師への各種アンケート調査でも、高い満足度が示されている。また、最近では、勤務医の時間外勤務の減少や経費の削減など、導入の効果を数量的に評価した報告が多数されている。今後、医師事務作業補助者が医療文書作成の専門家として自立するためにも、生涯にわたる教育プログラムの策定が望まれる。また、さらなるスキルアップや社会的な認知度向上のため、学会などによる情報交換の場の提供や、上級資格の認定制度も必要であろう。医療文書作成の専門家という新たな職種が、医療界に誕生することを期待したい。

  • 松本 邦愛, 花岡 晋平, 北澤 健文, 長谷川 友紀
    原稿種別: 総説
    2012 年 13 巻 2 号 p. 54-58
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     COI 研究(Cost of Illness Study)は疾病が引き起こす損失を貨幣価値に置き換えて示す簡明な方法である。この方法は、疾病の帰結を考えることなく費用のみを計算すること、個々の費用の負担者がはっきりしないことなどから多くの批判を受けてきた。しかし、他の経済評価の方法に比べて計算が簡単なため、アメリカやニュージーランドなどでは政策決定に用いられてきている。COI 研究は、多くの理論的な批判を受けながらも、理論的な枠組みを変更するより、むしろ信頼性、再現性、相互比較性を担保することにより、政策決定のための道具としてその地位を確立してきたといえよう。

事例報告
  • 高島 幹子, 山田 楼子, 佐藤 幸美, 伊藤 亘, 近藤 克幸, 岡田 恭司, 浅沼 義博
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     秋田大学医学部附属病院で2004〜2009年度に経験した転倒・転落に伴う骨折事例を検討した。転倒・転落に関するインシデントレポート2,241事例のうち、骨折は25例(1.1%)であった。転倒・転落率は、1.76〜2.31‰であり、また骨折を伴った転倒・転落率は、0.00〜0.04‰であった。男性10名、女性15名であり、25例中11例は夜間(21時〜6時)に発生していた。骨折部位は、大腿骨頸部が11例と最多であり、つづいて上肢骨5例、腰椎3例等であった。大腿骨頸部骨折11例の年齢は72±15歳であり、それ以外の骨折14例と比べて高い傾向にあった。また骨折発生から退院までの期間は、大腿骨頸部骨折11例では64±56日であり、それ以外の骨折14例と比べて有意に長かった。骨折に対する治療として手術が施行されたのは25例中10例であり、内訳は大腿骨頸部骨折9例、上腕骨々折1例であった。

     骨折した25例を転倒・転落防止の観点から提唱された川村分類に準じて分類すると、1群3例、2群3例、3群(判断力あり・排泄行動以外)9例、4群(判断力障害)10例であった。3群9例の特徴は、下肢の骨折が多い(7例)ことであり、4群10例の特徴は体幹・上肢の骨折が多いこと(8例)、ならびに直近のアセスメントスコアが10以下と低くても骨折する症例がある(4例)ことであった。

     以上より骨折予防の観点からは、川村分類3群と4群に対する転倒・転落予防に取り組むこと、ならびに患者毎の骨折のリスク評価を行うことが重要であると考えられた。

  • 大沢 幸嗣, 本間 佳子, 松元 俊, 木村 哲
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     東京逓信病院の平成21(2009)年度のインシデント報告では輸液ポンプ・シリンジポンプなどの医療機器の報告は第3位であった。輸液ポンプ・シリンジポンプに関する報告を頻度およびリスクを考慮し解析し、防止策として解析結果に基づいた実地講習会を行った。

     解析の結果、「操作・セット方法の間違い」が最も頻度が多く、リスクが高かった。次いで「速度設定の間違い」、 「ライン管理の間違い」の順であった。

     実地講習会開催後の輸液ポンプ・シリンジポンプのインシデント報告は開催前の年間96件から年間44件と54%減少した。輸液ポンプ・シリンジポンプのインシデントの発生率は未参加者が31.3%(40件/128名)と参加者の3.5%( 4 件/115名)に対し有意に高かった。

     輸液ポンプ・シリンジポンプに関するインシデントではポンプに関する知識不足が主な原因であり、アンケート調査からも支持された。防止策として、これらの頻度およびリスクを考慮した実地講習会が有効であることが示唆された。

  • 土家 大輔, 尾家 重治, 古川 裕之, 宮崎 綾子, 宇多川 文子, 藤井 正美, 濱野 公一
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 2 号 p. 70-74
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     術前の手指消毒法において、従来から実施されているスクラブ法(洗浄剤含有の消毒剤を適用する手技)や2ステージ法(スクラブ法を行った後に擦式アルコール製剤を適用する手技)に代わり、ウォーターレス法(擦式アルコール製剤を適用する手技)が普及し始めている。今回、クロルヘキシジンを0.5w/v%含有する擦式アルコール製剤(ステリクロン®ハンドローション0.5%)を用いたウォーターレス法の有用性を評価するため、ウォーターレス法、スクラブ法及び2ステージ法の手指消毒効果とコストを比較した。その結果、ウォーターレス法の減菌率は94.8%に達し、スクラブ法及び2ステージ法に比べて、ウォーターレス法の手指消毒効果が有意に高いことが示された( p <0.05)。さらに、ウォーターレス法は消毒効果に持続性も示した。また、ウォーターレス法は、スクラブ法や2ステージ法と比較して、手指消毒1回あたりのコストが150円以上削減可能であった。以上の結果より、クロルヘキシジンを0.5w/v%含有する擦式アルコール製剤を用いるウォーターレス法は、スクラブ法や2ステージ法と比較して優れた手指消毒効果とコスト削減効果を有することが示された。

  • 松尾 勝一, 井上 俊孝, 冨田 昌良, 中川 朋子, 三島 健司, 志村 英生
    原稿種別: 事例報
    2012 年 13 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     電子カルテにおける手術システムのDWH(Data warehouse)の解析を新しいインメモリ型ビジネスインテリジェンス(BI)データ解析ソフトを利用しシステムエンジニア(SE)の手を借りることなく自前で行った。

     2010年の総手術件数10,005件のDWHから手術年月日、病棟、診療科、予定手術、緊急手術、手術件数、手術時間、医師を抽出した。出力項目は病棟別の手術件数、診療科別の手術件数、診療科別の手術室利用件数、手術室別の手術件数、総手術時間、麻酔科医の麻酔施行状況とした。データの二次利用は大きな労力を必要とするが、利用状況を容易に可視化でき、全てのスタッフが「手術室の利用状況」を容易に判断できた。表現される項目は「ドリルダウン」にて詳細に表示が可能で、診療科別の利用件数や総利用時間を容易に検索でき業務の可視化に貢献できた。次に評価軸を「スライス・アンド・ダイス」して手術室別に検討すると、手術件数と手術時間の積で表わされる手術室別の総手術時間は比較的均一であることが可視化され効率的に利用されていると評価された。さらに、ドラッグアンドドロップなどの双方向的な操作で可視化されたオブジェクトの個々においても検索できた。

     手術部門のDWHの解析にBIソフトを用いることで再抽出・再取り込みなどの行程が除かれて一気にグラフにまで描出できる環境を得た。現場の細かな要望に答えることができ、手術システムの解析レベルを向上して手術室の運営に役立つものと考えた。

  • 河野 恵美子, 一ノ宮 典子, 三浦 比呂子, 斎藤 弘道, 橋口 道俊, 長藤 宏司, 岡村 孝
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     久留米大学病院集学治療センター(血液・腫瘍内科)は入院患者の約7割が化学療法を受けている。また入院患者の約半数が60歳以上である。造血器腫瘍患者の化学療法は多剤高用量の抗がん剤を使用する。そのため、有害事象は強く長期に出ることが多く、患者の日常生活動作を制限し、臥床の長期化および廃用を引き起こす。そこで、患者の身体機能、日常生活動作の低下を最小限に留め早期に日常生活に復帰できるようにする目的で、リハビリテーション部と連携を図り早期リハビリテーション導入をシステム化した。その結果、早期のリハビリテーション介入が可能となった。また、今回の取り組みは各種専門職の協働のきっかけとなり、患者中心の医療を行う医療チームとして目標が共有されるようになった。さらに互いに専門性を理解し合い協働することで、医療の質向上につながると考えられた。

  • 神部 陽子, 今井 尚志, 椿井 富美恵, 大隅 悦子
    原稿種別: 事例報告
    2012 年 13 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     全国の難病相談支援センターの相談記録を調査し、相談内容および対応(支援)について検討した。5,145件の相談を疾患別にみると、厚生労働省が指定する難治性疾患(難病)に関するものは3,314件(64.4%)で、そのうち神経・筋疾患が1,365件(26.5%)、免疫系疾患が491件(9.5%)、消化器系疾患が417件(8.1%)を占めた。相談事項は医療(28.9%)、介護(23.9%)の分野のみならず福祉制度(12.9%)や就労(14.7%)等に関わるものまで幅広く含まれていた。

     対応は延べ5,914例みられ、相談員が制度の説明や疾患に応じた助言を行った例が2,898例(49.0%)、「傾聴」が1,141例(19.3%)、「他の相談窓口等の紹介」が1,023例(17.3%)であった。疾患も相談内容も多岐に渡っており、相談員個人の知識や経験のみでは対応が困難である現状が明らかになった。相談員の資質向上とともに相談員を支援する体制の充実が望ましいと思われた。

紹介
  • 仲島 裕子, 平賀 忠男, 岡本 初美, 尾澤 巌, 清水 秀昭
    原稿種別: 紹介
    2012 年 13 巻 2 号 p. 91-94
    発行日: 2012/09/01
    公開日: 2020/08/26
    ジャーナル フリー

     SPD(Supply Processing & Distribution:物品流通管理)による中央滅菌材料室関連の自家滅菌器材について、病棟・外来部署の不動在庫(180日間とした滅菌有効期限を超えた自家滅菌器材と定義)を減らし、搬送業務を見直すことで業務改善を図った。まず、現状把握のため、自家滅菌器材の品目・配置定数・1ヶ月間の使用状況、器材のセットおよび搬送時間について調査を実施した。その結果、配置定数が1日平均使用数さらには1日最多使用数よりも多く設定されていたことが判り、非常に類似したセットや重複している単品の器材が多く認められた。また、病棟では午後 5 時以降の夜間勤務帯での臨時処置および日勤勤務帯前の朝回診処置が行なわれていることが明らかになった。改善策として、配置定数の見直し、器材のセット統一化、SPDの搬送時間の変更などを行なった結果、外来・病棟部署で約20%から40%の不動在庫を削減することができ、業務の効率化がなされた。今後、SPD物品管理システムによる在庫管理の適正化を図るために定期的・継続的に見直しを実施していくこととした。

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