日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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18 巻, 4 号
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事例報告
  • 松田 直人, 進藤 篤史, 村田 博昭, 山田 昌美, 平田 敦宏, 山根 哲郎
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 213-216
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究では松下記念病院の転倒転落アセスメントスコアシートを用いて転倒の危険因子を評価した。対象は2014年1〜9月に入院した1651名で、そのうち70名が転倒していた。ロジスティック回帰分析では、リハビリテーション訓練中の患者と睡眠剤を服用している患者の転倒率に有意差を認めた。転倒の発生を軽減するために、病棟スタッフとの緊密な連携や療養環境を調整する必要がある。

  • 網代 洋一, 鈴木 大輔, 西村 祥一, 望月 聡之, 深瀬 史江, 塩田 志乃恵, 菊地 龍明, 宇治原 誠
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 217-222
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     国立病院機構横浜医療センターは2012年より医療安全全国共同行動 “いのちをまもるパートナーズ” に参加、「中心静脈カテーテル(CVC)穿刺挿入手技に関する安全指針の順守(行動目標3b)」に公式に参加登録した。CVC委員会を麻酔科・循環器科・消化器科・救命救急科・医療安全管理係長、感染管理認定看護師、病院事務で設立した。委員全医師が病院機能評価機構認定病院患者安全推進協議会主催のCVC研修会に参加して医療安全への意識を共有、CVC登録医制度、教育・穿刺環境整備、実施記録作成を行った。2013年度の運用開始にあたり、病院全職員対象に「CVC医療事故の実体験に基づく医療安全」講演により全職員の医療安全への意識を高めた。CVC登録医制度は順調に導入、実施記録により年間総件数、成功率、合併症発生率などの実施状況把握が可能となった。実施記録の検証に基づく介入により、同意書取得率が有意に改善した。

     CVC 登録医制度の導入において、CVC 医療安全の意識の共有が順調な制度導入の上で重要である。実施記録とその定期的検証は、より安全なCVCシステムの樹立・運用に有用である。

  • 結核感染予防のためのデータ管理の構築に向けて
    青山 恵美, 矢野 久子, 前田 ひとみ, 鈴木 幹三
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 223-228
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     医療施設内の職員の結核感染予防のために結核健診の実態と課題を明らかにした。

     愛知県内で結核罹患率が高い一宮市と稲沢市にある100床以上の12医療施設のうち同意の得られた10施設に対し、自記式質問紙調査を行った。さらに施設の健診担当者7名に、職員の結核健診とその後の支援に関する面接調査を行い、内容分析を行った。

     過去5年間(2010〜2014年)に結核が発生したのは8施設であった。各施設の接触者健診対象者数(最大人数)は3〜80名であった。感染者は2施設で6名であり、発病者はいなかった。内容分析の結果、職員の結核健診の現状と課題では、「職員雇い入れ時のベースラインデータの取得者・未取得者が混在」、「結核健診データの管理不良」、「IGRA(Interferon-Gamma Release Assays)陽性者対応の未整備」の3カテゴリー、接触者健診の現状と課題では、「職員個人データとして接触者健診結果の管理が困難」、「定期健康診断を利用したフォローアップの限界」の2カテゴリーが抽出された。雇い入れ時に実施された結核健診の検査の種類が雇用年度によって異なるために、結核感染のベースラインデータが管理・活用しにくいこと、接触者健診データは発病者ごとの保管で、職員個人別に蓄積されていないこと、結核患者が施設内で度々発生し、接触者健診後のフォローアップ対象者が累積しており、職員の健康支援が困難になること等が明らかになった。結核健診後の職員の継続支援ができるデータ管理の確立が重要である。

  • 4ml充填したオンオフ法
    吉村 一徳, 田坂 美穂子, 加藤 由紀恵
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     集中治療室におけるカテコラミン投与患者へのシリンジ交換方法について、先行研究で様々な方法が紹介されている。国立病院機構岩国医療センターCCU/ICUで行っている方法は、2台のシリンジポンプを使用し、段階的に流量を増減し切り替える並列交換であった。しかし、複雑な手技と交換完了までに20分程度の時間を要していた。そこで、中西らの検証で薬液濃度変化が最小限にできることが示された50mlシリンジ使用時に接続チューブへ4ml充填する方法に加え、操作が簡単なオンオフ法を組み合わせた方法が、当病棟が行っている並列交換に比べ、安全なカテコラミンシリンジ交換方法であることがわかった。さらに、使用する三方活栓の種類や、接続位置でのブドウ糖濃度変化の検証を続けた。その結果、開放式三方活栓を使用し、三方活栓への接続を同位置にすることでブドウ糖濃度変化が少なく安定した投与ができた。臨床でカテコラミン投与中の患者に4ml充填したオンオフ法でシリンジ交換を行ったが、交換前後の患者の平均血圧に有意差はなかった。以上のことから、4ml充填したオンオフ法は安全なカテコラミンのシリンジ交換方法であることが示された。

  • 古根川 綾子, 新木 輝実, 杉野 慶美, 小山 郁子, 猪原 繁美
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 234-237
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     現在、チーム医療が促進される中、看護師による末梢静脈留置針(以後、留置針と略す)の挿入は円滑な医療及び患者サービスという観点から、看護師の業務範囲として捉えられてきている。Aセンターでも医師や看護師等の業務量の増加に伴い、看護師による留置針挿入への要望が、医師だけでなく看護師からも強くなった。このような実情を踏まえ、2011年より留置針の挿入を含む静脈注射看護師(intravenous injection nurse:以後IVナースと略す)の養成を開始した。IVナースとは知識・技術等一定の教育を受けAセンター内で認定された留置針の挿入を含む静脈注射ができる看護師を指す。

     2014年度までのIVナース認定者は478人で看護師の66.2%を占めた。2013年度からは、専門分野のIVナースとして、造影剤13人、抗がん剤18人、貯血5人を養成した。2014年度の挿入実績は16053件で1日平均44件、目的別では造影剤用6284件、点滴漏れによる入れ替え用4986件であった。この成果はステップアップできる養成プログラムであるがゆえであり、IVナースの自信と誇りとなった。さらには看護師としてのモチベーション向上につながり、IV ナースの活動実績を促進させる原動力となった。

  • 酒井 久美子
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 238-241
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     大学病院で退院調整に関わる病棟看護師の退院調整能力と看護ケア能力との関連を明らかにすることを目的とした。

     調査は、大学病院に勤務し病棟で退院調整に関わる看護師196名を対象とし、自記式質問紙調査票を配布した。調査内容は、基本属性、退院調整能力、看護ケア能力とした。退院調整能力と看護ケア能力、看護ケア能力を構成する7つの各コンピテンスとの相関係数を算出した。さらに、退院調整能力を目的変数、看護ケア能力を構成する7つの各コンピテンスを説明変数として重回帰分析を行った。

     欠損データの無い150名を有効回答とした(有効回答率80.6%)。分析の結果、退院調整能力は、看護ケア能力(r=0.379、p<0.01)と有意に正の相関がみられた。さらに看護ケア能力を構成する7つの各コンピテンスすべてと有意に正の相関がみられた(r=0.236〜0.538、p<0.01)。重回帰分析の結果では、退院調整能力を説明する変数としてケアコーディネーションのコンピテンスのみが抽出された。

     看護ケア能力は退院調整能力の一部であり、退院調整能力は看護ケア能力と関係している。退院調整能力向上のためには看護ケア能力向上が必要であると考える。

  • 前川 一恵, 谷山 牧
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 242-246
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、地域包括ケア病棟(以下、包括病棟)に勤務する看護師の、在宅療養支援の現状と課題を明らかにすることである。関東圏内都市部にある10病院の包括病棟に勤務する看護師220名を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。本研究での在宅療養支援は、在宅復帰支援と病状悪化時の受け入れとした。

     調査の結果、在宅療養支援の実施割合が最も高かったのは、在宅復帰支援である「食事の自力摂取促し」で96.3%、病状悪化時の受け入れである退院後の予測と対応では、「看護サマリー記入」で85.2%の者が実施していた。包括病棟の看護師は、患者の生活機能向上への援助に取り組み、退院後の病状予測や生活課題について、在宅ケアチームへ情報提供していることが明らかとなった。

     在宅療養支援の実施状況と対象者の概要との関係は、スタッフよりも管理者、退院前カンファレンスに参加した頻度の多い者に、在宅療養支援の実施割合が高い結果であった。

     在宅療養支援の実施割合の低い項目は、社会資源活用であった。在宅療養支援の実践力向上には、社会資源を活用できるスキルアップが必要であり、管理者の支援や退院前カンファレンスへの参加が重要であることが示唆された。

  • 江藤 由美, 兼児 敏浩
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 247-251
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     A県の訪問看護ステーションに勤務する施設長及びスタッフを対象に患者・家族からのハラスメントの実態調査を行った。その結果、52施設272人から回答を得た。ハラスメントに関するマニュアルが存在しない施設が32施設あった。スタッフのほとんどは看護職員で資格取得後10年以上であるが訪問看護ステーション経験は3年未満である者が95人であった。過去1年間のハラスメント経験は105人であった。ハラスメント内容は「言葉での性的いやがらせ」「性的いやがらせ行為や性的被害」「言葉の暴力(脅迫・不当な要求・いやがらせ)」が多かった。深刻なハラスメントを受けたスタッフのなかで、IES-R(改訂出来事インパクト尺度)25点以上のPTSDハイリスクが17人存在した。今後、在宅医療の重要性が増加する中で訪問看護ステーションにおける患者・家族ハラスメント対策を強化する必要がある。

  • 脇黒丸 倫奈, 吉永 拓真
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 252-255
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     公益社団法人鹿児島共済会南風病院(以下、当院)は、がん診療を柱としており、当院の呼吸器内科でも肺がんの紹介患者は年々増加している。呼吸器内科医師は多忙であり、過重労働の負担軽減が喫緊の課題であった。また、これまで手術適応の肺がん患者は関連大学病院へ紹介し対応していたが、呼吸器外科医師が交代で勤務する体制となり、当院での手術が可能となった。非常勤の呼吸器外科医師は普段使用している電子カルテと異なり、院内の仕組みについても不慣れな面があることから、医師事務作業補助者(Doctor's Clerk、以下DC)が介入し電子カルテ操作を支援した。また診察から手術までの一連の診療の流れがスムーズに行えるように医師支援業務を構築した。呼吸器内科、呼吸器外科との連携を図るため、肺がんと診断された段階より、手術から術後管理までDCが介入し連携強化に努めた。DCの介入効果をアンケート調査したところ、呼吸器内科、呼吸器外科の連携につながったと全ての医師が回答した。急性期病院においてDCの導入効果は大きく、今後もさらなる医師支援業務の充実を図りたい。

  • 濱中 遥, 古川 麻央里, 須崎 真, 渡邉 紗野子, 山中 学
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 256-259
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     紀南病院(以下当院)では地域の高齢化に伴い、摂食機能障害患者は増加の一途を辿っており、入院患者で入院中に最も発症率が高い疾患が誤嚥性肺炎である。そこで摂食機能療法に医師、リハビリテーション科、病棟看護師、歯科医師、歯科衛生士が共同して効率的に介入を行い、病棟全体の意識改革や知識、スキルの向上を図ることができた。その結果、著明な誤嚥件数の減少とともに、摂食機能療法の算定率向上による経営改善にも寄与することができたので報告する。

  • 外来看護師の変形性膝関節症患者に対する関わりとは
    飴谷 礼子, 中村 立一
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 260-263
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     変形性膝関節症(OA:osteoarthritis of the knee)の最も明確なエビデンスの得られている加療は患者の生活指導、減量、および運動指導である。しかし、内科疾患に比べてOA患者に対する看護師の生活指導は一般的には行われていない。そこで我々はOA患者に対する総合的なサポートを目的に、2011年8月に多職種協働のチームである変形性膝関節症トータルサポート研究会(teamTS-KOA:team total support for knee OA)を立ち上げ、その中で外来看護師が生活習慣指導を担うこととした。まず統一した患者指導が行えるような指導ツールとして、患者自身がOAの危険因子を認識できる自己チェック表とチェック項目に関連した5種類の指導パンフレットを独自に作製した。指導の対象は膝MRIを施行した40歳以上の患者と人工膝関節置換術を施行した患者とした。2012年9月〜2013年1月の5ヵ月間の実施状況を調査したところ、対象患者は303名で、チェック表を記載した患者は91名、そのうち71名にパンフレット指導を行っていた。多くの患者が指導に感心を示すと共に、整形外科外来看護師は患者との関わりの深まりを感じていた。また、整形外科外来では、従来ほとんど看護師による生活指導が行えていなかったことから、生活指導の導入としてこの取り組みは有効だったと考えた。今後、指導の成績を評価し、さらに有意義な指導体制を構築する必要性がある。

  • 第1報:PVSの多様性に関する多施設共同研究
    武岡 良展, 瀬分 亮, 成瀬 美恵, 鈴木 里奈, 田中 滋己, 河合 優年, 山本 初実
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 264-267
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     心理的バイタルサイン(Psychological vital sign:PVS)の上・下限値の多様性について5校の看護学校で検討した。PVSは、ストレス自己統制尺度(Stress Self-Regulation Inventory:SSI)、気分尺度(Profile of Mood States:POMS)心理特性 (Monitor-Blunter Style Scale:MBSS)、ストレス値で構成される。

     研究に参加した対象者数は、実習前365名、実習後364名であった。5校のPVS各項目の上・下限値のグラフ化表示では、各校ともにほぼ同様の傾向を示し、PVSの標準化が可能であると思われた。しかし、各学校間で比較してみると、SSI、POMS、MBSSの項目において有意差を認める項目があり、この多様性を考慮し各学校別にPVSの上・下限値を設定する必要性が示唆された。看護学生自身が現在の心理的状況、心理特性やレジリエンスなどの資源を多角的、経時的に把握できる自己評価システムを構築することにある。

  • 第2報:心の健康度の評価
    瀬分 亮, 武岡 良展, 成瀬 美恵, 鈴木 里奈, 田中 滋己, 河合 優年, 山本 初実
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 268-271
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     看護学生の心の健康度の評価に心理的バイタルサイン(Psychological vital sign:PVS)が有用であるかどうか検証した。対象は、『看護学生の心理的バイタルサイン標準化の試み』研究と、『対人援助職者としての看護師のストレス制御特徴とそれに適合する対処技法の開発』研究に参加した早期離職者3名とした。対象者1は、人間関係、特に異性との関係性がよく自己有能感も高く心理的に安定した状態にあると思われた。対象者2は、臨地実習前後で変化する可能性のある「緊張不安」・「抑うつ落ち込み」・「怒り敵意」の項目に大きな変化がなく、全体的に心理的活動レベルが低下していることから治療の必要性があると判断された。対象者3は、緊張不安・抑うつ落ち込み・混乱・疲労・身体的脆弱性などの得点が持続的に高いことから、心理的な抵抗力の脆弱性が身体的症状として顕性化しており早急な治療的介入が必要と考えられた。PVSは、個人の心理特性とストレス対処方法を判断するための診断ツールとして活用できる可能性が示唆された。今後は自己モニタリングすることができるシステムの構築が課題である。

  • 山田 弘恵, 石井 晶子, 安井 亜美, 肥田野 幸子
    原稿種別: 事例報告
    2018 年 18 巻 4 号 p. 272-276
    発行日: 2018/03/01
    公開日: 2023/03/09
    ジャーナル フリー

     看護職のモチベーション向上に向けて、教育を担当する中間管理者の副看護師長が中心となって「ほめる活動」に取り組んだ。部署毎に活動した1年目を踏まえ、共通するスローガン「魅力的な職場をあなたの手で、魔法の言葉をあなたに」を掲げ、2年目は看護部全体の活動として取り組んだ。目的は、①「ほめる活動」を継続することで、お互いに認め合うことのできる職場環境づくりを目指す、②「ほめる活動」により他者から認められることを経験し、モチベーション向上につなげる、である。

     自己管理「ほめ」シートや季節のサンクスカードを活用し実践した結果、看護職員全体のモチベーション向上につながった。特に20代の看護職員の評価は高かった。認め合う職場環境は職員のポジティブな感情を引き出し、自己肯定感や意欲向上につながることがわかった。

     今後も、相手を「ほめる」という承認行為を継続するためには、現任教育の中に位置づけていく必要がある。

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