日本医療マネジメント学会雑誌
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最新号
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原著
  • 特定機能病院とその他急性期医療病院の比較
    大西 遼, 松本 邦愛, 畠山 洋輔, 瀬戸 加奈子, 藤田 茂, 長谷川 友紀
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     現在、地域保健医療計画で用いられている基準病床数は二次医療圏ごとの性別・年齢階級別人口、病床利用率等を利用して、全国一律の算定式によって算出されており、各二次医療圏にある病院の機能の違いを考慮していない。また、基準病床数算定式の性質上、都道府県外からの入院患者流入が多い二次医療圏では実際の必要病床数より低い病床数が算定されていると推測される。本研究は、病院の種類によって二次医療圏外からの入院患者流入割合に差があることを明らかにすることを目的とする。

     平成29(2017)年度「患者調査」及び「医療施設調査」を用いて、特定機能病院及び大学医学部附属病院の本院(特定病院等)とその他の急性期病院への二次医療圏外からの入院患者流入割合について有意水準5%でKruskal-Wallis testにて群間の比較、Dunn testにて多重比較を行った。急性期医療を担う3,551病院を対象とした分析から、特定機能病院等への二次医療圏外からの入院患者流入割合は47.5%であり、その他の急性期病院と比較して有意に高かった。専門性の高い医療機能を担う特定機能病院等では二次医療圏外からも多くの患者が入院しており、病床の多くが地域住民ではない患者によって使用されている。そのため、特定機能病院等がある二次医療圏では地域住民の入院医療へのアクセスが阻害されている可能性があり、基準病床数の算定において特定機能病院等の取扱いが考慮されるべきだと考える。

  • 上野 美由紀, 山田 和子, 森岡 郁晴
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     本研究は、臨床経験3年以上の看護師におけるエラーを指摘することへの抵抗感に関連する要因を明らかにし、医療安全対策への示唆を得ることを目的とした。A県内200床以上の病院に勤務する臨床経験3年以上の看護師1266名(有効回答率61.3%)を対象に、属性、勤務状況、失敗傾向、エラーの体験、ストレス反応、医療機関の安全風土、エラーを指摘することへの抵抗感について無記名の自記式質問紙調査を行なった。エラーを指摘することへの抵抗感をはかる場面として特定した「嫌な顔をされるかもしれないと思うとき」における抵抗感の得点を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)の結果、「認知の狭小化」、「ベッドのストッパーを止め忘れた」、「他の人に知られることがない限り、ミスしたことを黙っていても許される雰囲気がある」は抵抗感を高める要因であり、「医療安全に関する難しい議論もとことん話し合う、という雰囲気がある」、「職位が高い」、「人と話すのが楽しい」は抵抗感を低くする要因であった。看護師のエラーを指摘することへの抵抗感を軽減するためには、事故防止に積極的に取り組む風土を醸成していくとともに、エラーの体験を活かしていけるような、また、ポジティブな反応を高めるような支援が必要であることが示唆された。

  • 鬼塚 美玲, 猪股 千代子
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     本研究は母親役割を持つ看護師における看護の専門性を発揮できる職場環境の評価とその関連要因を明らかにすることを目的とした。A県内の18病院に就業中の母親役割を持つ看護師368名を対象に無記名自記式質問紙調査を行い、看護の専門性を発揮できる職場環境、関連要因として年齢、末子の子どもの年齢、労働環境を調査した。看護の専門性を発揮できる職場環境は日本語版NWI-Rの3下位尺度21項目を用い、年齢・末子の子どもの年齢・労働環境におけるNWI-R得点の群間比較を行った。

     有効回答253名を分析した結果、NWI-R得点は3下位尺度のうち「看護師長からのサポート」が最も低く、次いで「看護ケアの質保証」「仕事上の条件」の順であり、看護師長からのサポートの改善の必要性が示唆された。NWI-R得点を群間比較した結果、看護の専門性を発揮できる職場環境の関連要因は認められなかった。

  • 加算点数の実態調査と分析
    安田 耕平, 的場 匡亮, 上條 由美
    原稿種別: 原著
    2020 年 21 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     2014年度診療報酬改定で新設されたADL維持向上等体制加算の病院経営への影響を明らかにすることを目的に、加算点数実態調査と分析をおこなった。対象は、2015年12月からの1年間に、病棟専従理学療法士を配置した病棟(専従病棟)1,558例と、後に病棟専従配置を検討しているシミュレーション病棟(SIM 病棟)1,140例である。入院延べ日数からADL維持向上等体制加算除外日数を引いて加算点数を算出し、疾患別リハビリテーション点数と合わせて患者カルテから後方視的に比較検討した。専従病棟とSIM病棟でそれぞれ、入院延べ日数、12,996日と12,076日が算出され、15日以上の入院日数2,084日と2,842日、疾患別リハビリテーション日数1,356日と595日、病棟専従理学療法士非勤務日数1,772日と1,926日が算出された。加算日数は、7,784日と6,713日が算出され、加算単独の年間点数は622,720点と537,040点、疾患別リハビリテーション点数は、135,080点と72,860点であった。総合計点数は、専従病棟757,800点、SIM病棟609,900点で、専従病棟が147,900点多かった。ADL維持向上等体制加算に準ずる病棟専従理学療法士の配置は、リハビリテーション関連点数の増加を認め、専従理学療法士の人数や非勤務日数、リハビリテーション運用が同様な病院では、経済的に優位な点が認められる。

事例報告
  • スペシャル・メディカルアシスタント(SMA)制度導入
    三木 典子, 落合 英伸, 淺原 太郎, 大西 祥男
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 21 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     医師の過重労働や時間外労働問題は、特に急性期病院では大きな課題となっている。

     加古川中央市民病院では、2008年以降、医師事務作業補助者(MA:メディカルアシスタント)を旧東西市民病院より導入し、外来診療補助業務を中心に行ってきた。MAの組織運営体制強化と、MAの上級者としてスペシャルメディカルアシスタント(SMA)制度を導入し、更なる医師の負担軽減に繋げてきた。2018年10月現在、MA・SMAの総人数は計69名である。

     当院では、組織体制の見直し、スタッフ教育方法、チーム制の導入および能力評価方法を開発し、実践してきた。また、SMA導入前後における医師の残業時間の減少傾向がみられた。今後は医師事務作業補助者のモチベーションアップに向けた様々な取り組みを実践する必要がある。

  • 医師事務作業補助者導入による業務効率化
    森木 章人
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 21 巻 1 号 p. 30-33
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     もみのき病院では2016年6月20日の電子カルテの導入に伴って、医師事務作業補助者の増員を行なった。現在7名が脳神経外科と眼科の外来および病棟勤務を行っている。当院での医師事務作業補助者の業務内容は、主に診療情報提供書、入院証明書や介護保険における主治医意見書などの文書作成補助業務、退院サマリーや検査、処方、次回の診察予約などオーダリングシステムへの代行入力業務、そして診療データの登録・集計業務(Japan Neurosurgical Database、以下JND)などである。今回客観的な評価として、外来待ち時間調査、退院サマリー完成率、入院証明書や介護保険における主治医意見書の作成期間、医師への満足度調査、医師の時間外労働時間の5項目について調査ならびに検討を行った。その結果、脳神経外科外来予約患者の予約時間から診察開始までの時間は平均10.9分で、導入前の半分以下に短縮を認めた。退院サマリーの2週間以内の完成率は改善を認め、満足度調査の結果からも医師の負担軽減が確認できた。医師事務作業補助者の導入は業務効率化につながり、医師の負担軽減となるものと思われた。

  • 高齢者医療・終末期医療の在り方を多職種で検討する取り組み
    本田 香
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 21 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     松江赤十字病院では高齢者の治療選択・終末期医療について、エビデンスに基づく実践や治療方針を多職種で考える機会は限られている。 そのような中、症例を通じた多職種デスカンファレンスについて、今後の高齢者の治療選択・終末期医療における多職種協働の普遍的な実践の示唆に有用と思われたため報告する。当該症例の担当であった5職種に対し、カンファレンスの目的、進行予定、協議ポイント等を記した紙、国内外の高齢者医療に関する文献を事前配布してからカンファレンスに参加してもらった。カンファレンス後、自由記述式のアンケートを実施し、学習効果の検討材料とした。アンケート結果からは、少なくとも治療方針決定における多職種協議の重要性を参加者全員が認識し、高齢者医療における今後の実践への示唆や発展性が得られたことがうかがえた。多職種での協議機会は、倫理的感受性および高齢者医療における各職種の実践の質向上に寄与できる可能性がある。

  • 新沼 芳文, 成田 吉明
    原稿種別: 事例報告
    2020 年 21 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2020/07/01
    公開日: 2025/01/17
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     2014年度から後発医薬品の使用数量割合がDPC対象病院における機能評価係数 II に反映されたことを受け、手稲渓仁会病院でも積極的に後発医薬品への切り替えを進めている。切り替えの際は薬剤師が作成した評価表を用いて候補品目を評価し、採用の参考としている。今回、2014年4月から2017年9月までに、評価表を用いて先発医薬品および切り替え候補となる後発医薬品の評価を行い、切り替えを行った77成分(95規格)について、評価項目毎に点数を集計、比較した。大項目の平均点は先発医薬品/後発医薬品でそれぞれ [供給体制]7.8*/5.9(*:p<0.01)、[資料]2.7*/2.3、[情報提供]5.5*/4.9、[薬物動態データ]4.7*/2.6、[リスクマネジメント]5.2/7.8*、[品質]4.1/3.9であり、[合計]29.9*/27.3であった。先発医薬品と後発医薬品の品質に差は認められなかったが、供給体制や資料、情報提供については先発医薬品の点数が有意に高く、後発医薬品導入時は安定供給の確認や薬剤部による積極的な情報の収集および医療スタッフへの周知が必要と考えられた。一方で、名称や外観、識別性等の点で、後発医薬品はリスクマネジメントへの寄与が評価され、薬剤費の削減効果も確認された。引き続き患者にとって安全で経済的な後発医薬品を提供できるよう、切り替え時は適切に評価を行いたい。

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