日本医療マネジメント学会雑誌
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最新号
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総説
  • 小谷野 肇
    原稿種別: 総説
    2021 年21 巻4 号 p. 193-196
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     日本では急速な高齢化により、自己管理能力の低下した高齢糖尿病患者が増加している。これらの患者のうち在宅自己注射、血糖自己測定が必要な患者には、主に家族が患者に代わってこれらの行為を行っているのが現状である。将来さらに少子高齢化が進めば、現在のように家族から援助をうけることは困難になると予想され、国民的な議論と早急な対応が求められる。その前提として、在宅自己注射、血糖自己測定の医事法制について整理しておく必要がある。すなわち、家族が行うインスリン注射は、厚生省の通知(医事第38号)にもとづき医師法違反とはならず、家族が行う血糖自己測定は、形式的には医師法違反の構成要件に該当するが、違法性が阻却され医師法に違反しないという、中央社会保険医療協議会の行政解釈(中医協 診—1−2)にもとづいて実務運用されている。介護職員が行う在宅自己注射および血糖自己測定では、違法性は阻却されず、医師法に違反する可能性がある。

原著
  • 鬼塚 美玲
    原稿種別: 原著
    2021 年21 巻4 号 p. 197-204
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     本研究は母親役割を持つ看護師のワーク・ファミリー・コンフリクト(以下WFC)に影響を及ぼす職場環境要因と、ワーク・ファミリー・コンフリクトがワーク・エンゲイジメント(以下WE)に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。母親役割を持つ看護師368名を対象に無記名質問紙調査を行い、年齢、家庭環境、職場環境、Work-family Conflict Scale日本語版、日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度短縮版を調査した。

     有効回答253名を共分散構造分析した結果、WFCに有意なパスを示した職場環境要因は「雇用形態」「所属部署」「看護の専門性を発揮できる職場環境」(0.29、0.22、-0.47)であった。「看護の専門性を発揮できる職場環境」はWFCの低減に有用な職場環境要因であることが示唆された。WFCからWEへの影響は認められなかった。

事例報告
  • 千葉 のぞみ
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 205-209
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     平成20年度診療報酬改定で新設された地域連携診療計画管理料の算定要件として、計画管理保険医療機関(以下:計画管理病院)は地域連携診療計画(脳卒中地域連携クリティカルパス(以下:連携パス))を作成し、連携医療機関(以下:連携病院)への転院時に携行させ、連携病院退院時情報の報告を受ける必要があった。湘南鎌倉総合病院脳卒中診療科(以下:当科)を計画管理病院とする地域連携は、当科責任医師と連携病院の責任医師とで転院対象条件・必要情報と運用方法を事前に決め、連携パス用紙携行と退院時報告を互いの義務とした。算定対象期間(2008年4月1日から2016年3月31日)における湘南鎌倉方式での運用実績を調査した。

     同期間に当科に緊急入院した脳卒中患者は4,119人、連携病院へ転院した患者は2,109人、転院患者の当科平均入院日数9.8日と早期に転院でき、転院時連携パス用紙携行率は100.0%だった。連携病院からは1,944人の退院時報告を受け、連携パス完結率は92.1%で、在宅復帰率は80.2%だった。8年間当初の取り決め通りの運用ができていた。

  • 山口 広之, 村岡 昌司, 福岡 秀敏, 徳永 陽子, 永尾 光子
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 210-214
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     高齢者の人口構成比率が非常に高い諫早総合病院(以下、当院)の医療圏においてがん死亡者数は今後全国平均を超えるペースで増加して行くと推定されている。しかし、緩和ケアの専門的施設は無く、在宅緩和ケアや在宅看取りに向けた地域連携体制の構築もほとんど進展が見られなかった。そこで、当院で普及に努めてきたがん地域連携クリティカルパスの経験をもとに、新たに当院独自の緩和ケア連携クリティカルパス(以下、緩和連携パス)を作製した。この緩和連携パスは術後再発がんの患者や根治的治療の見込みのない初発進行がん患者を対象とした。がん拠点病院と地域の連携医との間で共同診療を行いながら、できるだけ速やかに患者の苦痛に気付くことで細やかな緩和ケアが介入できるように設定されている。苦痛の再増強が進行した場合は緩和ケア調整入院などを行いながら患者の在宅生活を可及的に延長し、かつ可能なら在宅看取りにつなげようとするものである。これまで18例の進行がん患者においてこの緩和連携パスを適用して外来での共同診療を行ってきた。運用期間は2〜28か月(中央値4か月)で既に16名ががんで死亡した。このうち3名は連携する診療所で、1名は在宅で連携医による看取りのもと死亡していた。

     緩和連携パスは医療資源の乏しい地域でも在宅緩和ケアを充実させ在宅看取り率を上げて行くための有用な診療連携手段になるものと期待される。

  • 北原 悠子, 久田 達也, 石木 良治, 岩瀬 三紀
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 215-218
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     がん診療におけるスムーズな地域医療連携において、がん診療地域連携クリティカルパス(以下、がん地域連携パス)は重要な役割を果たしている。トヨタ記念病院では適用患者数の増加に伴い、患者への説明や連携医とのやりとり等の問題が散見されていた。今回我々は、連携医を選定する際に参照するマップの作成、フォローアップ中に他科疾患を併発した際の情報共有手順のルール化、及び連携医へリマインドする作業の簡素化に取り組んだ。院内の要望や連携医の懸念事項に着目し、書類改廃を行った。その結果、業務は効率化し、連携医の不安軽減にもつながった。増加し続けているがん患者に対し、がん地域連携パスを効率的に運用する事は重要であり、継続的な改善活動が必要である。

  • 新井 亘, 土屋 裕伴, 小林 理栄, 諸橋 賢人
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 219-223
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     医薬品安全管理責任者の責務として、医薬品の適応外使用や禁忌に該当する使用状況の把握と、医薬品の安全使用を目的とした改善の為の方策の実施が挙げられている。医薬品の安全な使用の推進を体系的に行うことは必須であり、上尾中央総合病院ではその責務を医薬品安全管理責任者と連携した委員会が担っている。トルバプタンは、警告や禁忌事項が多岐にわたり、安全使用に注意が必要である。今回、安全使用に関する問題点が提起され、組織的に許可制の導入や、使用状況のモニタリングの結果を共有する体制を確立し、有用性を評価した。対象は心不全における体液貯留に対してトルバプタンを使用した326名であり、介入前(8名)、許可制期間(12名)、安全な使用の推進期間(56名)、その後の観察期間(250名)において、添付文書の警告や禁忌の中から項目を定め、その遵守状況を比較した。全てを遵守した症例数は、介入前は1名(12.5%)、許可制期間12名(100.0%)、推進期間は38名(67.9%)、観察期間は205名(82.0%)であり、観察期間においても安全な使用が維持された。適応外使用や禁忌薬使用に対して、医薬品安全管理責任者が中心となり、組織的に検討することが重要である。多職種でリスクを共有することによって、安全使用に対する認識の向上につながり、その効果が長期的に維持されると考えられる。

  • 完全主治医制から複数主治医制へ
    小西 正紹
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 224-228
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     電通過労死事件に端を発した「働き方改革」について、2017年3月28日には政府主導で「働き方改革実行計画」がまとめられた。医師の時間外労働は、医療安全への影響や割増賃金の病院財務に対する影響が問題となる。特に循環器内科診療においては急患、時間外診療は珍しくなく時間外労働は常態化している。対策の一つとして厚生労働省による「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」に「複数主治医制の導入」 が含まれその効果が期待されている。今回、完全主治医制で診療に当たっている病院で複数主治医制を導入した場合をシミュレーションし、時間外労働時間がどのように変化するかを検討した。高度急性期医療を担う横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センターにおいて平日5日間のタイムスタディを行った。スタッフ11人にアンケートを行い全員から回答を得た。18時以降の業務を時間外労働とカウントした。なお自己研鑚の時間はカウントから除外し解析した。時間外労働は1人・週当たり平均11.3時間であった。複数主治医制によるグループ回診の時間を一日1時間設け、病棟業務を当該時間に集中させるシミュレーションでは、想定される時間外労働は3.0時間(27%)減少し8.3時間となった。高度急性期病院の循環器内科診療において完全主治医制から複数主治医制へ移行することで時間外労働時間の減少を図れる可能性がある。

  • 三好 孝典
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 229-233
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     一般的に急性期病院は手術が多いと利益が多いといわれているが、具体的なデータを元に検討された報告は少ない。

     今回、筆者は呼吸器外科新設に携わる機会を得た。そこで呼吸器外科医1名の増員で診療、手術が病院の経営面での貢献にどの程度期待出来るか具体的な数字を用いて検討した。さらにこのデータを元に投資の規模を、ペイオフ表を用いた定量分析を行った。

     呼吸器外科開設後3ヶ月の収益は、手術約1,000万円、外来入院合わせて約2,100万円であった。経費は人件費、手術器具等の固定費約2,700万円、手術消耗品等の変動費約1,300万円で、人件費の按分は手術に関与する医師2名、看護師2名を当てはめて計算した。損益分岐点売上額は4,022万円で、手術平均単価57.3万円で割ると70例/年であった。ペイオフ表に症例数のパターン別に入力して定量分析を行うと、症例が65例/年以上あれば手術器具、光学器具を購入、40例以下の場合は手術器具のみ購入した時が最も利益が期待できた。2017年度1年間の最終的な手術症例は60例で、開設初期より手術単価が高い肺癌症例が多くなったことより総利益は、約6,000万円であった。

     40例以上の手術が期待できる場合、呼吸器外科新設は病院経営の面からも有益である。

  • 現状と期待の業態比較から
    米本 倉基, 村田 幸則, 坂田 裕介, 山上 潤一, 加藤 憲
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 234-240
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     経営組織は4段階の形態を経て最終的にティール組織へ向けて進化しているとする F.ラルーの組織進化の5段階モデルが注目されている。本研究は、ティール組織へのブレイクスルーのプロセスと特徴に対する適応の現状と期待を、病院看護組織と訪問看護組織の2つの業態で調査することで、看護組織の進化に、このティール・モデルの適用が妥当であるかを検証した。方法は、F.ラルーによる組織進化の34項目の特徴について、WEBアンケートで得た訪問看護師50人と病院看護師50人の現状と期待の回答データで検証した。その結果、看護組織においても、オレンジ、グリーンの段階的な進化プロセスを経て、3つの基本概念のほぼすべての特徴の適応によってティールへブレイクスルーすることが確認された。ただし、2つの業態の間で、その進化の速度と特徴への適応範囲には差があり、ティールが業態ごとに一部を合わせながら進化することが示唆された。このことから、看護組織では、特に病院看護組織に比べて、訪問看護組織でティールが適用しやすく、早期に利点を生かせる可能性が示唆された。

  • 竹元 明子, 倉元 景子, 福永 有記, 道園 久美子, 岩穴口 孝, 宇都 由美子
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 241-246
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     鹿児島大学病院では、管理栄養士が入院決定患者に入院前栄養面談を行い、入院初日から安全で適切な食事の提供に取り組んでいる。入院患者に対して疾患特性や患者要因に応じた適切な食事提供法を確立することを目的として、入院前に栄養面談を行って栄養食事指導を提案することについて分析を行った。

     2017年10月から2018年9月に入院前栄養面談を実施した入院決定患者2,525名について、DPC(MDC別)、年齢階級別、食事の提案状況、栄養食事指導の提案状況を調査した。

     栄養食事指導の提案割合が多いMDCは、05循環器系疾患、04呼吸器系疾患、10内分泌・栄養・代謝に関する疾患であった。MDC別栄養食事指導の対象病名の提案状況は、高血圧症、糖尿病、心臓疾患の順であった。食物アレルギーは、生産年齢層で最も多く、年齢層が上がるにつれて減少していた。年齢階級別栄養食事指導については、65歳以上で提案を行った割合が50%を超えていた。

     入院前に入院支援室で管理栄養士が栄養面談を行い、疾患特性や患者要因に応じて分析することは、入院患者の栄養管理上の課題を抽出し、限られた医療資源の中での有効な対策を講じることにつながった。

  • 西井 穗, 葉田 真美子
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 247-250
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     成育医療の質向上の一環として、妊産婦患者の栄養支援を目的に、管理栄養士だけではなく助産師が協働し、マーケティング手法を用いて食事サービス改善活動に取り組んだ。助産師が患者像を設定し、管理栄養士、助産師が品質ミーティングを重ねてサービス改善を行った。サービス開始後、2019年12月に6名の切迫早産患者を対象にインタビュー調査を実施した。KH Coder3にて、テキストマイニングを行った結果と患者満足度調査結果を基に効果を検証したところ、有効性を確認することができた。

     従来の栄養部門の一方向の価値提供から、助産師、患者とコミュニケーションを図ることで、患者理解の促進ができ効果的なサービスを共に創ることができた。

  • 相馬 淳, 宮手 美治, 高橋 弘明, 菊池 貴彦, 大浦 裕之, 松戸 健一, 河野 聡, 高橋 明美, 外館 善裕, 佐々木 真紀, 小 ...
    原稿種別: 事例報告
    2021 年21 巻4 号 p. 251-255
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     2019年12月に中国武漢市に端を発した新型コロナウイルス感染症は急激な勢いで感染者数を増やしている。多くの医療機関では、その感染拡大を防ぐため入館時に発熱者を事前に拾い上げる対策を講じている。我々は、正面玄関の2つの風防室の一方にサーモグラフィーを設置して来院者専用入り口とし、37.5℃以上の発熱者の検出を行った。サーモグラフィーはスクリーニング的に発熱者を拾い上げるために設けたが、その設定体温により拾い上げ数が大きく変動し安定した測定結果は得られなかった。しかし、後方視的には36.5℃の設定が妥当と考えられた。ただし、非冬季の検討であり冬季には改めて設定温度を検討する必要がある。

紹介
  • 永澤 昌, 中西 敏夫
    原稿種別: 紹介
    2021 年21 巻4 号 p. 256-260
    発行日: 2021/03/01
    公開日: 2026/04/24
    ジャーナル フリー

     2014年に国が制度化した「地域医療構想」を具現化する一つの形として、2017年4月に「地域医療連携推進法人」が施行となった。3つの法人が立ち上がったが、その一つが法人「備北メディカルネットワーク」である。

     「備北メディカルネットワーク」は、大命題として「医師確保」を掲げ、それを共通認識とし、地域医療を守っていくために設立されたものである。へき地で働く医師をサポートし、またそのサポート体制を継続する。それにより、地域に医師が働くモチベーションを保てる、また就労した医師が異動する際に「また、戻って働きたい」と思える、環境整備にしっかりと資源を投入することを重要と考えている。

     ここ数年、医師他医療従事者の働き方改革が取り上げられるようになっている。法人の医師支援対策は、先んじての働き方改革の一モデルといってもよい。なかでも、連携強化による魅力作りが大切である。具体的には、学会参加時や長期休暇での代診を支援するシステム、症例検討会などの勉強会の開催、基幹病院から小規模病院への専門医派遣(専門外来、レクチャー)、などである。

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