医療マネジメント学会雑誌
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2 巻, 2 号
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  • 坂本 すが
    2001 年 2 巻 2 号 p. 145
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
  • 藤村 和宏
    2001 年 2 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    医療サービスにおいて導入が進んでいるクリティカルパス (CP) はスクリプトの明示的なものとして機能することで、患者満足にポジティブな影響を及ぼすと考えられる。CPはその導入の背景から、コスト管理や活動の標準化の側面が強調されているが、それが適切に構築・導入されるならば、スクリプトが保有する3つの機能、すなわち台本機能、評価基準機能、予測性向上機能が働き、患者満足を向上させることにも貢献することが期待される。つまり、適切なCPは、患者が医療サービスのデリバリー・プロセスに適切に参加することを可能にするだけでなく、医療サービスを評価する適切な基準を提供することになるし、さらに患者の予測性を高めることになるために、患者満足にポジティブな影響を及ぼすことが考えられる。
    この明示的スクリプトとしてのCPの患者満足に及ぼす効果を検証するために調査を行った。分析の結果、今回の調査に用いたCPは「評価基準機能」と「予測性向上機能」を発揮しており、患者満足に影響を及ぼしていることが明らかになった。それ故、医療サービスにおけるCPはコスト削減のツールとしてだけでなく、患者満足向上のためのツールとして適切に構築・管理される必要がある。
  • 和田 ちひろ
    2001 年 2 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    製造業では欠陥品が品質改善に用いられるが、サービス業では離反してしまった顧客から学び、サービスの質を向上させる必要がある。本研究では医療機関から離反した患者に注目し、年間どのくらいの離反患者が存在するのか、また離反の原因について分析した。A病院での一年間の手術件数1904件のうち手術をキャンセルした患者は38名であり、キャンセル理由は (1) 待機中死亡、 (2) 回復、 (3) 時期的問題、 (4) 体調不振、 (5) 地理的問題、 (6) サービスに不満であった。キャンセル患者のうち21名に電話インタビュー調査を行なった結果、他院で手術を受け、以後来院しなくなった「離反患者」は6名であった。治療結果ではなく医療サービスプロセスが離反患者に与える影響が大きいことが示唆された。また医療は評価するのが困難であるため、代替尺度を用いて評価している点、医療は信頼財という特性をもつという点口コミがもたらす影響が大きいことも示唆された。さらに離反患者が医療機関の経営にもたらすであろう影響も示唆された。院内での患者満足度調査だけでなく、年間の患者離反数、離反理由を調べ、サービス改善の糸口にし、さらなる離反を防止する、離反患者によるネガティブな口コミの波及を最小限にとどめる方策を検討するなど離反マネジメントを行なうことが今後、必要であると考える。
  • 人工股関節全置換術 (THA) 術後患者における良肢位保持との関連
    及川 智子, 高橋 恵子
    2001 年 2 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    近年、患者自身の医療機関に対する意識の変化から、患者を主体とした医療に対する患者の満足度を評価することの重要性が求められている。患者の満足度を把握することによって、実際のケアやサービスにフィードバックし、よりよい方法を検討していくことができる。
    これまで、患者の満足度について多くの調査が行われてきており、様々な評価用具の開発が行われてきた。しかしながら、看護ケアの概念的枠組みや測定用具としての信頼性・妥当性においては課題が残されており、ケアに対する満足度調査に触れたものはあまり研究されていない。そこで、今回当病棟でTotal Hip Arthroplasty・人工股関節全置換術 (以下THAと略) クリティカルパスを使用している患者を対象に、良肢位保持に関するケアが実践されているかどうかを検証し、さらに患者満足度との関連を検討することを目的に本研究を行った。今後私達が行ったケアの結果、患者にどのような効果をもたらしたのか、患者がどれだけ満足してくれたのかを検討するためには、結果から評価していくことが重要と考える。
  • 抗生剤などの標準化の傾向の考察
    松島 照彦
    2001 年 2 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカルパスにおいて使用薬剤名までを指定することは、医師の裁量権や症例の個別性の点から困難を伴うと考えられていたが、第1回クリティカルパス全国研究交流フォーラムに展示されたクリティカルパスを解析したところ、薬剤名の指定、標準化が広く進んでいることが明らかになった。薬剤の指定は抗生・抗菌剤、点滴基剤、鎮静・抗不安薬、下剤・緩下剤、抗凝固剤、非ステロイド系抗炎症剤 (non-steroid anti-inflammatory drugs: 以下、NSAIDS) に多く、繰り返し指定と強い寡占化傾向が見られた。選択の要因としては、薬剤の歴史、作用の広範確実性、安全性とともにevidence-based medicine (以下、EBM) の存在が大きく作用していると考えられた。クリティカルパスの普及が薬剤メーカーに対するEBMを作るインセンティブとして働き、また、クリティカルパスは標準化された医療を通じてEBMを創出する理想的な場とも言える。今後、薬剤師がクリティカルパスの作成に関与していくことが標準化に拍車をかけることも期待される。クリティカルパスの普及や採用は薬剤の価格設定に影響を与える可能性も出てくる。薬剤名の指定は医療の標準化のみならず、医療事務、原価計算、包括化における医療と薬業のスタンスにおいても重要な意味を持つと考えられる。
  • 杉山 令子, 浅沼 義博, 伊藤 登茂子, 煙山 晶子, 小野 正子, 菊地 郁子, 佐藤 真理子, 佐藤 光子, 伊藤 正直, 小山 研二
    2001 年 2 巻 2 号 p. 168-173
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    幽門側胃切除術を施行した41例を対象とし、クリティカルパス (以下パス) 導入の意義を検討した。パス前群20例とパス後群21例とを、入院日数、術後治療経過、術後回復過程の観点より比較検討し、以下の成績を得た。
    全入院期間は、パス前群31.4±5.3日、パス後群20.9±3.4日であり、パス後群で有意に短縮した。術前・術後の入院日数もともにパス後群で有意に短縮した。
    半抜鈎日、全抜鈎日、胃チューブ抜去日、酸素投与期間、輸液投与期間も全てパス後群で有意に短縮し、治療の標準化、効率化が達成されたことが明らかであった。
    術後回復過程については、排ガス日はパス前群3.8±1.1日、パス後群3.1±0.9日であり、パス後で早い傾向にあるものの有意ではなかった。しかし、水分摂取日は、パス前群3.8±0.6日、パス後群2.8±0.7日であり、パス後群で術後有意に早く水分摂取が可能となっていた。
    また、8例の患者に外来での非構成的面接を行い、パス導入により (1) 安心感が得られる、 (2) 積極的・前向きな姿勢になれる、 (3) コミュニケーションツールとなる、 (4) 手引きとなるなどのパス導入への肯定的意見が得られた。
    以上により、パス導入により治療経過が標準化され、治療・検査・ケアの点で効率的な入院治療が行われたことが明らかとなった。また、パスによって患者が自分自身の術後回復過程や退院予定日を知ることができるため、目標を持ち、積極的に闘病生活を送るようになると考えられた。
  • 糖尿病e-パスを活用して
    飯田 さよみ, 藤井 宏, 望月 龍馬, 池田 弘和, 森脇 要
    2001 年 2 巻 2 号 p. 174-178
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    糖尿病クリニカルパス導入前後での臨床成果を検討した。いずれも、重症合併症を伴わない糖尿病入院患者を対象としている。血糖コントロールの指標としてHbA1cを用いた。パス導入前後で、入院時点のコントロールは同程度に悪く、退院時には同程度に良くなっている。入院期間中の血糖管理が的確に行われていることがわかる。ところが、退院後6ヶ月では、パス入院患者群 (n=41) の方が、パス導入前の患者群 (n=40) よりも統計学的に有意にHbA1cが1%さがっていた。このことは、パス入院の方が、退院後も自己管理がきちんとできている患者が多いことを示している。入院中の糖尿病学習がより充分でき、病識を高めて、よりよい生活習慣をおこなう意欲をもち続けることがパス入院から得られたと考えられる。パス導入前の糖尿病入院患者 (n=155) およびパス入院患者 (n=115) の平均在院日数は各々31.7日、25.7日であり、パス導入による糖尿病入院在院日数の短縮を認めた。また、オーダリングシステムにクリニカルパスのオーダーを組み込んだ糖尿病e-パスは曜日別に登録してあり、曜日別の使用頻度がわかる。入院時、一括してオーダーすることができ、その利便性は評価できる。
  • 心臓カテーテル検査への導入
    石橋 克彦, 平賀 裕之, 國田 俊郎, 田中 民子, 伊藤 きみ子, 光波 康壮
    2001 年 2 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    近年我が国でも患者サービスや医療の質の向上をあざし、クリティカルパス (以下CP) が急速に普及しつつある。我々は心臓カテーテル検査に導入していたCPに見直しを加え、医師指示・看護記録を一体化した進化型CPを作成施行した。その評価のため半年間の使用ののち看護スタッフにアンケートを行った。また同時に患者アンケートも集計し、両者の意識を検証した。
    患者アンケートにみる患者のCPに対する満足度は極めて高かった。CPにより検査への不安が軽減したとの意見も多く、CPが情報開示ツールとして非常に有益であることが明らかになった。
    看護スタッフアンケートによると、医師指示をCPに組み込むことについては、指示が検査や経過に沿っているため把握しやすい等、良好な評価であった。看護記録の一体化とフローシートの採用についても評価は高かった。そのメリットとしては記録時間の短縮や観察項目の漏れの減少などがあげられており、まさにCPによる医療の効率化と均質化が具現化していた。だが一方で、患者への接し方が画一的となってしまう不安等も寄せられていた。今回、看護記録としてフローシートの他に追加記事記載欄を設けたが、このシステムには7割を越す賛同を得た。
    CPは成果医療を実行するためのものであり、その本質は効率化と合理化である。しかし効率化を求めるあまり患者個々の問題が見失われることのないよう、細心の注意が必要である。
  • 伊藤 実紀乃, 奥田 裕子, 三木 愛子
    2001 年 2 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院では、平成11年より「医療の質の確保・チーム医療の確立・患者様サービスの向上」を目的にクリティカルパス (以下CPと略す) の導入を試みている。当科では、平成12年4月より、内視鏡下副鼻腔手術患者様へ日程スケジュール表を添付したCP導入を試みた。
    結果 (1) インフォームドコンセントが容易となり、診療内容の理解が得られやすくなった。
    (2) 医療チームのカンファレンスが増え、協調性が強くなった。
    (3) 患者様とのコミュニケーションが増し、信頼関係が向上した。
    (4) 患者様の意見・希望を取り入れた日程スケジュール表が作成でき、患者様満足度が向上した。
    (5) 在院日数が1日短縮できた。
    (6) 発生したバリアンスは患者様側要因が多く、逸脱は8%だった。
    以上のことから、内視鏡下副鼻腔手術患者様へのCP導入は有効であった。しかし、今後の課題として、バリアンスの判断基準を明確にし、変動・逸脱時の管理対策の確立が急務となった。当科では、入院患者様の50%が手術目的である。今後は、課題を早期に検討し、他の手術療法患者様にもCP導入を進めていきたい。
  • 中川 義浩
    2001 年 2 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術 (以下TKA) のクリィティカルパス (以下CP) で使用されている術後鎮痛剤を、検討し改訂を行った。TKAの鎮痛剤の使用状況は、CP改訂前は術直後にジクロフェナック坐剤を挿入した症例や、硬膜外からブピバカインだけが持続注入されている症例が多く、麻薬の使用がほとんどなく、術後痛みを訴える患者が多かった。麻酔科医に相談の結果、CP改訂後はTKA術後の硬膜外鎮痛に積極的にモルヒネを使用することになった。麻薬が使用できない場合はブプレノルフィン坐剤を術後2回ルーチンで使用することを整形外科医に提案し了承された。また疼痛時には現行どおりペンタゾシン注またはジクロフェナック坐剤を使用することにした。理学療法士と相談し、痛みがリハビリの妨げになる場合リハビリの1時間前にジクロフェナック坐剤を使用することとしCPに記載した。またモルヒネとブプレノルフィン坐剤の副作用に対応する為に、制吐剤の予防投与を提案し了承された。また医療者用のパンフレットで副作用の嘔吐と呼吸抑制を必ず確認するように依頼した。
    その結果TKAのCP (改訂前16名、改訂後22名) の術後24時間以内の鎮痛薬使用回数は、改訂前3.2回から改訂後1.9回に有意に (P=0.05) 減少した。術後21日間の鎮痛薬使用回数は14.5回から17.9回に増加した。リハビリの一本杖までの所要日数は12.5日から9.1日に短縮され、退院時屈曲は108.1度から118.9度に改善した。術後鎮痛薬の変更により、術後疼痛の改善と鎮痛薬による副作用の軽減が得られ、リハビリが順調に実施され臨床効果が得られた。薬剤師がCPに関わることは有用である。
  • 岡澤 美貴子, 田中 昌代, 中田 栄子, 折井 孝男, 磯田 礼子, 石原 照夫
    2001 年 2 巻 2 号 p. 195-198
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    NTT東日本関東病院では喘息教室において、薬剤師が吸入器具の使用方法と、吸入薬、内服薬の服用方法、および服用時の注意点などについての説明を行っている。今回、喘息教室終了後に行っているアンケート調査とカルテ上の喘息症状に関する記載から、喘息教室における薬剤師の服薬説明について評価した。アンケート調査の対象は2000年に喘息教室に参加した患者81名とした。アンケート回答は74名 (91.36%) で、このうち、71名 (96.94%) の患者から吸入方法について理解できたという回答が得られた。喘息教室に参加した81名のうち、教室参加前6ヵ月以内に発作を起こした患者52名について、教室参加前後6ヵ月間の喘息症状のコントロール状況について、カルテ調査を行った。その結果、28名 (53.8%) に改善がみられ、薬剤師の服薬説明が患者の服薬マネジメントに貢献していることが明らかになった。しかし、残りの46%の患者ではコントロール状況に改善がみられなかったため、患者個々に合わせた服薬説明を実施する必要のあることが示唆された。
  • 井川 澄人
    2001 年 2 巻 2 号 p. 199-202
    発行日: 2001/10/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    1999年2月にオーダリングシステムが導入されたが、紙媒体のカルテとの併用による情報の分散化と却って紙の印刷の増加という結果になった。そこでこれらを解決し、職員の業務の効率化と患者満足度を向上させるために全ての診療情報の電子化を図ることにした。幸いソフトメーカーの多大なる理解・協力も得られ結果的にペーパレス電子カルテが完成し、とりあえずは初期の目的が達成されたと考えれられる。電子カルテの運用により医療情報の一元化が可能であり、業務の効率化と患者満足度の向上という結果を生み出した。更に職員間ひいては職員と患者様との情報の共有が可能になった。入院部門等では電子化された情報をベッドサイドでデータの参照と入力を一気に可能にした無線LANが非常に有効な方法として利用できた。また職員間でのカンファレンスにも広く利用可能となり、その利用範囲の拡張にも繋がった。今後はこの電子化を利用した病・病、病・診連携システムの構築が可能になると考える。
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