医療マネジメント学会雑誌
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3 巻, 4 号
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  • KNSによる泌尿器科病棟の分析
    田中 彰子, 嶋田 幸子, 久保 瑞恵, 油谷 和子, 松野 時子, 金田 幸淑, 小島 恭子
    2003 年 3 巻 4 号 p. 609-613
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    【研究目的】クリティカルパス (以下CP) 導入前後の直接ケア時間の変化を明らかにする。
    【調査方法】 (1) KNS (Kitasato Nursing System) の看護量測定ツールを用いて、泌尿器科病棟 (CP運用率36.1%) のCP導入前後を比較した。 (2) CP導入前後ともに勤務していた看護師11名の業務の実感をアンケート調査した。【調査期間】CP作成が急速増加した時期を基点に、導入前1998年4月~2000年7月、導入後2000年8月~2002年1月とした。【結果】平均在院日数は導入前17.2日、導入後12.7日、病床回転数は前1.8回/月、後2.4回/月、病床稼働率は前95.2%、後91.1%、1日取扱患者数は前36.3人、後34.7人であった。KNSから1日総直接ケア時間を算出した結果、CP導入前3418分、後3204分であり214分減少した。患者1人あたりの1日直接ケア時間を比較すると、前94.2分、後92.3分、1.9分の減少であり、有意な差はなかった。【考察】CP導入後の直接ケア時間への影響として以下の要因が考えられた。1) 治療の標準化: 点滴中止や膀胱留置カテーテル抜去が早くなったことによりセルフケアが早くすすんだ 2) CP導入により指示受け・引継ぎ・看護記録などの間接看護業務の改善が直接ケアの余裕を生み出した 3) 腹腔鏡下手術の増加: 術後侵襲が減少し、離床が早くすすんだ。
    以上のことから、CP導入は直接ケア時間を減らすことはなく、看護業務の効率化をもたらし、結果的に平均在院日数の短縮や病床の効率化にっながることが示唆された。
  • 吉田 正, 池澤 和人, 設楽 佐代子, 牧野 維斗映, 青柳 啓之, 丸山 常彦, 小関 迪
    2003 年 3 巻 4 号 p. 614-619
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    [目的] 大腸ポリペクトミーは、大腸腺腫や早期大腸癌の治療として一般的なものであるが、そのマネージメントは施設差が大きい。当院においては、1998年より大腸ポリペクトミーに対してクリティカルパス (CP) を導入し1泊入院で施行していた。今回日帰り手術へ移行することを目的としてCPのバリアンス解析および偶発症の発生率について検討することにした。 [方法] 1泊入院のCPを導入し、2年間のバリアンスおよび偶発症について解析した。その結果をもとに日帰り手術のCPを作成した。また、日帰り手術への移行前後におけるポリペクトミー件数の推移について検討した。
    [成績] 1泊入院のCPを使用した症例は260例であった。切除したポリープの大きさは5mmから30mmであった。1回の切除ポリープ数は1個から5個であった。偶発症は10mmのポリープを1個切除し4日目に出血した1例のみであった (発症率0.38%) 。日帰り手術205例において合併症は認あられなかった。日帰り手術に移行する前後でポリペクトミー件数は140例/年から205例/年と前年比46%の増加となり、大腸内視鏡全体でも525件/年から641件/年と前年比22%の増加となった。
    [結語] CPのバリアンス解析により、1泊入院で施行していた大腸ポリペクトミーを日帰り手術に移行することが可能であった。日帰り手術としたことにより患者負担が軽減し大腸内視鏡件数の著明な増加を認めた。
  • 瀬戸 僚馬, 渡辺 加奈子, 武藤 正樹
    2003 年 3 巻 4 号 p. 620-624
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    わが国の医療にクリティカルパス (以下、パスと記す) が持ち込まれてから5年が経ち、病診連携や医薬品情報提供など病院を超えて広く活用されるようになった。今後は、保健医療分野の情報化の一環として、パスを電子カルテに組み込むことが期待されるが、そのたあにはパスに用いる用語・コード体系を標準化することが必要となる。そこで、文献から既存のパスを抽出し、標準化ケアカテゴリーの試案を作成した。
    文献上、一つのパスは平均13.3±6.36個のケアカテゴリーで構成されていた。半数以上のパスで用いられているケアカテゴリーは、出現頻度順に「検査」「食事」「排泄」の3個であった。同様に25%以上でも「清潔」「栄養」「安静度」「処置」「指導」「リハビリ」と計9個であった。これらは、医療情報システム開発センターや専門学会によって標準化が進められている項目もあるが、領域横断的な用語、診療報酬との関連性が低い用語、日常生活支援に関する用語では標準化が遅れる傾向にあった。また、アウトカムに関する用語が明記されているパスが比較的少なく、単なる作業工程表として用いられている可能性が示唆された。
    標準化ケアカテゴリーの試案としては、 (1) アウトカム、 (2) 検査、 (3) 栄養、 (4) 清潔、 (5) 排泄、 (6) 安静度、 (7) 処置、 (8) 指導、 (9) リハビリテーション、 (10) 薬剤の10カテゴリーを提案する。
  • 中嶋 満枝, 佐藤 久子, 西村 純子, 浅沼 拓, 長嶋 英幸
    2003 年 3 巻 4 号 p. 625-628
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカルパス (以下パスと略す) は達成すべきアウトカムによってゴールが決あられる。1日毎であっても数日枠やフェーズ毎のパスにも、その間のアウトカムがあるはずである。アウトカムはデーターの集計結果や各種ガイドラインなどの科学的根拠に基づいたもので、使用するものにとって明確で具体的でなければならない。今回はパスの経過が予定どおりに進行しているのか、どこで何が起きているのか、原因は何か、バリアンスが正なのか負なのかをグラフに示す事を試みた。その結果パスの経過が一目で把握できるバリアンスグラフとなり、院内8種類の各パスに試行できた。縦軸にはパスデー毎のアウトカムを置き、横軸は時間軸の日数とした。バリアンスの要因は4つに分類し、さらに8項目の分類キーを設けた。発生したバリアンスをグラフに記入することでバリアンス集計に役立てる事ができた。グラフは、バリアンスの有無と原因を把握するだけでなく、どの個所をどの程度修正すべきパスなのかが誰の目にも分かり易くなった。その結果早期に適正な在院日数とアウトカムを見出し、より使い易いパスに修正できた。バリアンスグラフについての具体的方法とその意義と効果、問題点について報告する。
  • 梨本 篤, 藪崎 裕, 滝井 康公, 土屋 嘉昭, 田中 乙雄
    2003 年 3 巻 4 号 p. 629-634
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    胃疾患に対する縮小手術が増え、胃癌や胃粘膜下腫瘍に対する胃部分切除 (PG) や腹腔鏡下手術に対するクリティカルパス (CP) が必要になってきた.そこでCP未施行37例を対象に周術期の諸項目について分析した。【結果】入院日数は中央値16日 (9-25日) 、術後日数は10日 (8-19日) 、点滴輸液は5日 (3-10日) とかなり幅がみられた。しかし、経鼻減圧管抜去は第1病日、硬膜外チューブ、導尿カテーテル抜去は第3病日であり、水分開始2日目、食事開始3日目、抜糸7日目はほぼ同様であった。【CP作成】分析結果を参考にしてPGに対するtime-task matrix方式のCPを作成した。縦項目に検査、薬・点滴、治療処置、観察、食事、活動、清潔・排泄、安全、教育・指導・IC、チェック項目、バリアンス、実施者サインを設け、横項目に入院日から退院日までの期間を設定した。医療者用には口によるチェック方式を用い、主治医のサインを得て始動する。チーム医療を念頭に置き、主治医、麻酔医、看護師、薬剤師、栄養士など各部門の連携をCPに組み込んだ。術前2日前入院、術後8日目退院とし、抗生剤は1日法とした。食事は3日目に開始し、3分粥から1食上げとして全粥までとした。原則として全例にCPを適応する方針とした。まだ、5例に適応したのみであるが、術後ほぼCP通りに経過し医療要因のバリアンスはなく、PGに対しては妥当なCPであると思われた。
  • 石橋 克彦, 菅田 賢治, 杢重 和枝, 岩森 洋, 光波 康壮
    2003 年 3 巻 4 号 p. 635-642
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    インシデント報告活動をより効果的に行うため、その分析を行うと共に全職員を対象にアンケートを実施し、職種間の差違を検討した。
    当院 (252床) では6ヶ月で641件のインシデント報告があり、看護科が半数 (55.7%) を占めた。スタッフ一人あたりの報告数は薬剤科が最も多く、医師が最も少なかった。アンケートによると、全体の78.1%でインシデント報告の提出経験があり、医師、事務局、食養科で提出率が低かった。インシデント報告の提出理由としては、患者と直接向き合う職種である放射線科、歯科、リハビリテーション科、看護科では自己反省の意識が強く、検査科、看護科、医師では業務の簡素化を望む声が強い。インシデント報告提出を阻害する要因として、多忙であることと報告すべきかどうか不明な事例であったとの回答が多く、特に事務局、食養科で後者が顕著であった。
    看護科を部署別に検討すると、インシデント報告を出す理由として自己反省をあげた部署、また同僚・先輩に言われて書いた率が高い部署ほど一人あたりの報告数が多く、草の根的意識が提出数の増加に結びつくものと思われた。一方得られた情報を日常業務に還元するには上司の働きかけも大切であった。インシデント報告活動はナレッジマネジメントの一種であり、暗黙知が形式知として認知されるためには、草の根的手法と組織としての指導力のいずれもが必要である。
  • 《個人の努力からの脱却》
    下村 裕見子, 上塚 芳郎, 加藤 多津子, 岩本 安彦
    2003 年 3 巻 4 号 p. 643-649
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    診療情報提供等を通じて、密接な信頼関係を築いていくことは、円滑な医療連携体制を構築していく上で重要な課題である。そこで今回、返書に関する現状把握を行うとともに問題点の洗い出しを行った。紹介医から地域連携室に苦情として寄せられる事例と医師が危惧を感じている事例は同一であった。また返書ルールが確立していないこと、医師個人の努力に頼って返書管理システムとしてのサポート体制が敷かれていないことに起因していることが明らかとなった。
  • 中山 理一郎, 依田 啓司, 山中 修, 本田 守弘
    2003 年 3 巻 4 号 p. 650-653
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    質の高いインフォームドコンセント (以下ICと記す) を目指し、本院独自のクリティカルパスのビデオ化を進めビデオパスと称している。その有用性を検討するために急性心筋梗塞ビデオパスを用いボランティアによる検証を行った。説明内容について試験を実施し、理解度を客観的に判断した。ビデオという視覚を含めた説明は、被験者に病態や入院診療内容の理解を高める上で有用な方法であることが示唆された。しかし、医師と直接フェースツーフェースの説明も重要であることが分かった。ビデオパスを含めた様々な方法を用いてICの充実を図っていくことは有用だと考えられる。
  • 小泉 由貴美, 本山 博恵, 伊藤 律子, 荒川 美和子, 秦 温信, 関谷 千尋, 佐野 文男
    2003 年 3 巻 4 号 p. 654-656
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院では、医療の質向上と効率化を目的に、平成10年3月に診療委員会の中にクリティカルパス小委員会を設置した。パス導入は、同年6月『白内障手術』から開始した。作成開始後4年を経過した平成14年2月までに検査・手術・化学療法など、51種のパスが完成している。しかし、実際の運用に当たっては解決すべき点が少なくない。これまでの経過から、パスの作成・運用の問題が明らかになり改善に取り組んだ。パスは部署ごとに作成していたので形式・用語が統一されてない。そのため、患者が理解困難な用語があり、ICの目的が達成されていないことが問題となっていた。改善のため『クリティカルパス作成基準』を作成し、パスの形式を統一することができた。また、看護師中心に作成していたため、治療内容や診療報酬に関する追加が不十分であった。改善のため、10部署別に薬剤師・医事課職員などを加えたワーキンググループを編成した。これにより、提供する医療サービスの内容を広げることができた。しかし、パスとオーダーリングシステムが連動できていないため、入力やパス評価が効率的に活用できない課題が残されている。
  • 戸崎 かをり, 村上 多寿子, 氏家 智恵美, 加藤 洋子
    2003 年 3 巻 4 号 p. 657-660
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院では平成13年7月9日にデイサージャリー (以下DSと略す) センターが開設された。日帰り手術を受ける患者の不安軽減と質の高いかっ均一なケアの提供のたあに、クリティカルパス (以下CPと略す) 導入とケアコーディネーターの配置がなされた。大きな特色として (1) 全疾患にCPを使用 (2) 外来にて入院予約の時点から退院まで、ケアコーディネーターが継続した関わりを持つことが挙げられる。CPシートの作成など、立ち上げまでの準備はスタッフが一丸となって行ってきた。また、笑顔で優しくをモットーに患者やその家族の方達の精神的な支えとなることを心掛けてきた。開設から1年が経過し、患者やスタッフの声から、DSにおいてCPとケアコーディネーターの役割が重要であると再確認できた。今後は新たな課題を検討すると共に、日帰り手術の良さをアピールし普及に努あたい。
  • 見やすい使いやすいクリティカルパスを目指して
    園田 良子, 萩倉 祐子, 角田 久美子, 日高 てるみ, 中井 理恵, 小門 裕子, 永井 規子
    2003 年 3 巻 4 号 p. 661-663
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    クリティカルパス (以下CPとする) は我国の医療の質の向上の為に、必要不可欠なものとなってきている。当院では平成13年4月より、CPを導入した。今後CPを活用させて行く為には、問題点を明確にし、改善していく必要性を感じた。そこで、今回アンケート調査を行い、スタッフの意見を反映させることで、より見やすく、使いやすいCPとなり、CP本来の目的を再確認することができた。
  • 真野 俊樹, 水野 智, 小林 眞, 山内 一信
    2003 年 3 巻 4 号 p. 664-667
    発行日: 2003/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    広告や情報提供は、消費者の必要に対応しなければならない。しかしながら、消費者や患者がどんな情報を必要としているか、という調査は少ない。今回われわれは消費者に対して、医療情報についてのアンケート調査を実施したので報告する。
    信頼できる情報源について「第三者機関」を望む意見が大きかった。これは、消費者が客観的な評価を期待していることの現れであろう。たとえば、日本では1995年から日本医療機能評価機構が医療機能評価をはじめているが、認定を受けた病院数が日本の全病院の1割にも満たない状況である。
    また希望する医療情報提供については、医療機関からの情報を望むものが圧倒的多く、医療機関の広告・広報活動に対する期待の大きさを裏付けた。日本でも医療機関の広告規制緩和は徐々に進みつつある。しかし、一方で広告は、無駄な医療需要を作り出す恐れもある。適切な広告規制緩和が望まれる。
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