医療マネジメント学会雑誌
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4 巻, 4 号
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  • 武藤 正樹
    2004 年 4 巻 4 号 p. 476-480
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    平均在院日数の短縮やDPC (疾病群別包括支払い制) の導入の環境下では、病院低栄養による在院日数延長を防ぐために、体系的な栄養ケアマネジメントの導入が喫緊の課題である。このため栄養関連のクリティカルパスである栄養パスが注目されている。本稿では、栄養パスに関する全国アンケート結果と、栄養パスの以下の10のポイントにっいてのレビューを試みた。
    (1) 栄養ケアマネジメント (NCM) がパスに組み込まれていること、(2) 栄養パスは作成時に栄養に関連したガイドラインやエビデンスが参照され、それに基づいて作成すること、(3) 栄養パスと栄養に関する診療ガイドラインとの併用、(4) 栄養パスの治療の一環としての情報開示、(5) 栄養アウトカムの設定、(6) 栄養バリアンスの設定、(7) 臨床インデケイターの設定、(8) リスクマネジメントへの応用、(9) DPCへの栄養パスの対応、(10) 栄養電子パスへの対応。
  • 芳賀 克夫, 宮崎 久義
    2004 年 4 巻 4 号 p. 481-487
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    EBMは1990年代に提唱された概念で、最良の臨床アウトカムを得るために、最大限のデータを集めて診療に応用しようというものである。この目的は、アウトカムを重視するクリティカルパスと相通ずるものがある。従って、クリティカルパスはEBMを実践する最良の場であると言うことができる。EBMを実践するには、情報の収集や情報の批判的吟味など5つのステップがある。得られた情報を分析する際には、evidenceの水準を考慮することが大切である。この水準の判定には、オックスフォード大学のEBMセンターの分類が、具体的で有用である。現在得られる最高水準のevidenceを活用することこそがEBMである。注意すべき点は、EBMを実践するときに、患者の多様性、価値観を無視してはいけないことだ。決して画一的な医療cookbook medicineを行うのではなく、眼前の患者の個性を考慮して、診療に当たるべきである。クリティカルパスに於いても、患者の状態がそぐわないと判断した場合は、指示内容を迷わずに変更する姿勢が重要である。本稿では、EBMの概念、手法を解説した後に、当院に於ける経験を基にEBMの効用について述べる。
  • 佐藤 千穂, 高橋 良子, 安部 久美子
    2004 年 4 巻 4 号 p. 488-491
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当病棟における、腹式単純子宮全摘出術 (以下ATH) を受けた患者を対象とし、松下の言うクリティカルパスの評価領域より「成果」及び「効果」領域についてクリティカルパスの効果を評価した。
    平成11年1月から平成14年12月までにATHを目的として入院した患者162例について、1. 臨床的効果、2. 患者満足効果、3. 経済効果について測定した。結果は、平成11年と平成14年を比較すると、平均在院日数は4.9日減少、入院費総額は平均9.7%増加し、患者1人1日当たりの診療収入は19.7%増加した。また、患者アンケート調査の結果、患者用クリティカルパスの内容、必要性、クリティカルパスを説明する看護師の対応については、全員が「満足」と回答した。患者用クリティカルパスを使用することでインフォームドコンセントが充実し、患者満足度を高めることができたと考える。また、医師、看護師、薬剤師、医療事務担当者との共同作業によるクリティカルパスの改善が、在院日数の短縮及び診療収入の増加に結びついたと評価する。
  • 大箭 彰, 梨本 篤
    2004 年 4 巻 4 号 p. 492-496
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院では、予防的抗菌薬の投与期間を術後3日目までから手術当日のみへ短縮した幽門側胃切除術のクリティカルパスを試用している。このクリティカルパスの妥当性について、術後合併症 (特に感染症) を中心に比較検討した。【対象】幽門側胃切除術を受けた2001年1月から10月までの109例を術後3日投与群 (A群) 、2001年10月から2002年10月までの137例を1日投与群 (B群) とした。使用抗菌薬は主にフロモキセブ (FMOX) で、手術当日は1gを手術直前と術後の2回点滴投与 (A群、B群) 、術後3日間は1g×2/日を点滴投与 (A群) した。【結果】1. 背景因子ではB群で男性が有意に多かったが、年齢、Stage、手術内容、術後入院期間等に差はなかった。既往症はB群の有病率が有意に高かった。2. 術後合併症はA群21.1%、B群19.0%と差はなかった。感染症に限っでも両群に発症率の差は認められなかった。3. 術後3日間の発熱推移でも差はなかった。また、術後熱発症例 (術後4日目以降の37.5℃ 以上) もA群で24.8%、B群で31.4%と差はなく、抗菌薬再投与率もそれぞれ10.1%、19.7%と差はなかった。4. 白血球数とCRPの推移ではともに術後7日目でB群の方が高値を示した。B群に膵炎合併例が多かったためと考えられた。【結語】予防的抗菌薬投与を1日とした幽門側胃切除術のクリティカルパスは妥当であり継続使用が可能と考えられた。
  • 外来待ち時間の分析
    松本 武浩, 木村 博典, 山田 久美子, 古賀 満明, 向原 茂明
    2004 年 4 巻 4 号 p. 497-501
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    国立病院長崎医療センターは2002年3月より病棟部門においてオーダーエントリーシステムを導入した。同年10月の外来部門運用開始に伴い、待ち時間分析を行い、医療の質向上への効果を検討した。対象は2002年10月より翌年4月までの毎月第3週に国立病院長崎医療センターを受診した21,486例中、分析可能だった15,185名。システムに自動記録された受付時間と会計時間の差分から平均院内滞在時間を算出した。期間内の平均は1時間45分であり、初診が2時間21分に対し、再診では1時間41分だった。診療科別では、最も平均滞在時間が長かった診療科が2時間12分、最も短かった診療科では1時間6分であり、その差は1時間6分であった。月別にみると、総平均院内滞在時間は徐々に減少しており、開始後前半3ヶ月と後半3ヶ月を比較したところ、17診療科中11診療科で最大34分の時間短縮がみられた。システム導入前に、外来運用フローを抜本的に見直し、曖昧だった医師、看護師、事務職員の業務分担を明確にした。診療科によっては医師の負担は増えた上、新たな操作が加わることにより待ち時間増加の懸念もあったが、結果として院内滞在時間は減少した。一方で医師のサポート業務から開放された外来看護師は、個々の業務が効率化し、外来看護ケアの時間が増えた。情報システム導入の効果を明確に示した報告は少なく、費用対効果が疑問視される中、当院において改善がみられた理由は、導入前の運用フローの見直しとそのシステム化によってもたらされたものと考えた。
  • 実践ビデオを使ったトレーニングの効果
    山口 幹江, 平岡 真由美, 河野 敬子, 佐野 恵子
    2004 年 4 巻 4 号 p. 502-505
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    国立熊本病院では、これまでに注射インシデントの発生要因を分析して、院内の事故防止マニュアルやフローチャートを改訂し、注射事故防止にとり組んできた。しかし、注射液をミキシングする時や、患者と点滴を確認する時に、フローチャートどおりの「声出し確認」が実践できていないという現状であった。
    そこで、当院の注射フローチャートに沿った「声出し確認」の実践ビデオを作成し、そのビデオを使用して病棟に勤務する看護師を対象として安全教育を行い、教育前後の行動の変化を質問紙調査により比較検討した。その結果、有意差は認めなかったが、わずかながら「声出し確認」の実施率が向上した。また、「声出し確認」の重要性が認識できたという反応が得られた。
    従って、ビデオを使った教育を行うことは、注射事故防止のための教育に有効である可能性が示唆された。
  • 泓 ヨシ子, 内海 文子
    2004 年 4 巻 4 号 p. 506-511
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    2000年4月より介護保険制度が開始となった。当通所リハビリテーションは、院内で唯一介護保険からの介護保険報酬を受けている。介護保険は介護度に応じて、介護報酬が支払われる仕組みとなっている。今回、看護サービスを活動レベルで捉えABC理論に基づく看護活動原価調査を行い、経営効果のある介護度を知り、経営管理の一考にしたいと考えた。活動内容は殆どが直接援助であった。活動時間の長い項目は、介護度1/2/3では「自立への援助 (ゲーム・工芸) 」「機能訓練」介護度4/5で「精神的安楽」「自立への援助」「症状観察」であった。賃率は看護師の場合59円、看護助手は21円であり、看護助手の賃率は看護師の約1/3であった。看護活動消費原価と介護報酬を比較すると、介護度1は2,915円、介護度2は2,874円、介護度3は4,598円介護報酬の方が上回っていた。介護度4は183円、介護度5は1,412円、看護活動消費原価のほうが高かった。介護度1/2/3の利用者の獲得は経営に効果があり、特に介護度3の利用者獲得が望ましいといえる。看護活動原価は活動時間と賃率によって決まる為職種の配置を検討する事によって原価管理が可能である。
  • 野田 千代子, 冨田 栄一, 世登 良, 鷹津 久登, 伊藤 隆夫
    2004 年 4 巻 4 号 p. 512-518
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    当院では、平成14年4月に地域連携部を設置し、地域医師会との連携を重視した活動を行った。紹介患者のデータベースを作成・管理することにより連携先からの問い合わせにも迅速な対応ができるようになり、FAXによる診察や各種検査の予約を推進させることで患者の診療待ち時間が短縮された。紹介患者を追跡調査した結果、紹介元医療機関への戻し紹介率は2ヶ月後には約80%とほとんどの患者が当院での治療を一通り終えていた。平成14年度の戻し紹介率は75.9%で、戻し紹介率は部長以上は高く、また科別の差異もみられた。初診患者数は大きく変化していないものの、紹介患者数は増加し、従って紹介率も27.5%から34.2%へ上昇した。病床利用率は、年度ごとに若干の低下が認められているが、平成14年度も平均97.0%と高かった。一方平均在院日数は、平成13年度の19.0日から平成14年度は17.2日へと短縮されていた。平成14年12, 月から岐阜県医師会主導のFAXによる検査予約・診察予約の導入により、それまで1-2時間であった紹介初診患者の待ち時間が大幅に短縮された。今後の課題として、1) 紹介元医療機関への戻し紹介を徹底し、連携を充実させる、2) 高額医療機器の共同利用の推進、各種検査予約・診療予約の簡素化を図る、3) FAXによる検査・診察の予約を広く利用されるよう広報活動を行う、4) 救急患者のスムーズな受入れ体制を整える、5) 地域の医療機関とのネットワークを構築し、重複した検査、治療がないように努める、6) 逆紹介を推進し、入院患者の退院調整や転院先への相談などにも力を注ぐ、7) 在宅医療の推進などが考えられた。
  • ファイルメーカーProの挑戦
    吉田 茂, 橋本 裕美, 楢林 成之, 三舛 信一郎, 中村 徹
    2004 年 4 巻 4 号 p. 519-524
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    デジタルデバイド (digital divide) とはパソコンやインターネット等の情報技術 (IT) を利用する能力およびアクセスする機会を持つ者と持たざる者との間に情報格差が生じるとされる問題である。米国では既に1990年代半ばから論議されていたが、近年我が国でも一般IT分野ではその重要性が叫ばれている。
    一方、急速に押し寄せた医療界のIT化の波に乗り遅れた医療機関にとってデジタルデバイドはまさに死活問題である。只でさえ医療制度改革の波に呑まれ厳しい状況に置かれている中小規模の病院では、大規模病院や公的病院と違って巨額を投じて電子カルテシステムやHIS-RIS-PACSなどの医療情報システムを導入することは容易ではない。しかしながら医療界のIT化の波は避けて通ることは出来ず、波に乗り遅れることは病院の生き残りを賭けた生存競争に敗れることを意味する。
    当院では2000年より市販データベースソフトであるファイルメーカーProを用いた医療業務支援システムを病院全体に構築し、診療の質の向上、医療効率の改善、患者満足度の向上などに寄与してきた。
    本稿では当システムを紹介し、その利点を述べるとともに、医療のIT化の嵐の中で中小規模病院の進むべき方向性にっいても考察を加えた。
  • 村井 真由美, 内藤 義博, 小池 耕一, 宮崎 いく子, 菊池 喜博, 手塚 文明
    2004 年 4 巻 4 号 p. 525-528
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    新GCPのもとで、治験を適正かっ円滑に実施していく為には、CRC (クリニカル・リサーチ・コーディネーター: 治験コーディネーター) の協力は必要不可欠と言われている。しかし一般にはCRCという言葉自体が耳慣れず、その業務内容も不透明といった印象が強い。CRCの活動は治験チームのコーディネーションを中心にその業務は多岐にわたり、データおよび情報のマネージメントも必要とされる。平成14年度の当院におけるCRCの業務内容を件数で分析したところ、「被験者への対応」が36%、「データチェック、プロトコールに沿った検査スケジュールの管理」が25%、「記録」が19%、「IC (インフォームド・コンセント) の補助」、「CRF (症例報告書) の記載」がそれぞれ5%、「電話相談および電話連絡」が4%といった結果であった。しかしこれらの業務は一つ一つが独立しているのではなく、全てが関連し、コーディネートされることで一つの結果、もしくは援助が導き出される。つまりCRCとして被験者を正しく観察し、充分なケアをすることは患者の安全性を確保することにつながり、更には信頼関係を築かせることになる。また、知り得た情報を他のスタッフと共有することで、患者に還元される医療の質および、治験における品質管理もさらに向上すると考える。今後治験をコーディネートしていく上で、治験における “情報の共有化” という一つの課題を見出した。
  • 小林 利彦, 川勝 純夫, 岡崎 博
    2004 年 4 巻 4 号 p. 529-533
    発行日: 2004/03/01
    公開日: 2011/03/14
    ジャーナル フリー
    介護保険制度が導入されてから、介護療養型施設での身体拘束は原則的に禁止となったが、現場では身体拘束そのものの解釈を含めいまだ混乱している。平成13年3月に厚生労働省でまとめられた「身体拘束ゼロへの手引き」によって、身体拘束の具体的行為は明確となったが、その基本的な概念は不明瞭なままである。当院は静岡県の一介護療養型医療施設であるが、平成13年4月に院内に「身体拘束をしない委員会」を設立し、今回、当院独自の基本指針 (ガイドライン) を作り上げた。本指針の特徴は、身体拘束の各種行為を5段階に評価分けした点にある。建物・施設レベルでの拘束 (第1段階) には異論があるかもしれないが、身体拘束を全廃できなくても、より低い段階への移行を目指すことを可能にした。また、本指針では、入院時の転倒・転落リスクの評価、入院後の経過観察と個別的な対策、身体拘束実施時の手続きと定期的な見直し、そして居住環境、福祉機器といったハード面の改善にまで言及した。現在、身体拘束の廃止は介護保険施設にて問題視されているが、将来的には急性期病院にも波及する医療マネージメントと考えられ、早急な対応を検討する必要があると思われた。
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