手術における患者取り違え, 部位誤認, 手術方法誤認は, 発生頻度は稀であるが, 発生した場合に患者に多大な障害を与える重大な事象である.
今回, 米国退役軍人省が開発して関連病院に周知徹底している5ステップの患者・部位誤認防止システムの有用性に関して検討した. この方法とは, まず手術の前には, インフォームド・コンセントの書類の確認, つまり, 患者の氏名, 手術部位, および手術施行理由などの記載確認 (ステップ1) と, 手術部位へのマーキング (ステップ2) が必要である. 次に, 手術室入室直前に, 患者の氏名, 生年月日, マーキング部位を手術スタッフが患者と会話することで確認する (ステップ3). そして, 執刀直前には, “タイム・アウト” と称して, 手術チーム内で手術すべき正しい患者か, マーキング部位や手術方法, 移植臓器の確認 (移植手術の場合) などをする (ステップ4). そして, 最後に2名以上の手術スタッフで画像データを確認し, 正しい患者のものか, 患者データのラベルは適切か, などを確認した (ステップ5) 後に執刀となる. この方法は, 簡便でしかも費用がかからず実行可能にて, 患者・部位誤認などの発生減少には, 適切な方法と考える.
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