本研究は,ワークブックを使用する大学一般教養体育授業が受講者の主観的な理解度や健康行動の実践度に関する質問項目のスコアをより効果的に高め得るか,Faculty Development(FD)委員会が実施している授業アンケートの観点から検討することを目的とした.調査対象者は,大阪工業大学において2012年度に「健康体育Ⅰ・Ⅱ」を受講した2,060人の大学生とし,各学科別に学生の選択希望種目を基にして無作為に,通常授業群(N群,996名)とワークブック授業群(W群,1064名)に振り分けた.最後(15回目)の授業時(講義)に,無記名選択式の調査用紙を用いてFD授業アンケート調査を実施し,アンケートを回収することができた1,899名分のデータ(N群900名,W群999名)を解析対象とした.その結果,授業時間外学習の項目(問4, P < 0.01),理解度への配慮(問7, P < 0.01)や教員の声の聞き取りやすさ(問8, P < 0.01),黒板やスクリーンの文字等の見やすさ(問9, P < 0.01),主観的な理解度(問12, P < 0.01),健康行動の実践度(問13, P < 0.01),交友関係の開始や深まり度(問14, P < 0.01)といったW群の7つの質問項目のスコアは,N群のそれに比して,有意に高値を示していた.また,全質問項目(14項目)の平均スコア,FD委員会の授業アンケート11項目の平均スコア,研究室が独自に設定した質問3項目の平均スコアも,W群の値の方が有意に高かった(すべてP < 0.01).以上のことから,ワークブックを使用する大学一般教養体育授業は,通常の体育授業に比して,授業時間外学習を増大させるとともに,受講者の主観的な理解度や健康行動の実践度,交友関係の開始や深まり度をより効果的に高める得ることが,FD委員会の授業アンケートの観点から明らかとなった.
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