大学体育学
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3 巻
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表紙、目次など
原著論文
  • 木内 敦詞, 荒井 弘和, 浦井 良太郎, 中村 友浩
    2006 年3 巻 p. 3-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、身体活動ピラミッド(Corbin & Lindsey,1997)の概念と行動変容技法を取 り入れた半期の体育授業が、日本の大学の初年次男子学生(N=322)の身体活動量に及ぼす影響を検討することであった。非介入群(N=156)は「健康関連体力テスト2回」「講義1回」「スポーツ活動9回」を含む授業を受講し、介入群(N=166)はそれに加えて身体活動増強のためのプログラム「身体活動ピラミッドの概念学習」「行動変容ワークシートの実践」「日常における身体活動状況のモニタリング」を含む授業を受講した。受講の前後で日歩数は変化した(非介入群7841±2965歩- 7693±2781歩[-1.9%]、介入群7890±2821歩-8546±2861歩[+8.3%])。分散分析の結果、非介入群に 対する介入群の日歩数増加が示された。この介入群における日歩数の増加は、平日よりも休日の歩数増加に起因していた。身体活動評価表(涌井・鈴木,1997)を用いて受講前・受講後・追跡期における身体活動パターンを検討した結果、低い強度の身体活動量「日常活動性」ではいずれの測定時期においても両群に有意な差異は認められなかった。一方、中等度以上の強度の身体活動量「運動・スポーツ」では、受講後において非介入群に対する介入群の有意な高値が示されたが、受講終了3カ月後の追跡期では、「運動・スポーツ」における両群間の有意な差異は示されなかった。結論として、身体活動ピラミッドの概念学習と行動変容技法を取り入れた体育授業は、受講期間中、日本の大学の初年次男子学生の身体活動を増強することが明らかとなった。

  • 笹原 妃佐子, 大岩 雅子, 河村 誠, 笹原 英夫
    2006 年3 巻 p. 15-23
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    某大学において,平成13年5月25日より6月8日までの間に開講された全てのスポーツ実習(体育実技)の授業に対して,満足度に関する質問紙調査が行われた。本研究では,その調査により得られた1009名分の回答を分析対象とし,大学体育の意義を検討した。

    授業の満足度に関する質問の回答を因子分析した結果,5つの因子が抽出された。以下にその5つの因子とそれぞれを構成する質問を示す。

    1.スポーツの楽しさの因子…「この種目が好き(質問1)」など

    2.教員指導性の因子…「適切な指導だ(質問4)」など

    3.友人関係の因子…「友人ができた(質問10)」など

    4.出席意欲の因子…「しっかり出席した(質問8)」など

    5.第5因子は属する質問が一つしかないため命名しなかった。

    次にこの5つの因子と性別,学年の7変数を目的変数,授業に対する最終判定と考えられる「この授業を評価すると,最高点がつけられる(質問13)」に対する回答を目的変数としてLogistic回帰分析を行った。その結果,5つの因子は全て最終判定に対して大きな影響力を有していた(全てp<0.01)。また,性別は最終判定に影響しなかったが,学年は影響しており,2年次は1年次より授業に満足していた(p<0.05)。

    これらの結果から,大学生はスポーツ実習に対し,楽しさや新しい友人関係を結ぶことに意義を感じていることが示された。そのため,大学体育では,生涯スポーツへの導入や人間関係の構築を通した心と体の健康づくりに意義をおくべきであると考えられた。

  • -行動変容技法の導入-
    橋本 公雄
    2006 年3 巻 p. 25-35
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,1年生前期に行われる「健康・スポーツ科学講義」の中で,行動科学に基づく運動行動変容技法を指導し,身体活動や運動・スポーツ活動の運動行動が促進できるかどうか調べることであった.対象者は1年生男女344名であり,1クラスを介入群,3クラスを非介入群とした.介入群にはセルフ・モニタリングノートと歩数計を全員に配布し,運動行動変容技法が前期の前半で指導した.運動行動の指標として,主観的身体活動量,Kasari(1976)の身体活動指標(改訂版),行動変容のステージ,歩行移動と階段利用の頻度を用いた.また,運動行動の促進への行動変容技法や講義の有効性について調べた.その結果,介入群では,運動行動の促進に歩数計やセルフモニタリングノートは役立っており,講義も非介入群より運動行動の促進に「役立った」と回答した者が多かった.このことから,講義は認知的介入の機能を果たしていることが指摘された.また,主観的身体活動量の増加,上位ステージへの移行,講義の有益性では介入効果がみられたが,実際の行動面(運動量得点,歩行移動頻度,階段利用頻度)では顕著な相違はみられなかった.本研究では,運動行動変容技法の指導効果は部分的に支持された.また,運動行動の促進に対する意識と実際の行動とのズレ(非一貫性)が生じる原因について論議され,今後の方法論的問題が指摘された.

  • 工藤 和俊, 飯野 要一, 松本 秀夫
    2006 年3 巻 p. 37-44
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    日本では2004年度より、大学の自己点検・自己評価および第三者評価の実施が義務化され、大学におけるファカルテイ・ディベロップメント(FD)活動推進のために、授業に対する学生の意見を考慮することが必要になった。このため、学生による授業評価を行う大学が急増したことから、さまざまな科目についての評価を比較することが可能になった。

    そこで本研究では、授業評価の評価値を、体育関連科目とそれ以外の共通科目について比較検討した。 その結果、体育関連科目は他の共通科目に比べて有意に学生の評価が高いことが、様々な地域から得られた資料により明らかとなった。この結果は、体育関連科目を担当する教員の教育活動実績を評価する上で重要な資料になると思われる。

    一方で、学生による授業評価という方法は、膨大なコストと手間を要する方法である。したがって、授業改善のための有効かつ効率的な方策を新たに考案し、評価機関に対して積極的に提案していくことも、FD推進にとって今後重要になると考えられる。

事例報告
  • 渡辺 英次
    2006 年3 巻 p. 45-53
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    週1回の体育実技授業とあわせて,インターネットを利用して展開する授業を試み,作成したWebサイトについて,授業終了時に利用回数の集計とアンケート調査を行った.

    結果,Webサイトの利用頻度は1人平均約10回であったが,Webサイトの必要性は概ね必要であると考える学生が多かった.自由記述では,レポート課題の告知,休講の連絡については便利であったという回答が多かった.また,昨年度の受講生でバドミントンを続けている学生から,Webサイトにアクセスして動画をみたという連絡もあった.なお,Webサイトに入る際のパスワード設定を簡便なもの,もしくはなくしたほうが良いという意見や,動画や写真についての希望、掲示板だと書き込みしにくいのでブログ(ウェッブログ)にしたほうがよいという意見など、サイトを改善するのに役立つものもあった.

    今後は,現在作成しているサイトの管理が煩雑であるので,教育管理ソフト等を用いて,Webページの簡素化を進めていくと同時に動画の充実を図り,上級者,初級者を問わず競技に興味のある学生がアクセスしやすいような形で提供できるよう作成を続け,生涯スポーツへの足がかりとなるような素材を準備し情報提供を継続していく所存である.

研究資料
  • ―必修・選択学生による相違について―
    徳永 敏文
    2006 年3 巻 p. 55-62
    発行日: 2006年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    岡山大学におけるスポーツ実習において、必修として受講している学生と、選択として受講している学生間のスポーツ実習に対する意識や態度の相違を明らかにしようとした。

    調査の結果以下のようなことが明らかになった。

    選択で受講している学生は男子でスポーツ・サークル加入者、無所属の者、女子で文化部所属者が比較的多く見られた。また、中・高時代に運動部経験をした者が多く、運動好きの者が多くみられた。

    選択の学生で受講に当たって最も意識したものは運動・スポーツの魅力項目である。特に男子学生にその傾向が強かった。

    実際に授業を受けて得たものとして最も多かったものは、必修・選択両学生とも「楽しくスポーツができる」で、次に人間関係、そして精神的充実の項目であった。

    人間関係では必修の学生に「友達を何人か得た」、「友達とより親しくなった」と言う者が多く、また、「体力が向上した」と言う者は選択の学生に多く見られた。その他の項目は両者に差は見られなかった。

    今後の課題は、楽しく授業を行う中でいかに健康、体力増進、スポーツ理論等を習得させるか、と言う事と、選択学部での学生のニーズに合った種目の提供や授業方法の工夫であろう。

奥付、裏表紙など
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