Journal of Hard Tissue Biology
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20 巻, 4 号
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原著
  • 村岡 理奈, 中野 敬介, 松田 浩和, 共田 真紀, 岡藤 範正, 山田 一尋, 川上 敏行
    2011 年 20 巻 4 号 p. 275-282
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    実験的歯科矯正力によりマウス歯根膜組織に誘導されるHSP70とp-HSP70の初期における発現状況の変化を免疫組織化学的に検討した。その結果、対照群歯根膜線維芽細胞はその歯根膜の全周にわたるHSP70とp-HSP70の活性が低い状態で保たれていた。実験群では、HSP70は時間の経過とともに陽性反応が増強していた。p-HSP70は、HSP70の発現より若干遅れて陽性反応の増強を示していた。これらの実験結果はHSP70がホメオスタシスの維持や傷害を受けた細胞の修復、またそのリン酸化したp-HSP70として、牽引側歯根膜組織における骨芽細胞活性化による同部への骨添加傾向へのシフトが正常に行われるよう分子シャペロンとして働いていることを示唆した。
  • 松田 浩和, 原田 寿久, 村岡 理奈, 共田 真紀, 岡藤 範正
    2011 年 20 巻 4 号 p. 283-288
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    歯科矯正学的メカニカルストレスを負荷した歯周組織におけるOsterixの発現状況を、免疫組織化学的に検討した。実験動物として8週齢のddYマウスを使用し、歯根膜に持続的なメカニカルストレスを加えるため、Waldoの方法により上顎臼歯間にラバーダムシートを挿入した。挿入3時間後から最大24時間後まで経時的に免疫組織化学的手法を用い検索した。対照群のOsterixは、当該歯根膜組織の全周にわたって、その歯根膜線維芽細胞などに極めて弱く陽性を呈する部もあったが、ほとんど陰性だった。実験群では、9時間以降において牽引側歯根膜線維芽細胞に陽性反応が出現し、一部ではその核内における活性が確認できた。24時間では、陽性核の数が増えていた。以上の結果から、メカニカルストレスを負荷した後には、主として牽引側歯根膜にOsterixは9時間以降に発現し、同部を骨形成に大きくシフトさせることが示唆された。
  • 藤田 宗輝, 中野 敬介, 前田 初彦, 吉田 和加, 鳥居 亮太, 芳山 昌典, 岡藤 範正, 長谷川 博雅, 川上 敏行
    2011 年 20 巻 4 号 p. 289-294
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    典型的な充実型/多嚢胞型エナメル上皮腫の10症例を用いて、熱ショックタンパクHeat shock protein (HSPs)の中でもHSP27とpHSP27の発現について、免疫組織化学的にその局在を検討した。その結果、HSP27 とpHSP27は腫瘍細胞の細胞質に高頻度に検出された。しかし、その発現パターンや発現強度は、エナメル上皮腫の細胞学的特徴によって若干異なっていた。免疫組織化学的染色の結果は、HSP27とpHSP27の発現は歯性上皮細胞の腫瘍性転化に関与すると考えられることを示唆している。
  • 佐藤 将洋, 中野 敬介, 斎藤 進之介, 鍋山 篤史, 岡藤 範正, 山本 昭夫, 笠原 悦男, 長谷川 博雅, 川上 敏行
    2011 年 20 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    歯科保存学治療時に行う歯間分離の処置を実験的に行い、マウスの歯髄や歯周組織に誘導されるChromogranin A(CgA) の発現状況を免疫組織化学的に検討した。上顎右側臼歯間にウェッジを挿入の3時間後にCgAの発現状況を免疫組織化学的に検討した。その結果、対照群の歯髄と歯周組織では一部の細胞に弱い発現があり、これは生理的なメカニカルストレスに対して発現していると推察された。実験群では、歯髄および歯周組織にCgAの発現があり、これは対照群よりも強かった。したがってこれらの反応は、実験的歯間分離のメカニカルストレス負荷によって誘発されたものと考えられた。
  • 村岡 理奈, 辻極 秀次, 中野 敬介, 片瀬 直樹, 玉村 亮, 富田 美穂子, 岡藤 範正, 長塚 仁, 川上 敏行
    2011 年 20 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    骨髄由来細胞の歯周組織への移動と同部構成細胞への分化について、GFPトランスジェニックマウスを用い検討した。GFP陽性の骨髄由来細胞の動態については蛍光免疫二重染色等を行い、歯周組織への細胞移動とその構成細胞への分化について追究した。その結果、マウス歯周組織には、GFP陽性細胞が多数移動していた。蛍光免疫二重染色等によって、少なくともGFP陽性細胞の一部は破骨細胞とマクロファージに分化していることが確認された。なお、血管周囲にGFP陽性細胞の集族があった。以上の結果、歯周組織へは比較的短期間のうちに骨髄由来の細胞の移動があり、歯根膜構成細胞に分化している事がわかった。
  • 見明 康雄, 森口 美津子, 山崎 貴希, 蛭間 信彦, 石川 敏樹
    2011 年 20 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    象牙芽細胞に浸軟処理(AODO法)を施し、細胞内小器官の立体的構造や象牙前質および象牙質におけるコラーゲン線維の走向などを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。核膜の構造や粗面小胞体から輸送小胞への移行像、あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)では明瞭でないゴルジ装置の表面が観察された。管状のミトコンドリアの構造および粗面小胞体の断面は、通常TEM研究で述べられるものと類似した構成を示した。粗面小胞体の表面には多数のリボソームがあり、粗面小胞体同士を適当な間隔で保持する機能を持つと考えられる線維構造も観察された。象牙質のコラーゲン線維の配列は、TEM 像と一致していたが、象牙前質のコラーゲン線維の配列は水平方向に走向するものが多く、一致していなかった。
  • 王 宝禮, 塩田 剛太郎, Akihiko Shiba
    2011 年 20 巻 4 号 p. 313-318
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    オゾンは酸化ガスであり、その殺菌効果は口腔をはじめ様々な分野で活用されている。しかしながら、オゾンの半減期は短くその使用は限られる。そこで、長期的な殺菌力を期待できるオゾンジェルの開発に至った。本研究の目的は、オゾンジェルによる動物実験において、皮膚および眼に対する安全性評価である。その結果、オゾンジェルは、皮膚刺激性実験、粘膜刺激性実験、光感作性実験および光毒性において安全性が高かった。これらの結果は、オゾンジェルがヒトに対して臨床応用できる可能性を示唆するものである。
  • 杉田 好彦, 高山 光平, 神野 正人, 本田 由馬, 佐藤 恵美子, 吉田 和加, 久保 勝俊, 前田 初彦
    2011 年 20 巻 4 号 p. 319-326
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    近年、Electrochemotherapy (ECT)はパルス状電圧によって抗腫瘍剤を腫瘍局所の細胞内に取り込ませる腫瘍の治療方法の一つとして注目されている。しかし、その治療方法はまだ確立されていない。そこで本研究では、口腔領域に多く発生する扁平上皮癌の実験動物モデルを使用し、パルス状低電圧負荷によるブレオマイシン(BLM)の抗腫瘍効果について検索を行った。実験ではヒト子宮頚部癌扁平上皮癌細胞(Caski)を培養後にヌードマウスに移植し、その後、腫瘍移植部に対してECTの処置を行った。その結果、D+E+群(薬剤投与電気穿孔群)では腫瘍体積の減少が認められた。また、数例では腫瘍の消失が認められた。これらの結果から、BLM投与とともにECTの処置を加えることで、薬剤の抗腫瘍作用は増強されることが判明した。本研究の結果から、ECTは腫瘍の治療において、安全で効果的な新しい治療法として有用であることが示唆された。
  • 谷口 邦久, 榎 規雄, 中村 哲也, 森下 孝一郎, 岡村 和彦, 尾崎 正雄
    2011 年 20 巻 4 号 p. 327-332
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    乳歯外傷における後継永久歯の損傷については、予後に種々の硬組織形成障害が生じるが、ことに歯頚部側領域におけるエナメル質形成障害の発現については不明な点が多い。そこで生後10日のラット臼歯歯胚(エナメル質石灰化開始期)を用い、穿刺による外傷実験を行い、萌出直前の歯冠について光顕的、走査電顕的に検索した。その結果、歯頚部側で、エナメル質の破砕、部分欠損、エナメル小柱の露出のみならず破歯細胞によるエナメル質の吸収が生じており、しばしば象牙質にまで吸収が及んでいた。このことから、歯頚部側の硬組織損傷部は外傷後萌出までの間に破歯細胞による吸収など二次的変化を受ける可能性が示唆された。
  • 三島 弘幸, 見明 康雄, 大久保 厚司, 宮本 泰輔
    2011 年 20 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    癒合歯は下顎前歯部に多いと報告されている。今回、上顎右側第2大臼歯と第3大臼歯の癒合歯の症例を報告する。その癒合歯の組織構造、化学組成と発生過程を検索する目的で本研究を行った。26歳の男性の症例であり、上顎右側第2大臼歯と第3大臼歯の癒合歯である。第2大臼歯の歯冠部の形態は正常であり、その歯根部で癒合している第3大臼歯の歯冠はエナメル滴様の形態であった。第3大臼歯の歯髄腔内にエナメル質が観察された。エナメル小柱の配列は不規則で、その横断形は鱗状であった。X線分析顕微鏡像では歯髄腔内のエナメル質は正常なエナメル質より透過性が高く、Pの濃度分布が低かった。球間象牙質が顕著に観察された。第2大臼歯と第3大臼歯の境界部では脈管象牙質が観察された。第3大臼歯の歯冠形成の初期の段階で第2大臼歯と癒合したと考察される。
  • 寒河江 登志朗, 岡田 作太夫, 岡村 興太郎, 中野 啓二
    2011 年 20 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/01/26
    ジャーナル フリー
    温泉の無機質成分が沈着して形成される温泉華は、母液の性状を反映して組成が決まり、環境条件を反映して形態が決定する。今回、芒硝泉に生じた特異な枝珊瑚状形態を呈する温泉華を見たので、偏光顕微鏡、X線回折法により組成を検索した。その結果、微粒な不定形で不規則な方向をもつ石膏結晶を主体とすることが判明した。この特異な形態はフラクタル成長で説明できると考える。しかし、地下深部でなく地表面において形成される堆積物・沈積物には生物・微生物・バクテリアの関与が知られており、それらの関係は今後注目に値すると考えられるため、短いレビューを加えた。
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